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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
67/97

第67話 【悪魔騎士】との戦闘

獣魔術、これで伝わる人にはウチの召喚獣のイメージが伝わってくれるかなと。


今回、アレなことになりますが大丈夫。この迷宮には常に徘徊するアレがいるんで。

 【悪魔騎士】が急に身を翻し、徐々に近づいていたユラたちに接近する。両手剣を大きく振りかぶり、一気にユラへと振り下ろした。

 

「罠だったんだ!気を付けろ!!」


 ユラが叫びつつ、迫りくる巨大な剣を避けようとするが間に合わない。袈裟斬りに斬られ、鮮血が噴き出る。そればかりではなく、【悪魔騎士】の剣は切り口から呪いを浸透させユラの動き鈍らせた。

 叫び声をあげた3体のレイスも【悪魔騎士】の合図を受けてユラに集中的に攻撃を繰り出してきた。動きが鈍らされているユラは回避が間に合わない。


「精霊ヨ、防御シロ!」


 アモットの命令で地の精霊は体を分解し、石の壁となってユラへの攻撃を防いだ。瞬く間に石の壁はボロボロに崩壊していくが、完全に崩れるまでは行かないでとどまった。

 続けて、アモットは魔銃を右手に握り魔術を詠唱する。


「『魔刃』、『竜鱗』、『火球』イケッ!!」


 先の二つはユラへ向けて放ち、ユラの拳を青白いオーラが包み込み、体全体を白く輝く金属を思わせるような鱗がユラの服の上に現れた。残りの一つはレイスと【悪魔騎士】へ向けて放たれ、派手な爆発を伴ってレイスたちの姿を大きく薄れさせた。しかし、【悪魔騎士】は剣を振って爆発を両断し受けた損傷は軽微に留まった。それどころか、火球を放ったアモットに向かって外套の中から黒いトゲをはやした触手が伸びてアモットの体に触れる。すると、触れたところが腐食してボロボロと崩れていく。


「何ナノ!?攻撃したラ、やり返すッテ事!?」


 外套の中の山羊の顔が醜悪に歪み、見るものに怖気を与える笑顔を作り出した。常人なら気を失いかねない恐怖を与える顔に怒りを燃やしてユラが拳を叩き込む。激しい連撃を受け、鎧を凹ませる。


「本命はこっちだけどな。」


 攻撃により、闘志を身体中に巡らせてユラはチャクラを放つ。壊れかけた地の精霊に生気を注ぎ込み、ユラ自身の負傷も癒していく。本音を言えば複数体を攻撃できる自分がレイスを叩くのが一番だったが、今は自分と仲間のために状況を整えておくのが先だった。竜鱗の効果で負傷の回復を後押ししてくれている。派手に噴き出たせいで見た目は真っ赤に染まっているが、受けた怪我はそれほど酷くない。

 今はとにかく、体制を整えるのだと己に言い聞かせる。だがユラの攻撃にも触手は伸びて傷を負わせてくる。なかなかに厄介な性質を持ったエネミーだった。


「さすがフロアボス。ですけど、方向性が嫌がらせに特化しすぎてません?とりあえず、皆さんレイスから倒していきましょう!【悪魔騎士】に攻撃してもカウンターの触手が面倒です。回復が追いつかなくならないようにしましょう!!」

 

 ハルカが皆に指示を出して、戦闘の方向性をまとめつつレイスへサイコガンを放つ。命中した思念の弾丸はレイスを1体かき消した。

 メルもバーニングチャクラムを投げ、怪奇竜の特性を持った戦輪が大絶叫を響かせる。レイスたちはその原子的な恐怖をもたらす咆哮に魂を萎縮させた。しかし、【悪魔騎士】には通じなかったようだ。メルのチャクラムはレイスをまた1体倒した。


 残りのレイスは1体。次の攻勢からは【悪魔騎士】への本格的な攻撃と考えていると、【悪魔騎士】の負傷が治っていく。


「なんて悪い冗談ですか。これは長期戦必須になりそうです。アモットちゃん、戦車砲の使用は止めを刺す時に温存しましょう。下手に使っても回復されてしまうかもしれません。」

「了解ダヨ!ダケド、コイツってバ本当嫌がらせのタメダケニ居るんジャナイ?」

「そうかもしれませんねっ!だとしたら、気をつけてください。何か罠の一つか二つは仕掛けているかもしれません!」

 

