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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
69/96

第69話 ソーンシティ

鬱蒼とした植物が繁茂する世界。ハルカたちはその藪をかき分けながら進んでいた。

 4層のダンジョンはどこまでも続く大森林であることは知っていたが、まさかこれほどとは思いもしなかったハルカであった。


「こんなに植物ばかりで、ここの人たちはどうやって生活してるんでしょうか?」

「ぼやいてないで、この階層のシティを探そうぜ。そこに行けば、ハルカの答えだって見つかるさ。」


 ハルカの疑問に答えながら、ユラが先頭をいく。今は小人の体型なので、ユラがかき分けても、続く人はさらに藪をかき分ける必要がある。地味に大変になる行軍だが、いざ戦闘になった時に後衛からユラが走ってくるのでは仕方ない。

 時々、空をとべるメルが森から飛び出し、行き先が間違いないかを確かめてくる。そのおかげで、目標としているこの階層のシティまでの道は確認できていた。


「うむ、この先にソーンシティがあるはずでござる。先ほども、こちらで見た様子をそちらの端末に映したでござろう。」

「見たケレド、アレってシティってよりタウンだよネェ?間違いナイのカナ?」


 メルの言葉にアモットが横から口を挟む。そう言いながらも、アモットはハルカの真後ろに陣取り、いつでもハルカのために動けるように気を張っている。その姿に、若干の呆れを感じるメルであったが。それもやむなし、と考えを改めるのであった。それほど、以前の戦いでハルカが殺されてしまったことはショッキングな出来事だったのだろうと考えたからだ。

 一時はハルカを担いで移動することを是とし、周りが止めたほどであった。


 実際に、メルの送った映像に映っていたのはどこまでも伸びる緑の薔薇に囲まれた壁だった。その規模は一般常識から考えればとてつもなく長いが、それがシティだと言われると少々規模が小さいと感じる大きさだった


 幸いにも、ここまでの道のりで強いエネミーと出会うこともなく。目的地へとまっすぐ向かっているのだが、森林の深さは事前に想定していたものよりも深く、遅々とした進みになってしまっていた。

 出来ることなら、いち早くシティへとたどり着きジョブのランクアップや装備の手入れ、更新などをしてこの階層の強さへと上がる必要があった。

 


 森の中から、若干の広い空間が目の前に現れた。そこには10 m前後の壁に絡みつく巨大な茨が延々と続いている。途中に途切れたところがあり、そこから中と外への出入りが可能となっているようだった。ハルカたちはその狭間のような門へと向かい、壁の中へと入ろうとする。すると、門の上にあつらえた機銃を構えた衛兵らしき男が声をかけてきた。

  

「ようこそ、歓迎するぜ!3層から来たダイバーだろう?半年ぶりの新人だな。シティの中央にダイバーオフィスがある。さっさといってランクアップをしてもらうんだな。」

「親切にありがとうございます。あの、半年ぶりの新人というのは?」


 ハルカの疑問に笑顔のまま、衛兵の男が答えた。


「いったまんまの通りさ!この場所へ訪れることができた半年ぶりの人間だってことさ!4層にたどり着くにはそれなりの実力が必須だからな。かく言う俺も現役のダイバーだが、しばらくはこの街を離れることはできないだろうな。いろいろあると思うが、詳しくはオフィスに行って聞いてみた方が早いだろうさ!この先、幸運を祈るぜ!」


 衛兵に手を振られながら門を潜り抜けると、今までの森林地帯が嘘のように開けた場所が目に入ってくる。建材には植物を使っている関係上、緑や茶色の建物が多いおかげで、壁と建物の境目がぼやけて見えるようだった。メインの大通りはアスファルトで固められていたが、そこかしこから植物の新芽が顔を出している。

 規模は今まで見た都市の中で最も小さいながらも、最低限の揃えはあるようで、ダイバーがそこかしこを出入りしている。


 これが4層最大の都市、「ソーンシティ」だった。



 ハルカたちは、とりあえずこの階層のオフィスに登録し、ジョブランクを上げようと言うことにした。ジョブランクを上げるためのCPは他の費用に比べると安いものなので、簡単に地力を上げることが出来る。

