表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
51/97

第51話 ジョブチェンジ後

「ハルカが1番遅かったかー。」

「ハルカちゃん、こっちダヨー。」


 食事処メシヤの中はこれから忙しくなると言う時間だったようで、まだカウンターやテーブルに座っているものもまばらだった。

 ユラが先に軽くつまめる物を頼んで食べているところに、ハルカが入り口でキョロキョロとしているところを見つけた。アモットがハルカを手招きして呼ぶ。

 全員が無事にジョブチェンジを行い、ここに集まったところだった。


「すいません、遅くなりました。皆はどうでしたか?私は、けっこうやれる事が変わって来そうだったので、ちょっと色々と教えてもらっていました。」

「真面目ダネー、ハルカちゃン。でも、そこがハルカちゃンの良いところダシ?」 

「そういうアモット殿もだいぶ変わるであろう?確か、以前一寸だけ組んだ【デッドライン】のチームにもエレメントサモナーがいたが、何やら召喚をしていた様で御座るが。」

「あー、確かにデキるミタイ。でも、ワタシは基本的にこれで戦うことに決めてるからねー。使うダケ使うケレド、フル活用は考えてないカナ。」 


 最後に来たのはハルカだった。遅くなった理由として、ジョブの方向性がより攻撃的になるので、施設職員に簡単に講義のようなものを開いてもらっていたのだった。

 アモットの茶々入れに、真面目にメルが話を振る。アモットはエレメントサモナーへジョブチェンジを果たしていたが、ジョブの特性を気にせずに自分の戦い方を変えるつもりは無さそうだった。元々、エレメントウィザードの時点で一般的なウェポン装備傾向から外れていた彼女のことだ、なんら不思議な話でなかったので、皆とくに違和感を覚えたりはしなかったが。


「そういうメルはどうなんだ?」

「おそらく、ユラ殿と同じような物で御座るよ。ジョブの方向性に大きな違いは御座らん。役目も変わらずで御座る。」


 ユラはドラゴンフィスト、メルはシノビとジョブチェンジを果たしていた。

 ドラゴンフィストはモンクの能力を、シノビはニンジャの能力をそれぞれ素直に向上させたものに近く、戦法、戦術が大きく変わることはないのでユラとメルは素直に受け入れ、2人とも同じタイミングでメシヤに辿り着いていた。


 とりあえず、各自で飲みたいもの、食べたいものをオーダーする。機械系種族のアモットとメルは整備用の油などで自己メンテなどをしている。メルの方は食事をしようと思えば出来なくもないが、今は食べるよりも実がある方を選んだようだった。


「よーし、とりあえずはジョブチェンジおめでとう!かんぱーいっ!」


 ユラが音頭をとり、乾杯を叫ぶ。アルコールが入った血液のコップがハルカ、真っ当なアルコールを飲んでいるのはユラ、アモットとメルは形だけの乾杯をしてコップはユラ に回していた。

 以前、ここで食事をした時は周りの目がイロモノを見る目だったが、今では中堅としてそれなりの存在感を出すようになっていた。

 もう、前のように絡んでくる酔っ払い、馬鹿にしてくるルーキーはいない。最も、それらは大抵がアモットの戦車砲の向きが変わった瞬間に逃げ出していたのだが。


「ジョブチェンジ皆すんなり終わったんですね。私はサイコメトリーとか使えなくなったんでちょっと、今までと変わったかもです。【邪霊の誘惑】、【死霊の囁き】、【祖霊の導き】と使えてたものがガラッと雰囲気が変わりました。ほとんど相手への阻害能力の強化を行う特性を得ました。その関係で、サイコガンを別のウェポンに変えようかなって。」

「へー、サイコメトリーって結構便利ダッタのにネー。ワタシは精霊召喚ができるようになったから、それに壁役やらせたり自分のパワーアップに使っタリとできるようになったミタイ。便利ダッタら、使いこなそうカナ。」 


 ハルカとアモットがジョブチェンジ後の特性を話し合っていた。その話の流れにユラとメルも混ざってくる。


「アタシは拳に竜の気を纏って、装甲を貫通することが出来たり、出来なかったりするぞ!うまく当てないと貫けないんだ。他には、連続攻撃も強くなったし。あとあと、気功による回復も強化されたな!チャクラと併用すれば今までよりも一気に回復できるようになった!!ウェポン?いや、ワザをまた増やすつもりだ!」

「某も皆と自分の特性を共有するで御座るよ。まず、先手を取れなくても己を強化することが出来るようになったで御座る。早く動ければ動くほどに強くなるようになり申した。あとは先手を打つための感の冴えが効くようになったで御座る。最後に1時間ごとに1回、影を自由に操って自分の有利に出来る技を習得したで御座るよ。某はそんなところで御座る。後は、自分の速度を加速させるウェポンを購入を検討しているでござるよ。」


 それぞれが自分たちのジョブの特性について話していると、ハルカは端末が何かのメッセージを受け取っていることに気づいた。発信者はエルであり、どうやら伝言が端末へと配信されたようだった。他の皆には配信されていないようなので、ハルカが開封して読み上げた。


「ジョブチェンジおめでとう。直接言っても良かったんだが。こちらに事情があって、4層の方へ先に行かせてもらう。もし、ヴァイス絡みで何かあったら呼んでくれても良いからな。もし、記憶の復元に関係する話を聞いたら、是非とも俺宛に送ってくれ。どんな些細なことでも、マユツバものでも構わない。それじゃ、そちらも目的達成まで頑張れよ。ーエル。」


