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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
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第66話 【悪魔騎士】との遭遇

【悪魔騎士】は前に「黒の月の」って付けたかったんですけれど、長くなりすぎるので付けませんでした。

作成したTRPGのルールブックってAmazonあたりで公開すれば良いんですかね?


 遺跡のダンジョンへと入っていく。周囲の建材も3層らしく石造りのように見える。見えるだけで、建材の頑強さは金属に勝るとも劣らない。一説によれば、遥か古の魔法使いたちが使用していた魔法の中に石を変化させるものがあったという。そのような魔法で作られた迷宮なのかもしれなかった。

 いつまでも風化せず、老朽化ということにも縁がないダンジョンの壁を見てハルカはそんなどうでも良いことを一瞬考えてしまった。今からフロアボスと戦うというのに、気を引き締め直すためにサイコガンを構え直す。腕に一体化したサイコガンは見た目は腕が銃になったかのようだ。1層から手に入れることができるこの銃は思念を弾丸へと変化させる。そのため、弾切れという言葉に縁がない。

(最も、実弾を撃つ銃も旧時代の超技術で弾数を内部生成するので弾切れを起こすのは珍しい武器となるが)


 1層から愛用し、幾多の戦闘を潜り抜けてきたこの銃はハルカに取っては相棒というべき武器となっていた。マテリアルも合成し、親和性チューニングを上げて強化したこの武器はアモットの持つ戦車砲にも総合的に競り合えるくらいの火力を誇っていた。

 サイコガンを構え直したことに気がついたアモットがハルカに声をかけた。


「大丈夫、ハルカチャンはワタシが守るヨ。」

「ありがとう、アモットちゃん。」


 アモットは守護の力を持つ地の精霊を呼び出し、既に前衛として配置している。今までのアモットはよく言えば柔軟に、悪く言えば行き当たりばったりに近い行動をとっていた。それで進めていたので、何も悪く言うものは居なかったが、フルツフル戦で何か感じることがあったのかダンジョンの最初からできる限り最適解になるように動いているように見える。

 精霊の召喚はエレメントサマナーの持つ能力の一つで、2時間に1回召喚をすることができる。地の精霊は守護の力を持ち、硬い石や砂で体を構成していてあらゆる衝撃に強く、タフな耐久力を持っている。そのため、前衛に壁役のテッククルセイダーやサイドラグーンが居ないこのチームでは壁として頼ることになる。


 精霊の力を消耗させることで、召喚主の力を一時的に増幅することもできるが、アモットはあまりやりたがらない。フルツフル戦で火の精霊を弾丸に魔銃で撃ち込んだときがあったが、今まではそのような使い方をしたことはなかった。

 ハルカはフルツフルと戦った後から、アモットのダンジョンに対する姿勢というか、見方が変わったのかな?と思っている。3層の難易度というものが実感として現れていると感じていた。


 既にメルが偵察に出ていて、残った3人は周囲を警戒して待機している。メルから定期的に連絡が入り、ダンジョンの構造が徐々に明らかになっていく。どうやら、このダンジョンの分岐はシンプルなようで分かれ道が少ないようだった。構造がシンプルなのは探すときには楽で良い。どうやら、エネミーの配置も大方判明したようで、レイスとミスリルゴーレムで構成されているらしい。


「レイスか、面倒なんだよな。なんか、フワフワして。ミスリルゴーレムの方が殴りがいがあって、アタシは好きだなぁ。」

 

 ユラがレイスとミスリルゴーレムに対する感想を述べる。人工的に作られた悪霊「レイス」。レイスは殴っても手応えはないが、ダメージが通らないということもなく特別な対処は必要なく戦っていける。ただ、こちらの気配を察するのか動きが早いのか、先手を取られやすい。

 ミスリルゴーレムは途方もない硬さを持ち、【ルーキー】ランクのダイバーでは傷をつけることも叶わない魔導技術マギテックで作られた人形だ。このエネミーに対して撃破する自信があるユラは立派な【モンスター】ランクのダイバーとなっていた。