 真ん中にあると言われたオフィスを目指していると、一際大きな塔のようなものに茨を纏ったものが見えてきた。このシティにあるダイバーズオフィスだった。塔の上には機銃が複数取り付けられていて、物々しい雰囲気を出している。


 緑に包まった建物に入ると、そこは思ったよりも活気が溢れた場所だった。様々なダイバーがオフィスの受付でオーダーを受領しているようだった。


「あら、見ない顔ね。ようこそ、ソーンシティへ!歓迎するわ」


 オフィスの活気に当てられたハルカたちへ受付から声をかけられる。声の主は半透明の体を持った女性だった。


「ミストマンのオフィス受付なんて珍しいかしら?気にしないでくれると嬉しいわ。私の名前はダリエラよ。とりあえず、この階層のダイバー登録からね。」

 そういって彼女、ダリエラはハルカたちの登録を済ませていく。その間にも雑談を交わしながらこのシティに関することを教えてくれる。


「この都市、ソーンシティは規模はここよりも上の階層に比べれば小規模に見えるでしょう?この階層にこれるダイバーが少ないってこともあるんだけれど、生半可なキャラバンだと事故る確率も多いって言うのも問題なのよね。あと、何より月に一度のイバラの解除が問題でね。」

「イバラの解除ですか?もしかして、この都市全部を囲っている茨と何か関係が?」

「そうなの。ハッキリとは決まってないのだけれど、月に一度を目安に茨が効力を失うのよ。茨はソーンシティにエネミーが入り込むことを防いでいるんだけれど、丸一日その防衛能力が効果を切らしてしまうのよね。ここより上の階層だったら、エネミーの侵入なんて散発的で、驚異はないのだけれど。ここのエネミーはその日を狙うかのように襲いかかってくるの。そのために、ここの防備は上の階層に比べれば高いものになっているわ。」


 ここ、ソーンシティは周囲を囲む茨がエネミーを寄せ付けない効果を持つ。しかし、茨は30日の間に1度ほどの割合でその効果を解除してしまう。この階層のエネミーは他の階層と違い、集団行動を多くとるため、一度襲われ始めると周囲のエネミーが居なくなるまでその暴走が続いてしまうのであった。それを警戒し、ソーンシティの防衛は他の都市に比べるとかなり高い水準で構成されている。現役ダイバーをオーダーの形で都市に待機させたり、元ダイバーを雇ったり、戦闘の心得があるものを防衛台に乗せて支援火力に回したりなどしている。


「あと、ドラッグチップの販売なんかもココでしてるから。必要になったら言ってね。」

「ドラッグチップ?麻薬が何に役に立つんですか?」


 ハルカはダリエラから出た意外な言葉に、驚きを隠せずに聞き返してしまう。

 

「ええっと、この半年に出回り始めたドラッグチップのことね。ジョブチップって言うのだけれど、知らない?一般人にもジョブ能力が付与できて、ダイバーだったらさらに強化できるって言う。これが出回り始めてから、シティの防衛が格段に楽になったのよね。もっとも、ドラッグチップの一種だから依存症にもなるし、諸手を挙げてのオススメはできないのだけれど。もし、依存症になったり、何か問題があればあらかじめオフィスで出している保険に入ってもらえれば、その後のことはケアできるわよ。」


 意外なところで意外なものの名前が出たせいで、驚きを隠せないハルカだった。まさか、オフィスぐるみで保険まで出して使用を推奨するものになってるとは思いもしなかったからだ。

 何はともあれ、ジョブランクを上げてこよう。そう考えた矢先にシティにサイレンの音が響き渡る。強烈な音を合図にして、周囲のダイバーたちが真剣な顔つきになってオフィスの外へと走っていく。武装が弱そうなものは、オフィスでチップを受け取ってから走っていった。


「あなたたち、ツイてないわね。イバラの防衛解除の日に当たるなんて。どうする?ランクアップはすぐに終わると思うから、戦力上げてから防衛に回る?それとも、ジョブチップ渡しておく?」

「最短でランクアップをお願いします!」

「なら、この建物の東のほうにあるから走って!」

「はいっ!ありがとうございます!!」


 慌ただしいサイレンの音をかき分けるような感覚でハルカたちはランクアップのための施設へと走っていった。

もし、この作品を読んで面白かった場合は是非とも「いいね」や「評価」、「感想」をください。

作者が感激して、執筆速度が向上します!


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