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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
61/97

第61話 エルフの魔術研究者フブキ

ちょっと見返していたら、このチームって短編のつもりで書いていたんですねぇ。誰です?すぐに切り上げるって言ってた人は?

 前回のセイジン達のキャラバン護衛依頼、数日を空けてダイバーオフィスのオーダーを受けて、ハルカとアモットは依頼人とオフィスで対面していた。人間よりも大きいサイズのアモットは、通常規格で作られたダイバーズオフィスはやや狭いらしく、窮屈そうにしている。

 ユラとメルは、最近ダンジョン予報という技術が出来、オフィスでCPを払って予報を聞いているチームが結構いると聞き、早速予報を入手しに別行動をしていた。



 目の前の相手は一見するとボサっとした見た目のエルフの女性で、名前をフブキと言った。魔術師だが、いわゆる市井の魔術師であり、ダイバーではないとのことだった。


「はじめまして、ワタシはフブキといいます。見た通りにエルフでして、あなた方とはおそらく100歳ほどは違うでしょうかねぇ。今回はワタシの研究調査の護衛をしてもらえるという事で、よろしくお願いしますねぇ。」


 フブキの見た目は30歳ほどに見えるが、全く違う年齢を刻んでいることにハルカは驚いた。


「見た目は私たちよりもちょっと年上くらい見えますけれど……。あ、ごめんなさい。」

「いえいえ、気にしないでくださいねぇ。どうせ、エルフの年齢なんて50も過ぎたらあとは同じですよぉ。」


 朗らかに笑うフブキにホッとするハルカだった。


「ダイバーになると、自力で調査に参加できるんでしょうけれど。でも、関係ないダンジョンに潜るオーダーが回ってきたり、研究を主体に動く事ができないんですよねぇ。それって、わたしの欲するものと異なるんで、こうやって護衛を依頼して直接現地を調査するのが丁度いいんですよねぇ。」

 

 フブキは3層から出土する古い魔術や魔法を研究していて、専門は人の精神性、特に記憶に関する分野だという。あまりダンジョン攻略に関係する分野ではないので人気がなく、なかなか情報が集まらないとぼやく。自身はちょっとした回復魔術が使えるくらいで、戦力としては考えないで欲しいと言われる。


「一度、ダイバーさん達にお願いしてダンジョンの遺品を回収してもらったんですけれどねぇ。想定していたよりもひどい状態で回収してもらうことになっちゃいましてねぇ。そうなるくらいなら、と。ワタシが自分で調査に行くようにしてるんですよねぇ。亅

 今回のオーダーの内容はあるダンジョンの奥までの護衛。一度、ダイバーにダンジョン攻略ついでに遺物回収を頼んだが、貴重な文献や情報を壊されて以来必ず自分で調査することにしているということだった。

 

 ハルカたちは通常オーダーとしてはそれなりにいい支払いをしてもらえることに満足し、契約を結ぶことにした。当初、ハルカたちは魔術研究者ということで気難しい老人を想像していたが、フブキは見た目はズボラながらも気さくな人柄で見た目も年齢で言えば30代に見える。しかし、実際には120歳を超えた年齢で驚きだった。そんな話をしていると、ハルカの身体の話になった。何が起こったのかをかいつまんで話て、フブキに経緯を説明する。


「あらあら、世の中広いというか。そんなことって起こるのねぇ。でもそれって、もしかしたらなのかもしれないけれども。ワタシよりも寿命が長い可能性だってあるわよねぇ。」


 そう言われると、もしかするとそうなのかもしれないと思えてくる。そう考えると、フブキの120歳の年齢を上回るかもしれないと考えて、そのころの自分はどうなっているんだろうと思ったりもするハルカだった。


「ア、でもハルカチャン。シワは出来なさそうだよネ。」


 アモットがあまり救いにならないフォローをしてくれる。少し気が滅入りながらも、一応ありがとうと返すハルカであった。



****

フブキと対面が終わった後でもメル達は合流することなく、1時間くらいした後にメルとユラが長い行列の間から戻ってきた。


「いやぁ、えらい目にあったぜ。正直、メルが行ってくれたんなら、アタシはいらねぇんじゃなかったかなぁ?そもそも、端末に送ってくれりゃ済む話じゃね?」

「仕方なかろう。オフィス員がウェポンスロット経由で大規模コンピュータに接続して1つ1つシミュレートしたものを伝えるようなことをしていたので御座るから。まだまだ、対面でのやりとりは続くで御座ろうな。」


 ぶつくさとぼやくユラをなだめるメルがハルカ達にどういったことをしていたかを語ってくれた。

 メル曰く、ダンジョン予報というのはダンジョンのワンダリングエネミーの出現率や出現情報をまとめたものでどのダンジョンに潜ると何のエネミーが出るかがわかるというものらしい。

 確率の話なので、エネミーが出る場所まではわからないとのことだった。


「後、大きく予報が外れてエリアボスが出る、なんていうこともあるらしいで御座る。」

 

 予報のためのデータが不足していることもあり、まだまだ不安定な要素のようだ

 それでも、情報があるとないとでは作戦や方針などが大きく変わってくるため、多少のカネならばと予報カウンターにダイバー達が殺到しており、今もカウンターは大盛況だ。

 

