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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
70/97

第70話 スタンピード

大規模戦闘回。

 シティの外に大量のエネミーが集まっている。シティの外側、森の縁にそってこちらへと向かってくるエネミーの群れ。

 構成内容に植物系エネミーは入っておらず、機械、生物、異能の順で構成されていた。数えるのもバカバカしくなるほどの狂気的な数が、森の縁から染み出すように、静かに歩み近づいてきていた。

 それに対し、壁の上に陣取ったダイバーたちは森の中にエネミーが確認された時点で覚悟を決めて各々の持ち場に割り振られていた。コレが始まれば、しばらくの間はシティはフル活動で戦闘行動を行う必要が出る。できる準備は今のうちにするために、内部では連絡が行われて戦時体制に移行した。商業活動は最低限に。対エネミーに関する施設のみが開かれ、それ以外は停止となり多くの人員が予備戦闘員となった。食事などは士気を高めるために用意が始まり、最前線の兵士やダイバーには各種ドラッグカプセルと食料カプセルが手渡される。壁の上には機銃がせりあがり、その猛威がふるわれるのをじっと待つ。

 有効射程圏内に踏み入れた瞬間、壁の上に配置された機銃が怒号を立て発射された。それを合図に、各陣営は攻撃をそれぞれ開始させた。


 

 ******

 「やれやれ、こんなタイミングでランクアップを行うのは初めてだ。ランクアップに関する情報は君たちの端末へ入れておく。軽く目を通しておくんだな。すぐさまに実戦でぶっつけ本番となってしまうだろうがな。」


 ハルカたちのジョブランクアップを終えて、説明もなしに戦場へ送ることになったことに対し、ダイバーズオフィスの担当官が悔しそうに話した。

 事情が事情なので最短でランクアップを行ってもらった。ハルカたちも出来れば、詳細な情報と事前準備を行いたかったがそうも言ってられる状況ではなかった。

 強くなった気はするが、ランクアップによる強化は何が強みになったのかなど、聞いておくべき情報はテキストファイルで端末に送られた。どこかのタイミングで読むしかない。


 欲を言えば、装備も更新したかったが贅沢は言えない。担当官もそこは理解していて、必要最低限のことだけをした。


「自分たちのできる範囲で仕事をすれば良い!無理はするな!!」


 強面の担当官に注意を飛ばされながらも、急いで壁上へと走っていく。外からは砲撃の音が聞こえ始めていた。



 壁に辿り着くと、ダイバーを中心とした防衛隊が組織されていた。壁の下には数え切れないほどのエネミーがひしめいていた。

 壁に設置された防衛装備で蹴散らしているが、それでも一行に数が減る様子がない。


「月一でコレに当たるなんて、ちょっとどうなんでしょう?」


 ハルカが慄く。それに対し、答えるものがいた。


「だが、コレが俺たちの日常だ。ここいらの連中をまとめているスジルオだ。早速で悪いが、お前さんたちの登録を見させてもらおう。……なるほど、こりゃツイてなかったな。シティにたどり着いた当日にコレに当たっちまったのか。運が無かったと思って諦めてくれると助かる。」


 スジルオは大柄な体をテックアーマーに包んだ男で、濃い眉毛が印象的なよく言えば、頼りがいのある男。悪く言えば、ひたすらに男臭い男だった。

 ハルカがスジルオに疑問をぶつける。


「今起きている現象は何か分かってるんですか?」

「ああ、エネミーによる大量侵攻。通称”スタンピード”だ。月に一度くらいの目安で街を覆う茨<ソーン>はエネミーを寄せ付けない効果を持ってるんだが、そいつが無効化する。その理由は今だにハッキリはしていないが、解除から大体24時間後の再活性化までシティを守るのが俺たちの仕事となる。参加した奴にはシティから報酬が出て、弾薬費やら消耗品やらはシティが持つ。何か質問はあるか?」

「拒否権あるんですか?あぁ、いえ私たちは戦いますけれど。そういう人たちってどうなるんですか?」

「拒否権か、あるぞ。その代わり、シティから出ていってもらうがな。平和的になるか、荒っぽくなるかはその時に応じた奴ら次第だ。もう良いか?お前さんらには、南側を守ってもらう。そちら側は3層とつながるポータルの場所側だから、敵の数は少ないはずだ。ランクアップを済ませたばかりなら、無理はしないでそっちに回ってもらったほうが俺たちも良い。」


 そう言って、スジルオは機銃掃討を潜り抜けた空飛ぶ巨大なスカイメガロを両手で構えた大口径の戦車砲のような銃で撃ち落とす。見た目に違わぬ轟音を炸裂させ、耳鳴りがする。その腕前にユラが称賛の声を上げる。