「デモ、両方ともカテゴリーが”異能”のエネミーダカラ”植物”資源のエネミーは別に探さないとダメダネ。」

「うん、そもそも今回はフロアボス討伐が目的だから、達成しないで帰るのも一つの手だと思います。」


 アモットの意見にハルカが返事をする。今回のダイブはいつもとは違い、オーダーの完遂ではない。メインの目的は【悪魔騎士】の討伐になるので、資源集めは倒してからにするつもりで、最悪やらないで帰っても良いと思っている。


 ワンダリングエネミーの内容がわかっているということは、この迷宮で気をつけるべきなのはダンジョンボスだけのはずだ。この階層の雑魚エネミーも油断はできないが、大きな損害を受けるとすればボスエネミーのはず。もし、ボスエネミーと先に戦うことになったとしてもハルカはアモットにはあらかじめ、【悪魔騎士】に対して弾丸数を残して戦って欲しいと伝えてある。

 今までのアモットであれば。トリガーハッピーの気があったのでどこまで通じたか分からないが、今回のアモットからはそのような感じがなかった。


 薄暗い遺跡の中でハルカたちは解体作業を行なっていた。ダンジョンの探索を開始して数回のエネミーとの戦闘があったが、特に問題は起こさずに処理できていた。

 今も、レイスとミスリルゴーレムの混成部隊を倒し、大きな損害は出さずに済んでいた。

 

 メルがチャクラムを投じるとフルツフル・サラダの大咆哮を模した大音がダンジョンに響き渡る。この絶叫はレイスとミスリルゴーレムの動きを鈍らせ、その中の1体にチャクラムは命中して電撃と炎上をお見舞いする。

 その後を、流れるような連続攻撃を命中させ気を全身に巡らせたユラが【疾風迅雷】を使って、爆発的に加速して複数の相手に拳を打った。続け様にハルカとアモットが攻撃を集中させて次々と破壊していく。生き残りのミスリルゴーレムがユラに鋭く尖った腕部で腹部を貫こうとするが、回避で致命傷を避けつつ裂帛の気合いを入れた拳でミスリルゴーレムを逆に貫き戦闘を終了させた。


「いやー、メルのおかげで先手が取りやすくて助かるぜ。先に殴れるとワザを使うための気の巡りが違ってくるからな!」


 各自で解体を進める中、ユラがメルに感謝を言葉にしていた。レイスに先手を取られていた場合、消耗は避けられないと思われたがメルが的確にエネミーの場所、戦いに移すタイミングの指示などを行なってどの戦いも優勢に進めることが出来ていた。

 

 ユラが修めているワザというものは、【チャクラ】を始め強力な効果を持つが大きな欠点として、身体中を巡る気を闘志に乗せて放つ必要があった。これは、戦闘開始前や終了後にあらかじめ巡らせることは困難で、どうしても戦闘中に高めていくしかない。そのため、回復の【チャクラ】は戦闘中ならまだしも、終了後にケアをするように複数回使うことはできず、多数を一気に攻撃する【疾風迅雷】などは戦闘開始時に一撃に使用できるかどうか、と弱点もあった。

 ユラはモンク系列の上位ジョブであるドラゴンフィストの関係で、先手さえ取れれば手数にものを言わせて一気に気を巡らせる戦い方でワザを使いこなしていた。敵を殴れば殴るほど、気は巡って闘志は満ちるのである。


 この関係で、先手を相手に取られるとユラは非常に苦しい展開を強いられる。そこをシノビのメルが先手をチームにもたらしてくれるのは大きな強みになっていた。


「シノビの基本は先手を自陣にもたらすことでござるからな。最低限の仕事程度はこなさねば。こちらも、ユラ殿に多数に攻撃を行なってもらえるので各個撃破がだいぶ楽になったのでござるよ。」