 カウンターにはだいぶ疲弊したオフィス員がなんとか笑顔を作りながら、どこのダンジョンに潜るのかを聞いて、1つ1つに対してシミュレーション結果を伝えている。


今回、フブキが指定された遺跡のダンジョンの場所に関するシミュレーションをしてもらった結果、

手に入れた情報は、フルツフル・サラダと呼ばれる奇妙な形をした食料エネミーが現れそうだということだった。


「その相手ならば、単体で現れたならば我々が相手するとなっても苦戦は必至でござろうが、死ぬことはないと判断いたす。」


 幸い、出くわしたとしても死人は出ないと思われる程度の脅威とユラが判断する。

 そうとなれば油断は出来ないが、倒せればリターンが見込める。特にマテリアルが手に入れば、戦力増加に繋がる。改造による売却不可になるウェポンを考えると、吟味する必要はあるが。


 翌日、フブキとオフィスで待ち合わせてダンジョンへと向かうことになった。オフィス前で先日会った時よりも少し装備を整えてきたように見えるフブキが待ち合わせ場所に現れた。


「やっぱり、ダイバーさんがいると助かるわねぇ。重いものを背負うこともないし、普通には運べないものを運んでもらうこともできるしねぇ。」


 浮荷台フローティングキャリアはダイバーにオフィスから貸与されるもので、遺跡探索には欠かせないものだった。これがあるからこそ、人が運べないような大質量のものだって持ち運びできる。もうすでに失われたテクノロジーの塊であり、生産機を牛耳っているダイバーズオフィスが全てを管理している。これを回収する目的で全滅したダイバーの救出を派遣されることもあるくらいだ。


 ダンジョンへの道を歩いている中でフブキが自分の研究内容に触れた。


「昔ね、ちょっと知り合いの人間がいたの。名前はラッセル。あの頃は兄のようでもあったりしたし、少し恋もしていたわ。でもね、彼はダイバーをしていたのよねぇ。ある日、ラッセルはダンジョン内で死んで蘇生したわ。その日を境にして、ワタシのことを全て忘れてしまったのよねぇ……。」


 昔、古い友人だったラッセルという男性がいた。フブキの兄のようでもあり、思い人でもあったがダイバーをしていたことで死んだ後に蘇生、デッドギフトの影響でフブキへの記憶を失ってしまった

 その後、今は別の女性と結婚してダイバーも引退して老人となり、世を去っていったとのことだった。

 いよいよ、この世と別れる時がきたという事でフブキがラッセルに面会をした。その時のラッセルはやはり


「すまない、あんたのことは思い出せないようだ。名前を教えてもらうことはできるだろうか」


 と言われた。彼は、私のその時まで意識も記憶もしっかりしていたので、身内や知り合いを一人も忘れることはなかったのに。

 それは、覚悟していることだった。なぜなら、デッドギフトの代償で記憶を失ったものは新たにその対象に記憶や思い出を持つことすらできないのだ。新たに関係を気付くこともできないことに気づいた時は、二人の関係に終わりを告げられたように思えてひどく失望したのを覚えているとフブキは語った。


「さすがにねぇ、もう亡くなっているし。未練なんてものはないつもりなのよねぇ。でも、あの時の心の痛みは今でも覚えてるわぁ。あの痛みを持つ人が、いなくなるならそれは素敵なことだと思うのよねぇ。」


 それ以来、3層に住みついて魔術や魔法の遺物研究をして人の意識や記憶について研究しているそうだ。テックによるアプローチも進んでいるらしいが、未だに記憶復活の道のりは遠いらしい。フブキも魔術による記憶回復は成功させたが、あくまで一般的な物忘れや記憶喪失などに使えるだけで、本命のデッドギフトによる記憶の喪失までは回復できていない。


 「普通の記憶喪失なんかにはある程度の効果が見込める魔術も発見できたんだけれどねぇ。デッドギフトによる記憶の喪失はどうにも原因に異能とテックが入り混じってるみたいでねえ。」


 ブギーマンによる蘇生はテックと異能が入り混じる特殊な技術で行われているらしく、両面に深い知識を持つ者はほぼいなく、研究は進んでいない。一人、有名な人物として1層で研究しているジョロトキア博士というものがいて、定期的にやりとりをしている。


 そういえば、と余談としてフブキは自分の研究内容に興味を持った男がいたことを語った。まだ研究段階で実験すらできない状態だと知ると旅立っていった。彼は何か手がかりを手に入れたら必ず一番先に知らせてくれるということだったが、今はまだ音沙汰がない。噂では4層に情報を集めに行ったそうだが。3層も十分古いが、階層を下るにつれて旧時代の情報や技術が眠っている事が多い。少ない期待をして研究を続けている。


 現在の魔術は古いものを発掘して使っている段階で、ダンジョンで有効に使えるのが集積図書庁で積極的に周知されているが日常に根差したような魔術も研究されていて、精神に関する魔術もその中の一つとなる。

 

 ハルカはそんな話を聞きながら、フブキの話に興味を持った。それは、フブキの人の記憶の修復というテーマに関することもそうだが、自分の記憶に関しても思うところがあったからだ。


 ブギーマンによって蘇生した者は例外なく、記憶を失う。そう、例外なく、だ。


 なら、自分はなぜ記憶を失っていないのだろう?

 

 もしかしたら、自分が意識していないだけで記憶を失っている可能性はあるが、家族の記憶もあるし学校の記憶だってしっかりしていると思う。これはアモットと話していて、会話の内容に齟齬が出たりもしていないことから、一応大丈夫だと思う。確証はないが、忘れている記憶や思い出などはないと感じていた。何故なのだろうと、フブキの話を聞いていて少し前から思っていた違和感が湧き上がってきたのだった。


 もっとフブキと話をしたかったが、ダンジョンに入るなりにエネミーの襲来があり途切れてしまうことになった。


 戦いながら、ハルカは本当に自分は一体何なのだろう?と考えるのだった。

もし、この作品を読んで面白かった場合は是非とも「いいね」や「評価」、「感想」をください。

作者が感激して、執筆速度が向上します!


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