「やるな、おっさん。いや、スジルオだったっけか。今の、結構強い奴だろ。」

「まぁな、コレでもソーンシティでの1番の稼ぎ頭のチームリーダーだ。生き残れたら、この階層のイロハを教えてやるよ。さぁ、守りに着いてくれ。南側には俺の仲間のジーユってドワーフの女がいるから、そいつに詳しい話を聞いてくれ。それじゃ、無駄死にはするなよ。」


 そのままスジルオは肩に巨大な大口径銃を担ぎながら、端末で別の戦場の仲間とやりとりをしながらハルカたちとは逆方向へと立ち去っていった。

 その姿を見た後は早速、ハルカたちは南側の壁へと走り去った。


 南側につくと、周りの戦闘要員に指示を飛ばしている小さな体躯の女性ドワーフがいた。ずんぐりむっくりな体型で端末をしまうと設置された機銃を構えて次々とエネミーを倒している。

 駆けつけたハルカたちの中で、アモットを見るなり


「良い大砲を使ってるな、お嬢さん。スジルオに指示出されたハルカ って子のチームだよ?歓迎するんだよ。あたしはジーユ、見ての通りのドワーフのテックスナイパーだよ。」


 自己紹介を簡単にしながら、ジーユはハルカたちにここでの仕事内容を説明する。


「こっち側は比較的だが敵襲が薄い。ネーチャンらはこの機銃を使って進行を食い止めてもらうのが仕事だよ。こいつは撃ち放題だ、難しく考えないで、一番やばそうな奴に打ち込むだけだよ。」

「コレって、弾薬はドウなってルノ?」


 アモットからの質問にジーユは答える。


「こいつはシティ持ちで、弾切れ前に催促しておけば補給係が補充してくれるんだよ。」

「え、マジデ?スゴクないソレ?撃ち放題ってコト?ヤッター!!それじゃ、ワタシコレで!!」


 と言って、早速場所どりをするアモット。その場所は左右に見晴らしがよく、迫りくる敵陣を撃つのには最適な場所と言えた。違う言い方をすれば、最前線で最も忙しい場所とも言えるが。

 他の面々も空いている機銃の席につき、発砲を開始する。ユラだけはジーユに直談判し、配置場所を壁の下の門前にしてもらっていた。どうやら、機銃を使うコトを拒否して直接戦闘を行う白兵戦部隊に入ることを志願したらしい。


「また後で合流しような!」


 そう言って、ユラは階下へと降りていった。筋金入りの近接屋としか言いようのない行動にハルカは思わず感心してしまうほどだった。


 他の席を見れば、ダイバーらしき人間の他にもちらほらと一般人のような服装の者も混じっていて、なるほどジョブチップがあればこその防衛になってるのだなとユラ へとは別の角度で感心してしまう。

 それ以外の普通の人でも、弾帯の補給や細々としたサポートを行なっている。女子供などの非力な一般人でも拠点内で炊き出しやらを行い、交代する人員に補給や休憩の補助をしていた。


 早速、機銃を構えたハルカたちだったが、どこへ撃っても命中するような有様の戦場だった。壁の高さから登ってくるものはおらず、壁へと砲撃を行う戦車、、精神汚染された古代ドワーフ、4層にそびえ立つ巨大な聖樹と一体化を考えて逆に乗っ取られた古代のエルフ、それら異種族ならぬ亜種属などを載せて空飛ぶ巨大サメ、スカイメガロが進行してきている。

 それらは壁越えを目論んでいるようだが、脅威度は最優先に割り振られているらしく、端末の通信にも「空飛ぶ相手は最優先で落とせ!その次は壁に砲撃する戦車を叩け!」とスジルオからの命令が飛んでいる。


 南側は侵攻が薄いとは言え、目に見える範囲の森の中から次から次へと現れるエネミーを見ていると、この機銃だけでどうにかなるのかと不安になってくる。

 ハルカの今までの経験の中ではとんでもない数と戦闘する羽目になっている。ダンジョンの中で、ここまで大規模な戦闘を行うとは夢にも思っていなかった。


 外壁備え付けの機銃の威力は凄まじく、アモットの持つ戦車砲と同程度の威力を連射している。ハルカはアモットがコレに悔しがるかと思いきや、彼女は機銃の威力に興奮し、連射を止めずに敵を撃ち抜いている。

