第9話 クルセイダー
エル達はバルバトス・フレッシュフィレ遭遇および撃退の情報を報せ、特別報酬を手に入れていた。今回の仕事は1層の素材集めに赤龍討伐が加わることで10CPに追加で10CP、さらに特別報酬を加えて40CPとなっていた。このおかげで、機嫌が悪かったレフト・インサニティはだいぶ機嫌を良くしていた。1層の仕事なんてエネミーの解体を除いたら10CP稼げればいい方だ。それが解体を加えずに40CPも稼いだのだ。ちなみに、1CPは栄養カプセルで換算すると約1ヶ月相当の食事であり、一般人の中流階級の一月の稼ぎと同等になる。
この稼ぎでエルはクルセイダーへ更新は完了させることができた。
「“ジ・エンド”のエルがよくダイバー家業に戻ってきたな。次は無いんだろう?正直な話、引退に5CP賭けてたんだ。今からでも遅く無いから、引退したらどうだ?」
「ようやくやる気取り戻したんだよ、爺さん。あんたのおかげでここまで来れたってのに、そりゃ無いぜ。」
「いやいや、命あっての物種だ。引退したオレが言うんだから間違いないぞ。」
エルは今、古代技術庁の中のテックウェポン研究室に来室しており、一人の初老の男性と話していた。
ここ古代技術庁はいわゆるロストテクノロジーを研究している。研究といえば聞こえはいいが、ロストテクノロジーの殆どが現代では再生産が不可能なものばかりで、「ボタンを押せば、ビームが出る」レベルのことを長いこと研究してようやく探し当てる状態だった。
その中で、テックソルジャー向けの特殊装備「近接強化装甲服」は比較的研究が進んでいて、必要素材を合成して3Dプリンターに入れることで生産自体は可能なレベルとなっている。さらに、追加装置や改修を行うことでグレードアップが可能となっていた。
本来であれば、着用者全てに平等に装備を行き渡らせられるならば良いのだが、何故かグレードアップした「前線装甲服3型」は直接生産ができず、2Fのフロアボス「ギガントタンク」を倒した経歴が端末になければ装備しもて機能にロックがかかり、歩くことすらままならない状態になってしまうので、必然的に順序を追ってフロアボスの撃退が必要だった。
そして、会話相手の男性はジャックという名の研究者であり、元テッククルセイダーのダイバー引退者でもあった。ジャックは過去に引退した後、エルに近接強化装甲服を譲った張本人だった。
「貧民街で違法サルベージャーさせられてた子供が、良くここまでたどり着けたもんだ。オレは2層攻略まで持たんと思ってたよ。」
「さすがに5回目の蘇生から意識を取り戻した後は引退を考えてた。だけど、ちょっとやりたい事ができてね。過去を取り戻したくなったんだ。」
「4回目のデッドギフトの代わりにオレの事を忘れたってことをか?嬉しいねぇ、涙が出るぜ。」
「悪いね、それじゃ無いんだわ。わかってて言ってるだろ?」
「まぁな。今更『思い出したぜ師匠!』て言われても、何とも思わん。」
ジャックもダイバーとして3層攻略者として名を知られたテッククルセイダーだったが、組んでいたチームが全滅し、ロストが出たのをキッカケにチーム解散となった。まだ別のチームに入ってもダイバーは続けられたが、ジャックも失った物がダイバー継続を止める原因となっていた。
ジャックにとってエルの事は少年時代にサルベージャーの元締めから救い出し、ダイバーの手ほどきをしたこともあって半ば父親のような存在だった。それが、デッドギフトによる喪失で自分のことまで忘却されたことを知ったときには自分の経験、エルの性格とデッドギフトの数からしてもう引退してもおかしく無いことを知っていた。酒浸りの日々を聞きつけて、落ち着いた頃を見計って引退を進めようとしていた矢先のグレードアップで、内心では驚きがあった。