 ユラが今回のダイブから使いこなしている【疾風迅雷】は気の巡りを四肢に集中させて爆発的な加速にて多数の敵に攻撃を仕掛けるワザだった。今まで、1体ずつ倒すしか出来なかったハルカのチームにとっては待望の対多数攻撃だった。

 通常エネミーとの戦いがこれでグッと楽になったのをチームの各自が感じていた。おかげでアモットの弾丸も温存できている。

 

 レイスの攻撃で削られた体力をユラが戦闘の余韻による【チャクラ】で回復している。ついでに多少の手傷を負ったアモットも回復される。ゴーレムは異能の力を含んだ回復効果以外はその効果が落ちてしまうが、チャクラの回復を受けてゴーレムの体は破損部位を修復していく。単なる機械ではないからなのか、ここら辺の仕組みは未だ解明されておらず、ハルカの損傷もチャクラは回復してくれている。おかげで、このような生物が少ないダンジョンで生肉を探して貪らなくてもハルカの身体はパッとみなら生気に欠けた少女、程度の風体を保っている。


 「メルさんの索敵にもまだ【悪魔騎士】は引っかかってきませんし、ここで小休憩を取りましょう。」

 

 ハルカが解体したクリスタルゴーレムの核を浮荷台フローティングキャリアに積みながら声をかけた。皆がうなづいて、警戒は解かずにウェポンを持ちながら近くの瓦礫に腰を下ろしたり、自分の浮荷台フローティングキャリアにもたれ掛かったりした。


 各々が休憩を取る中で、ハルカは隣で砲身を背中に収納していくアモットを見ていた。砲身はアモットのサイズからすると入るわけがないのだが、不思議なことに全てが背中のパーツに収まってしまった。その後はサブウェポンの魔銃を右手に持ち、警戒を緩めることなく立っていたがハルカがこちらを見ているのに気づいて反応した。


「ドウしたのハルカチャン?」

「あ、いえ。いつ見ても不思議だなぁって思って。ゴーレムの方達って、変形もできるんですよね?」


 ピンクのカラーリングが遺跡の中で目立つことこの上ないアモットを見ながら、ハルカが疑問を口にした。


「ソウダヨー。デモ、変形できるノハ一時的にだけナノ。後、ウチら世代ッテ大昔のと比べて劣化した作成機から生まれてるミタイデ、変形するタビニ無理が生じてダメージを各部に受けチャウンダけどネ。」


 ハルカの疑問に答えられる範囲でアモットが答える。旧時代の技術の結晶であるゴーレムなどは今もダンジョン内で自動生産される。発見されたゴーレムは人間の都市に連れ帰られて基本的な教育を受けたのちに都市に関わる業務などに就くことが多い。ダイバーの性格にもよるが、闇市で奴隷のように売り捌かれることも他種族でも機械のように見られることが多いティンクやゴーレムは珍しくない。

 アモットの保護者となったダイバーはそういう意味では非常に珍しく、アモットの扱いを人間と同等にしていた。基本教育から、高等教育までを行う学校に通わせていたのがその証拠とも言える。