 アモットの言葉に返答し、ハルカは牽制の射撃を行なっていく。一応、後衛のメルとハルカは遺跡の瓦礫などに身を隠しながら攻撃しているのだが、【悪魔騎士】の触手攻撃から逃げられる気がしなかった。あの追尾性能はとてつもなく高い。被弾覚悟で当てていくしかないと思うと、うんざりする。ゾンビの体だから、痛みは何も感じないが体がボロボロになるのを考えると嫌気がさしてくる。

 

 こちらの番だと言わんばかりに山羊頭が咆哮を上げて両手剣を振りかぶって斬りつけた。チャクラの効果でユラの状態異常は回復し、普段の体捌きができるようになっていた。その状態でも、

その剣風はユラを切り刻んでいく。竜鱗の装甲が激しい音を立てて削れていくが、何とか致命傷にはならない所で避けていた。

 しかし、斬りつけられたところから呪いを受ける。急激な痛みとともに傷口が腐食する。これは、早めに治さないと後々に響きそうだった。


 残ったレイスはアモットへと攻撃をした。アモットにはまだ支援魔術がかかっていない。


「防御シテ、地ノ精霊ッ!」

 

 先ほどユラに回復してもらった地の精霊は体を石の壁に変じてレイスの攻撃を受け切る。先ほどと比べれば軽いがそれなりに破損していく。

 せめて、アモットの砲撃タイミングまで持たせておきたいと思う。精霊の補助を受けて撃てれば、通常の砲撃よりも精度が高く撃てるのでダメージもかなり与えられるはずなのだ。


「(長期戦になると、どっちが有利なのか判断が付き辛いですね。後衛側の消耗度を考えると、こちらに回復が来ないのが厳しいですね)」 


 アモットが回復効果を持つ召喚獣を出せるが、自己強化をするか召喚して回復を追加するか、戦車砲による砲撃に回るかでだいぶこの先の展開が変わってきてしまうとハルカは考えていた。


 ちらりとメルを見る。メルもハルカに目線を走らせる。


 お互い、まだ体力は半分も削られてはいない。ならば、こちらに回復を要請するよりも前衛の状態を万全にする方が優先と感じた。


「アモットちゃん、召喚獣を!前衛の回復を万全にしてください!!」


 アモットに考えを伝えると、ハルカはサイコガンの弾丸に精一杯の呪いを仕込んだ。フラウロスと自前の呪いの混合で命中すれば極端に動きが鈍るはず。【悪魔騎士】が呪いを無効化するような能力を持っていない事に賭ける。右腕と一体化したサイコガンから放たれた銃弾は不規則な氷晶の軌跡を残しながら【悪魔騎士】を貫いた。強烈な冷気が黒づくめの騎士の胸から下を氷漬けにしていく。さらに、徐々に迫り上がるように氷の結晶は上へと登ろうとしていた。

 ハルカは氷結による足止めと、凍傷の呪いを弾丸にこめて発射していた。【悪魔騎士】の再生能力にどれだけ抗えるかは判らないが、せめて再生能力分のダメージを与えて回復をさせないための呪いをチョイスしたつもりだ。その代償に黒騎士の外套の下から鋭いトゲを生やした触手が目に止まらない速度でハルカを穿つ。傷自体は大したことはないが、この傷は避けられず、確実にこちらの体力を削る効力を持っているようで刺された後の虚脱感が激しい。


 アモットはハルカの言葉をもらう瞬間まで後衛を癒すべきだと考えていたが、ここはハルカを信じて前衛を万全にする行動に出る事にした。


「アモットの名にオイテ、出デヨ『癒卵』ッ!『魔刃』、『竜鱗』ッ!!」


 伸ばした左手の先から、複雑な魔法陣が展開して卵形の異形が現れる。続け様にアモットは自分を強化する魔術を自分に魔銃を通して打ち込んでいく。

 召喚されえた『癒卵』は硬質な虫を思わせる羽を4枚羽ばたかせ、アモットの前に陣取った。ブゥウウウウンと低いエンジン音のような鳴き声を発しながら緑の煌めきを辺りに放出する。煌めきは仲間たちに降り注ぎ、傷を癒していく。それと同時に、卵の殻にヒビが入っていく。あくまで『癒卵』の回復はその身と引き換えに行われていく。