エルと喋りながらジャックはテッククルセイダーの装甲服の調整、改修を進めていく。ジャックは現役時代にダイバーと並行してテックに関する技術も磨いていた。元々、テック研究者の家系で生まれ育ったジャックは現在は優れたテック技師として生計を立ている。偽造ライセンスで装甲服のセキュリティを騙し、追加のパーツや装甲を取り付けていく。
「よし、出来上がったぞ。ちょっと着てみろ。」
エルは言われるがままに、生まれ変わった装甲服を纏った。着用してすぐに今までの装甲服と出力が違うことに気がついたが、ゴーグル内に見覚えのない機能が目についた。
「なぁ、爺さん。この可動シールドってのは何となくわかるんだが、ファストヒール機能ってのは何だ?」
「ああ、戦闘中に緊急的に負傷を癒す機能だ。テックドクターあたりに比べたら小規模な出力しかないが、お前さんの動きを邪魔しないように機能するはずだ。戦いながらでも意識しないで負傷回復できるのが利点だな。さっきも言ってるが、小規模なものしか直せない。あまり当てにはするなよ。」
「へぇ、便利な機能だな。見た感じ、装甲の方もかなり厚くなってるし、2層ならだいぶ楽ができそうだ。」
エルはしばらくは腕の動きや歩いた感じを確認していた。全体的に出力が上がり、銃撃の保持や刃腕をふるったときにより強固に、より衝撃を与えられそうだった。外付けの衝撃吸収型リアクティブアーマー、通称「装甲タイル」の追加なども含めて、防御力もかなり上昇していた。
「これで反応速度も高くなれば言うことないんだけどなぁ」
「そいつはアレだ、テックソルジャーからあんまり変わらん。間違いなく、弱点だから気を付けろよ。あと、この装甲服でもバルバトスとやりあうのは無理だからな?そんなバケモンと出会したなんて聞いた時は、死んだなって思ったぞ。」
「でも、いつかはあの野郎と出会しても余裕とは言わなくても、ある程度の安全を確保して戦えるようにならないといけねーんだよ。」
「そりゃ、お前さん5層に挑むってことか。冗談だと思ってたぜ。そう言うことなら、まずは3層を余裕で歩けるようにならないとな。とりあえず、強化鎧を買っとけ。装甲服の上に装備しなきゃならないところが面倒だが、間違いなく戦力は向上するぞ。それか、戦車でも買っておけ。」
「ご忠告、ありがとうよ。とりあえず、強化鎧の方向でいくわ。」
「何度だって言うがな、命あっての物種だ。気を付けろよ!」
ジャックの言葉にうなづき返し、エルは研究室を去っていった。
エルは酒場に顔を出していた。残ったカネでは装備の更新とはいかず、ならいっその事、飲み食いに使って英気を養おうとした。
酒場につくなり、ベニエが手招きしていた。珍しいこともあるもんだ、と考えながらエルは席についた。
「珍しいじゃないか、レフト・インサニティがこんな場所にいるなんて。いつもの孤児院はどうした?」
「孤児院にはもう寄付は済ませたんだよ。その上で、多少は残ったからねぇ。アタシも今回は肝が冷えたよ。だからこそ、戦友と一杯やろうって気になってねぇ。」
「なるほど、そう言うわけかね!そう言うことなら吾輩も是非同席させてもらおうか!!」
レフト・インサニティの卓にもう一人、Mr.トリックが座っているポーズで投影されていた。最も、椅子は動いていないので、椅子を含めて投影している。
「いきなり出てくるなよ、Mr.トリック。」
「ツレないな、我が友よ!吾輩だって、このような席で友人と労いあっても良いではないか!」
「別に良いさねぇ。どうせ、ホログラフは酒を頼まないし、つまみを食うこともないからねぇ。」
レフト・インサニティの一声でMr.トリックも加わった。ほとんどの過去を忘れたエルにとっては、この二人くらいがチームメンバーとして認識できる相手だ。最も、一度忘れたのか、昔の記憶はなく最近の事しか覚えてなかったが。