 そのせいか、アモットはゴーレムの中では人間的な思考を自然と行っている。一般的なゴーレムはどこか固い印象を与えるが、言葉だけを見るとハルカと同世代の少女のようだ。

 もっとも、戦車砲に執着はあまり同世代の女子はしないとハルカは考えていたが。


「アモットちゃん、魔銃は使い勝手は良いですか?私がサイオニクスシャーマンなのにサイコガンなんて持ってるから、魔術とか使えなくてごめんなさい。」

「ウウン、そんなこと言わなクテ大丈夫ダヨ?魔術媒体としてモ、普通に攻撃ウェポンとシテモ結構使いやすいヨー。」


 アモットは最近は魔銃と呼ばれる魔術媒体を好んでサブウェポンにしていた。理由は魔術媒体の中で最も戦車砲に近い形をしているからである。

 籠めることができる魔術の数は3つだが、魔銃は長距離に魔術を放つことができる。さらに着弾が早く、回避が難しい。


 今はアモットは3層で購入した魔銃に火球、魔刃、竜鱗をセットしていた。それぞれ、広範囲爆裂の火の玉を射出、攻撃に魔力の刃を上乗せし攻撃力を増大、魔術による装甲と自動的な傷の修復となる。どれも3層で購入したもので、そのおかげで戦車砲にも、自己の装甲にもCPを費やしているアモットは個人で持っているCPは殆どの残っていない。人間ならば必要になる生活費をギリギリまで削ることでチームメンバーに借りる事なく活動していた。


 ハルカはそのことを知っていたので、自分一人だと不要な大きさの宿をとってシェアしたり、屋根のついた駐機場のある場所を探したりなどしてアモットが野宿にならないように気を回していた。

 アモットもその事には気づいていたので、稼ぎがいい時はハルカの口に合うものを購入して送ったりもしていた。


****

 休憩を終えてから3つの区画を移動したのち、しばらく先を調べると言ってメルが先行した。今回は守る護衛対象もいないので、ハルカたちは自分たちのペースでダンジョン捜索をしていた。

 ここに至るまで、植物資源となるエネミーは見つけはしたが、量が確保できず。通常オーダー自体は失敗になる可能性が出てきていた。その事については稼ぎが減るのは残念だが、ダンジョンダイブ前に考えていた結果の一つでもあるので、残念だけれど仕方ない、と言ったくらいで気落ちすることはなかった。


メルがしばらくすると偵察から帰ってくる。


「偵察した範囲には【悪魔騎士】は見当たらなかったでござる。しかし、一つ先の区画にダンジョンボスらしき存在を発見したでござるよ。」


 ダンジョンボスの姿は歩く巨大な毒キノコといった姿だった。このダンジョンで生息する植物エネミーの一種であるキノボーの特殊個体のようだった。


「それって、植物資源になりそうですね。通常オーダーの心配はしなくても良さそうです。」

「なら、あとは【悪魔騎士】を探すだけだな!どこに居やがるんだ?」


 とりあえず、ダンジョンボスは無視して別の区画を行く。いくつか活きている罠もあったが、メルが慎重に外したことで無力化をして無事に進んだ。

 すると、3区画先に【悪魔騎士】を発見した。その姿は巨人のようであり、巨大な2本の角を持つ伝説に登場する山羊の頭を黒い外套で覆っている。ただし、その街頭の中に見える目は7つもあり、真っ当な生き物ではないことを感じさせた。その頭を支える体は黒檀のような色の騎士甲冑を着込み、大ぶりな両手剣を構えて微動だにしない。他エネミーは見当たらず、単独でエリアに佇んでいる。


「ついに見つけたでござるよ!」

「ありがとうございます、メルさん。皆、フロアボスに対しては全力で戦いましょう。場合によっては、撤退も視野に入れます。端末から撤退指示が出たら確実に逃げてくださいね。」


 メルの偵察ではそこまでの道のりに他のエネミーは見当たらず、罠らしきものも無し。ハルカは絶好のチャンスと見て、【悪魔騎士】と戦うことを決定する。アモット、ユラも大きくうなづいてウェポンを展開、拳を突き合わせて気合を入れるなどして戦闘準備を整えた。


 【悪魔騎士】がいる場所は雰囲気はまるで墓地のようだった。いくつもの石碑が列をなし、黒づくめの異形の騎士まで続いている。緊張で震えそうになる手を無理やりウェポンを握ることでごまかし、前衛の巨人化したユラと戦車砲を展開したアモット、召喚されている地の精霊が近づいていく。

 もう少しで戦闘開始距離というところで、石碑の中から数体のレイスが飛び出し、【悪魔騎士】に絶叫で知らせる。 


「不味い!先手を取られるでござる!!」


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作者が感激して、執筆速度が向上します!


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