 反動も本来は凄まじいのだろうが、旧文明の力だろうか、反動らしい反動もなく、まるでゲームをする感覚で打ち続けていられる。アモットが興奮するのも無理はないと思われた。

 残弾がなくなりそうになると、残弾数を把握していたのであろうサポートの一般人の男が切れる前に機銃の近くに弾を置き、切れたと同時に弾をつなげてくれる。


 他のダイバーたちも機獣を始めとした設置兵器をウェポンスロットで接続して、エネミーの群れをなぎ払っていく。

 それでも、倒しきれなかった相手が門の前に肉薄してくる。そんな場合は事前に戦闘準備をしていた白兵部隊が撃退をする。そちらに入ったユラは、近づいたアークドワーフを拳で貫いて絶命させる。

 物は試しと、倒す前に言葉をかけたが例外なく反応する相手はいなかった。言葉自体が通じる相手ではないようだった。


「うん、エネミーだな。情けを掛ける相手じゃなくて、こっちもやりやすくなったぜ。」


 エネミーの群の中から巨大なマローダータンクが飛び出してきた。その大きさたるや1層で手に入る戦車が可愛く見えるほどの巨大な戦車で、下部にも対応可能な機銃が備え付けてある。巨大さに相応しい太い履帯が大地を踏み荒らすかのように回転して向かってくる。

 ジーユが射線を合わせようとするが、周囲のエネミーが邪魔になり通らない。


「そのデカブツをすぐに潰すんだよっ!防壁がやられたら終わりだよっ!!」


それを聞きハルカがアモットとメルに声をかける。


「アモットちゃん!メルさん!私と射線を合わせてください。対象はコレです!!」


 端末を通じて、対象目標を送りながら機銃の目標をマローダータンクへと変える。ハルカたちからは射線が通り、3人の火線が重なって、巨大戦車を見る間に鉄屑へと変えていく。


「ヨお〜しッ!大物倒しタヨッ!!」

 

 アモットが勝利の雄叫びを上げる。しかし、森から続くエネミーの流れは途切れることはなく、エネミーの塊に穴を開けたところですぐさま次がやってきて塞がれてしまう。

 この包囲網に終わりが本当に来るのだろうかと、ハルカは心配になってきた。メルも同感だったようで、ジーユに尋ねていた。


「このスタンピードに終わりはあるのでござるか?」

「大丈夫、ここまでで4時間戦って、消耗率は悪くない。このままいけば、問題なしだよ。今なら若干、勢いが落ちた。疲れが溜まる前に後に詰めてる奴に交代しておくんだよ。後20時間は続くかもしれないんだよ。慣れてないなら、尚更だよ。」

「そんなに……。ジーユさんはどこで休憩取るんですか?」

「スジルオが率いる私らトップのチームは穴が開かないようにドラッグチップで強制的に起きてるんだよ。なぁに、24時間以内に終わるんだ。何日も続くわけじゃない、気合を見せるだけだよ。」

「タフですね……。それじゃ、後ろに控えてる人たちと私たちは交代してきます。あ、ユラさんにも伝えてこなきゃ。」

「ユラ殿にはこちらから連絡しておいたでござるよ。安心してくだされ、ハルカ殿。」


 多数のエネミーに囲まれた巨人がいた。それはスプリガンであるユラが変身した姿であった。遅い来るエネミーたち相手に瞬く間に良拳による突き、流れるような蹴りと連続した攻撃で包囲を打ち砕く。相手している間は壁への攻撃が止む。ついで、周囲の怪我したダイバーたちにチャクラによる回復を放出し、自身の怪我と同時に癒しの光によってダメージを回復していく。


「くそっ!数が多い!いくら倒しても捌き切れないぞっ!!」


 いつもの強気が影に隠れて、流石のユラも弱音を吐く。対多数の攻撃を取得しているが、それでも後から後から補充されるかのように向かってくるエネミーに対し、普段は泣き言を吐かないユラがたまらず叫んだ。

 そこにメルから一時交代の連絡があり、周囲のエネミーをきっちりと片付けて壁の中へと戻っていく。

 ユラは貴重な回復を使えるタンク役兼アタッカーだったので、周囲のダイバーの負担を大きく軽減していた。そのユラが壁の中に戻るということで、少なくない落胆が周りのダイバーから漏れる。代わりに駆け込んできたのはデカイ砲身のガトリングガンを構えたテックパラディンだったのを見ると、早くもユラが戻ってくることを切望するダイバーが出るほどだった。

もし、この作品を読んで面白かった場合は是非とも「いいね」や「評価」、「感想」をください。

作者が感激して、執筆速度が向上します!


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