しばらくすると、醸造酒がやってきた。栄養カプセルの中の特定要素を抜き出して、発酵させたアルコール飲料だ。ポピュラーで安い事が売りの酒でもある。
「何はともあれ、今回も生き残れたことに乾杯」
「1層のダンジョンで言うのは情けないけどねぇ」
「なら、40CPの報酬に乾杯!!」
「良いねぇ、乾杯!」
「乾杯!である」
三者がそれぞれのジョッキにぶつけ合い、飲み干す。レフト・インサニティが追加で2杯頼むと、エルがツマミを注文した。スライムのトロトロ煮、ブラッドバッドの串焼き、ハングリーアリゲータのステーキ。大体、ルーキーが初めてのダンジョンで倒して、帰還祝いに素材持ち込みで注文するような料理が並ぶ。
「もう少し高いもの頼んだって、アタシャ怒らないよ?」
「いや、良いんだ。今回の稼ぎ云々じゃなくて。頼みたい気分だったんだよ。」
「そうかい、ならアタシのとっておきは食べれなさそうだねぇ。」
「お?何か頼んでたのか。って、それはもしかして…ッ!?」
エルが言い淀んだのも無理はない。ウェイターが奥から出してきたのは一塊のじっくりと火を通したローストミート。その素材は、バルバトス・フレッシュフィレだった。バルバトスはその圧倒的な強さでイメージが吹っ飛ぶが、骨付き肉が巨人を模したような形をしたれっきとした食糧カテゴリーのエネミーである。このローストミートはベニエが赤龍と別に戦いで散らばった破片から、まともに食材にできそうな所を回収していたのだった。
「本当に珍しいな!ベニエがこんなものをカネに変えねぇなんて思わなかったぜ。」
「今回は特別さねぇ。40CPも稼がせてもらったんだ。アンタには依頼に入れてもらった恩も、前線で体張ってもらった礼もあるからねぇ。」
ベニエが切り分けて、エルに渡す。程よく火が通っていて、切断面から覗くのは薄い桃色となっている。周囲からも歓声が広がる。5層の素材がこんなところでお目に掛かれるのは奇跡のようだった。
「マジかよ。“どん底のエル”があんな大物を?」
「バカ、“5回目のエル”だぞ。攻略階層と実力の乖離は当然だろうが。とはいえ、5層に通用するのかよ。信じられん。」
周囲の声は、エルの実力を見直していた。死んだ回数ばかりが見られがちだが、その分のデッドギフトも装備している。デッドギフトは、到達階層に比例して自己強化を自動的に行う、というよりは能力の解放に近かった。エルは3層到達者であり、その分デッドギフトも強力になっていた。
1層のルーキーが振るう刃腕よりも、エルの振るう刃腕はより鋭く、より強烈な威力を持つ。エルが飲んだくれていて、ダンジョンから逃げていることが見た人間に実力を誤解をさせていたが、表層都市で同じ到達者と比べるならエルの方が強いのは自明の理であった。
ふと、エルが見るとちょっと前に絡んできたルーキーが青い顔をして目線を下げていた。今更ながらに実力差に気がついて必死に顔を合わせないようにしていた。
エルからすれば、調子に乗った勉強はこの間に蹴散らしたことでしてもらったわけで。3層相当の実力はあるが、エル自身はそれ以上ではないと思っていたので萎縮させすぎたような気がしていた。ここで変に声をかけても良い印象を与えなさそうだったので、笑顔をむけて見た。
「(頑張れ、ルーキー!もう、気にしちゃいないぜ!!)」
「(ヒィ!こっち向いて笑ってる!!俺たちにまだ恨みがあるんだ!)」
両方がすれ違いのアイコンタクトをしてる間に、レフト・インサニティは自分用に大きく切り分けた肉を豪快に食べていた。味の方はハングリーアリゲータのステーキとは似ても似つかない美味さ。アリゲータの肉はパサつきもあり、ソースで誤魔化して食べているところがあるが、バルバトスの肉はしっとりとして、歯で噛みちぎると肉汁が溢れ出す。その肉は柔らかく、それでいて歯応えがある絶妙な加減だった。素材の持ち味を生かすためか、ソース類は特になく、塩だけで味付けたシンプルな料理だが、いくらでも食べれそうな美味さだった。