 読み終えたハルカは、内心でヴァイスとは最終的には縁を切るつもりであり、来る時のために切れるカードが多い方が良いと考えていた。


「(正直、管理者がどのくらい強いのかもわかっていませんからね。エルさんが付いてくれるなら心強いんですけれど。でも、何故でしょう?あちらにとってのデメリットはあってもメリットが見えてこないのですけれど。)」


 現行のダンジョン管理者と繋がっているダイバー、これは基本的には口外しないようにしている。もしかしたら、ダイバー仲間から攻撃されたりダイバー自体を続けられなくなる可能性がある。今のところ、チームメイト意外に知っているのはエルのチームだけだ。それ以外には、元管理者だったミストマンとコネがある、程度に抑えた噂話は流している。意外にも、管理者と言うのは自我を取り戻した瞬間に殆どの権能が無くなる代わりに、自由意志で動くことが出来る。ダイバーとなっているものも、少ないがいないことは無い。

 ヴァイスがその意思をどうやって保ったまま管理者を行えているかはハルカたちには謎だが、元と現行では天と地も異なる力の差がある。

 

 読み上げを聞いたアモットは、エルが4層に向かったことについて思ったことがあった。


「確カ、3層の衛星都市はジニーズキッチン、4層はプラントガーデン。4層に何かアッタ?」

「強いて言うなら、フラウロス・フラペチーノが本来いた階層がそこで御座るが…。何か思い当たるフシでも?」

「もしかシタラ、探し物ガ見つかったノカナ?って思っただけダヨー。3層って、魔法系のエネミーが多いんだっけ?」 

「実際には、異能で御座るな。確か、あちらでは資源としても古代の魔術研究施設や封印された魔法陣などがよく見られるらしい。突出して魔術、魔法、異能関係の資源が多い反面、生活に必要なものが産出することが少ないと言うことで、必要な素材を回収にいくダイバーも多いらしいで御座るよ。それらを輸出する代わりに、他資源を買い取るようで様々な階層から買い付けているらしく、キャラバンがひっきりなしに訪れるとか。」


 メルが知っている知識を披露する。他のメンツは「へー」、「なるほどー」と言うレベルで知らなかったようだ。

 さりげなく影を分裂、引き伸ばして端末を複数操作して調べた知識をさも知っているように語っていたことに気づいたものはいなかった。


「なぁ、この手に入れたフラウロスの内臓機関はハルカが持った方がいいんじゃないか〜?」


 不意に、ユラが酔いが回った顔でハルカに言った。ハルカはいきなりのことでオロオロしている。


「あ、確かにサイコガンを売っテモ良いケレド、改造トカできればそれで良いんジャナイ?」


 アモットが横から口を挟んでくる。肝心のハルカは迷った顔をしているが、チーム全員がハルカに、と言う空気を出していたのを感じてしまった。まだ、エスパーの名残があるのかもしれない。

 

「では、謹んで頂きます。大事なウェポンになりそうです。」


 大事なウェポン。そんな言葉が私からも出るようになったんだなぁ、と一人で感じていた。ちょっと前まで、一般市民だったハルカとしては複雑な心境でもある。

 改造ができるのは3層からのようだが、ロル&ラウルにいるドワーフに頼み込むと言う手段も考えている。確か、ドッシュと言う名前だったはず。


 その日の祝杯はその後も続いたが、夜になる頃にはユラが出来上がっていたので、自然と解散する方向となった。

 

 ユラをアモットが背負い、ハルカ達と宿を取っていく。メルは持ち家と言うほどでも無いが、元々住んでいた部屋がある。あまり治安が良いとは言えない区域を通り、殆どの外灯がチラチラと切れかけているような場所をメルはふわふわと浮かびながら進んでいく。薄暗い路地の奥に、その部屋はあった。崩れかけた鉄橋が屋根のようになった下に奇跡的に崩されることなく残っていた家をアパートに改造したようなところだった。明かりがまばらについていたところから、他にも住人は居るらしい。

 一人で住んでいた自分の部屋はもちろん真っ暗で、照明のスイッチを起動ワードで点けてメルのサイズにぴったりとなっているクッションに座り込んだ。

 端末をいじり、1日の最後に、必ず行う本日の報告を当局の管理官に送った。これは普段はチームメンバーからも見えないところでこっそりと送っている。主に、現在の進行状況、チームメイトとの諍いや確執はないか。1年以内の5層到達まで、ちょうど50%と言うところで、残りの時間は8ヶ月はあった。

 普段なら、この一方的な連絡で終わるのだが今日は違っていた。管理官側からの返事の音声メッセージがついていた。


「囚人00985、貴様のターゲットとなる賞金首【メム】が4層へ移動したと言う報告があった。他のやつに出し抜かれないように祈るんだな。念のために言っておくが、貴様が所属するチーム以外が討伐した場合、刑期の軽減は無いからな。気をつけることだ。」


「…、了解した。」 


 端的な返事を送り返すと、メルは思い返すことがあった。エルが4層へと急いで行ったと言うことに対し、いい知れない違和感があった。この管理官の言った内容でおぼろげに考えていたことがまとまる。もしかしたら、エル達と自分が追いかけている相手は同一かもしれない。

 メルはクッションから立ち上がると、あまり開かない窓を開けた。夜風が部屋の中に入り込んでくる。今日は表層都市も普段より静かに見えた。

 相手は自分たちよりも格上のダイバー。もし、相対することになれば勝ち目がない。

 いち早く、3層を抜けて4層へとたどり着かないと…。メルは一人、夜風を纏いながら焦りを感じていた。

もし、この作品を読んで面白かった場合は是非ともいいね!や評価、感想をください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