 召喚獣の回復によってユラによる負傷の回復はだいぶ負担が軽減された。チャクラの回復力だけではジリジリと傷が増える一方だったのが、この回復力によって一気に余裕が出てきた。攻撃の前に腐食をチャクラで癒し、続け様に連続攻撃を行う。この攻撃でだいぶ気を巡らせることができた。「疾風迅雷」を使う場面はもう過ぎてしまったが、奥の手としてユラは最後のワザを使うために気を静かに巡らせていた。


 続いてバーニングチャクラムをメルが残ったレイスへ投げる。燃え盛る戦輪は弧を描いて命中し、そのまま宙をひるがえり幾度かレイスを斬りつける。テック製の武器だからこそできる動きを見せ、レイスを倒し切った。

 残る【悪魔騎士】に対し、メルは思考を回転させる。

 

「(あの触手、思ったよりも某にはダメージが重そうでござる。ここでヤツに攻撃をし続けて戦闘が終わるまで持つかどうか。ハルカ殿も、それほど体力があるわけではござらん。あくまで肉体の性質上動けるだけでござるからな。体力自体、某より高い程度でござろう。状態異常の心配はしておったが、後衛側に直接ダメージを与えてくることを想定しきれなかった我々の失点でござる)」 


 今回、ハルカとメルは空いているウェポンスロットにいつでも使えるようにとエイドキットを持ち込んでいた。これで何かしらの異常事態は回復することができる見込みだった。実際、ユラの持つチャクラのように状態異常を範囲で回復する能力でもなければ、個々人が携帯するか専任の回復役が必要そうな能力を【悪魔騎士】は持っていた。

 両手剣の攻撃を受けるたびに何かしらの呪いを付与してくる。呪いが高強度ゆえに、抵抗することができずに必ず受けてしまうとなれば、かかる度に治すか無視して短期決戦を狙うか、と言ったところになりそうだとメルは思った。

 また、地味に厄介なのは攻撃をするたびにダメージを与えてくるトゲの触手だった。この能力は複数回の攻撃をするユラや元々の体力が低いハルカ、メルには確実に響いていた。一つ一つは軽くても、積み重なることでかなりのダメージとなっていく。ユラに至っては、一度攻撃を行うと、『癒卵』で回復したダメージがチャラになってしまうほどである。

 これに加え、自己再生能力と呪いの強制付与を行う両手剣の剣戟。両手剣も呪いの効果がなくても、一撃一撃が重く、回復抜きではあっという間に死に体となっていたに違いない。


 単独で戦闘を行っても多数の相手に被害を与える。【悪魔騎士】の戦闘能力は正しくフロアボスにふさわしいものだった。


 再び、【悪魔騎士】の攻撃がユラを襲う。『癒卵』と地の精霊による防御が居なければ不味い事になっていたかもしれない。両手剣の連続攻撃を受け、1発は地の精霊で耐えてもらい、残りはなんとか回避で致命傷は避けるものの、死に近づく傷が積み重なっていく。


「アタシが倒れたら、皆は道連れになる!気の巡りはチャクラに回して回復を優先するッ!!」


 本音で言えば、どれだけ攻撃に回して目の前の黒騎士を仕留めたかったか。しかし、自分だけの力ではそれはやり遂げることができない。ギリギリまで、その時を見極めるようにユラは構えていた。傷が増え、動きに精彩を欠き始めたが勝利を信じて戦い続ける。ユラは傷つくのも構わないかのように、怒涛の連続攻撃を【悪魔騎士】へと叩き込む。闘志が漲り、身体中を熱いくらいに巡っているのがわかる。【悪魔騎士】もハルカによる凍傷の呪い、メルのチャクラムによる炎上を受けて手傷を追い続けている。決して、再生能力はそれらのダメージを上回ってはいない。ユラの打撃は間違いなく鎧の上から通していた。

 

 傷つくことを構わずに後衛二人も遠距離攻撃で火力支援を行う。攻撃するたびに傷つくため、攻撃回数の多いメルがどんどんと傷ついていく。


 アモットが『癒卵』を後衛に回そうと思うが今、回復が途切れればユラが倒れかねない。地の精霊も積み重なる攻撃で崩壊寸前のところを回復効果で留めているだけに過ぎない。

 