レフト・インサニティの食いっぷりにエルもルーキーに笑顔を送るのをやめて、ひたすらに肉を食った。その間、何事かをMr.トリックが言っていた気がするが耳には入ってこない。もう、目の前の肉にしか目がいかないのであった。無論、対面に座るレフト・インサニティも同じくである。
バルバトス肉の魅力に取り憑かれて、がむしゃらに食事を先に終わらせたエル達はようやく酒を飲むことを思い出し、飲んで話の続きを始めた。
「俺さ、五層を目指すんだ。その為には、地道な所で三層を攻略しなきゃいけないわけよ。そうなるとカネが必要なわけでなー。武器に装甲鎧に、改造も必要だしなー。ジャック爺さんが言ってたんだよ。」
「我が友よ、吾輩も多数のアプリを積み替えたぞ!これで三層でも吾輩の支援を更に受けられる事になる!!」
「アタシャ、三層は付き合えないからねぇ。孤児院の子供達にはアタシが必要だからねぇ。そんな所でおっちぬわけにも行かないわけさねぇ。」
全員が好きなことしか言ってないカオスがそこにあった。酔っ払い2人はともかく、ミストマンの彼は酔えないはずなのだが。見事に自分のことしか喋らない3人であった。
粗悪な安酒も手伝って、酔いが回っている。
「まぁ、二層なら手伝えるから安心するんだねぇ。もっとも、この間みたいな事はこりごりだけどねぇ。」
「ありゃ事故だろう、どう考えても。大丈夫だろう、精鋭チームが討伐に出発したって聞いたぜ?」
「確かに、その通りだとも。彼らなら討伐はできなくとも、撃退はできるだろう。二層までの安全は確保できるだろう!」
精鋭チームの方は五層に到達した者を集めている。1層からしらみ潰しにバルバトスを追い詰めていく流れらしい。今ならバルバトスの情報を報告するだけでカネが貰えるらしいが、あの強さを知ってるエルとしてはやる気にすらなれなかった。
そんな風に飲み食いをしていると、端末に速報が入った。【精鋭チーム、バルバトスを3層に後退させることに成功】
「アレを追い詰めることができるのかよ。5層到達者ってのはマジでバケモンだな。」
「アンタもそうなるんだろう?目標は遠いねぇ。」
「じっくりと、3層攻略から目指していくよ。」
レフト・インサニティにぼやきながら、エルは目標の遠さを感じつつもダイブするモチベーションが自分にふつふつと湧いているのを感じていた。
エル達が酒場で飲み明かし、しばらく経ったある日にダイバーズオフィスで一仕事終えた1層攻略中のルーキー達が噂話をしていた。
「なぁ、聞いたか?”エンドコンテンツの”エルが3層攻略を開始したらしいぜ。」
「ああ、あの噂はマジだったんだな。5層到達を目指してるって話だろ?この間、ゴツい強化鎧を動かしてるのを見たぜ。」
「ねえねえ、2層を荒らし回って出禁になったのって本当なの?ダイバーでそんな話聞いたことないんだけど。」
ルーキー達が噂をしていると、受付のリカが話の中身を肯定してきた。
「その話なら本当よ。ダイバーズオフィス初の出禁命令。オフィスとしては他の2層到達者を淘汰する勢いでやられちゃ堪らないからね。エルには悪いけれど、速やかに3層へ移ってもらったわ。」
「なら、デッドギフトを解除するウェポンを探してるってのも本当かよ。あり得るんスか?」
「長年受付やってるけれど、正直聞いたことはないわね。でも、エルがそういうものを探してるのは本当よ。わたしに言ってたもの。」
「じゃあじゃあ!失恋したのが未練で、その女の人を追いかけて深層に潜ろうとしてるってのも?」
「それは、わたしも聞いたことがないわ。エルって、その手の話はほとんど無かったものね」
リカが暇なことも手伝って、ルーキー達の質問に答えてると噂の張本人がやってきた。
「リカー、素材買取!話の途中で悪いな、またの機会で頼むわ。」
新人達をかき分けて、エルが浮荷台で素材を載せてやって来た。その中は3層エネミーの素材で満載だった。強化鎧はオフィスの前で着脱して来たらしい。さすがに強化鎧を着用すると身長が2m以上になり、入ることができない。
「エル、見違えたわね。調子の方は大丈夫なの?無理は厳禁よ、あなたの場合。」
「大丈夫だよ、新規のチームも組んでしっかりとヒーラーにも同行してもらってるからな。クルセイダーの装甲服にもだいぶ慣れてきた。そろそろ、フロアボスと対面を狙ってるよ。」
そう言いつつ、エルは無造作にカウンターの素材置き場へと収穫物を置いていく。3層は食糧型エネミーが豊富で、置かれたものも保護ラップされた食材系が殆どであった。この手の高級食材となるものは富裕層に需要があり、値が付きやすい。その中で、リカは目を疑ったモノがあった。
「これって、紅の槍じゃない。ヴァンパイア・デュークのでしょ?アンタ、もう倒してきたの!?っていうか、売りに出しちゃって良いのッ?」
「ああ、売りに出してくれ。チームの誰も欲しがらなかったし、俺も8スロットの内5スロットはデッドギフトで占有しちまってるもんだからな。装甲銃に強化鎧に緊急時のエイドキットでウェポンスロットに空きがないんだよ。」
「後で返してくれって言われても知らないからねー?」
リカはエルに最後通告をした上で、オークションへの手続きを済ましていく。高級食材達もついでに手続きしていく。ちなみにエネミー素材の食糧は基本的に腐敗することはない。ナノマシンが腐敗の原因となる菌を駆逐するから、食べられるまでは守り続ける。人類に食べられたと判断すると、ナノマシンは自己を旨味成分に変化させて無害となる。マザーAIの奇妙な設計が為せるものであった。
最近のエルは滅多なことでは表層都市に戻ってはこなかった。表層都市で販売、流通してるものはルーキー向けが多く、ベテランの欲しがる素材は出回らないからである。3層にある衛星都市「ジニーズキッチン」で拠点を構えていた。今日、表層都市に戻ってきたのはダンジョンキャラバンが都市に向かうスケジュールだったので便乗して運搬オーダーと抱き合わせで仕事をこなしていたからである。
ダンジョンキャラバンは複数の運搬車両と同じ数の戦車を揃えたもので、ダンジョン内の物資流通を担っている。一般客を乗せる席もあるが、基本的に高価となる。そのため、多くのダイバーはキャラバンの護衛を兼ねて乗り合わせる。運が良ければ、向かう先への運搬オーダーもついでに受けることができ、旅費を稼ぎながら移動することができる。
2層からダンジョンは急に広くなる。3層にもなれば、戦車などの移動方法がないと徒歩では時間もかかり、危険も物資の枯渇、ユニークエネミーとの出会す確率も加速度的に増えていく。3層入口からジニーズキッチンまで歩くとなると、道中何もなかったとしても40時間近くかかる。ダンジョンキャラバンに参加するのはダイバーにとっては当たり前の方法だった。
「さて、爺さんに久しぶりに会って装備の点検でもしてもらうかな。」
周囲の視線を気にせずにマイペースに呟くと、エルは古代技術庁へと足をむけた。
エルは着実に実力を上げていた。ゆっくりとだが着実に到達階層を増やしていく。
その後、エルは5層へと辿り着きマスターランクとなったが、エルがデッドギフトを返上したという話は噂にもならなかった。
その代わりに、チームを解散して新たなメンバーを一人招き入れて低階層の回収をしているという噂が流れていた。
【デッドライン】といえば、5回死んで生き返ってなおダンジョンに潜り続けた男の二つ名となっていた。
エルの話は一度区切り、別の主人公での話を書きます。