「早く倒レロ!化け物メッ!」


 雄叫びを上げざるを得ない心情を吐き出し、戦車砲を背中から展開し砲撃する!砲撃は狙いを違わずに【悪魔騎士】の胴体を貫いた。大穴が空き、その真っ暗な闇の中に何か蠢く影が見える。筋肉に思える「その何か」は、幾重にも動くミミズだった。鎧の下には筋肉の代わりに束になったミミズが鎧の中で動かしていたのだった。真っ直ぐ見てしまったユラはグッと込み上げる吐き気と恐怖に耐えた。

 【悪魔騎士】は、山羊の頭を被りをふらせ、ユラへの攻撃と見せかけてアモットを集中的に覗いだした。強化魔術を掛けたとは言え、アモット自身はエレメントサマナー、つまりは後衛であり耐久力は前衛職と比べればか弱いと言っても間違いではない。

 だが、他の後衛職に比べてアモットには二つの強みがあった。防御に特化した地の精霊と、自己犠牲で防御できる『癒卵』の存在だった。一撃を地の精霊で受け、もう一撃を半分以上ヒビが入った『癒卵』で受ける。残った一撃は自らの装甲を信じて真っ正面から受け止める。


「ユラチャンと癒卵がイルカラ、ナンとかナル!」

 

 アモットは胸部の装甲に中ばまで入った刀身をはねのく様に下がって距離を取る。今度の呪いは魅了の呪いだった。【悪魔騎士】が何度見ても仲間に見えてしまう。これを治してもらうまでは【悪魔騎士】へと攻撃できない。


「ユラチャン!大至急デ、チャクラをお願イ!!」


 言われるがままにチャクラで状態異常を治す。状態異常を治す分にはいいのだが、範囲内に複数の負傷者がいると一人一人の回復効果が落ちてしまうため、負傷の回復は『癒卵』頼りになってきていた。


 唐突に何やら、【悪魔騎士】の山羊頭がニヤついた表情を浮かべて両手剣を余裕そうに地面へと突き刺した。

 余裕ぶったその仕草に怪しむが、ユラが攻撃を行う。今まで練った気の流れを全て集めた全身全霊の「魔人斬り」というワザ、この場合は「魔人穿ち」だろうか。凄まじい衝撃が鎧を貫通し、そのしたのミミズどもに打ち込まれる。沸騰したかのように、ミミズたちはのたくりまわり、何割かが動きを止めていく。

 

 ユラはここで勝負に出た。残った気力はもう空になった。次の攻撃で気を巡り直すまでは何もできない。


 ユラの攻撃を見て、アモットも砲撃を続ける。咄嗟に下がったユラの場所を砲弾が貫いていく。2つ目の砲撃は右肩を大きく抉った。まともな人間ならば、もう物を持てないような有様になっていた。しかし、それでも山羊頭の黒騎士は剣を持ち上げて見せた。

 まるで、今までの攻撃は意味がなかったとでも言わんばかりに余裕を見せる動き。ハッタリなのか、本当なのか。


 先ほどの二人に触手が伸び、手傷を与える。ほんの少しのダメージが、今にも命を刈り取らんとしている状態。それを癒卵がもうほとんどヒビだらけの状態になりながら回復する。

 ここまで来たら、ハルカもメルも全力で攻撃するだけだった。

 サイコガンが右腕から放たれ、氷結をさらに上書きする。

 バーニングチャクラムが炎上と麻痺を与え直す。

 二人にも容赦無く、触手が飛ぶように伸び傷を増やす。後衛側は回復はされていない。もう、余裕は無くなっていた。




 山羊頭がニヤリ、と笑ったのが見えた。




 大振りに振りかぶった右腕の筋肉いや、ミミズどもが伸びて一気にハルカの胸を貫いた。瞬間、呪いの効果が発動し目が眩むほどの火柱をあげた。




 




 ハルカは肉体が焦されて、燃えて死んだ。







 ハルカが薄れゆく意識の中で最後に考えたことは、皆の無事を祈ることだった。


と、いうわけでアレなことになりましたがハッピーエンドになる物語を書くつもりなのでデッドエンドにはなりません。エル、セイジンチームに続くデッドギフトゲットだぜっ!



もし、この作品を読んで面白かった場合は是非とも「いいね」や「評価」、「感想」をください。

作者が感激して、執筆速度が向上します!


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