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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
48/97

第48話 フラウロス・フラペチーノ

 巨大な戦車の放った砲弾が金属の床に当たり、盛大な弾着音を鳴り響かせた。目下、ハルカ達はギガントタンクとの戦闘を継続中である。

 先行していたエル達のチームから討伐を譲ってもらい、ユラとアモットが前線を形成している。先ほどまで激しい戦いを涼しい顔でこなしていたエルはハルカ達がいる後衛側に下がって様子見をしている。

 ダンジョンの中で二つ以上のチームが同一のエネミーと交戦する場合は大抵、どちらかが手を引くのが暗黙の了解となっている。それは、倒した後の解体権利などが絡んでくるためであり、そこがクリアされてれば共闘する場合もある。しかし、今回はエル達は静観することに決めたようだった。

 

 ギガントタンクは攻撃を前線に集中させているが、砲撃がいつ後衛側に向かうとも限らない。アモットもユラも必死にギガントタンクをつなぎ止めていた。ユラは巨大化をしつつ、連撃を繰り出している。【浸透撃】を使い、ギガントタンクの厚い装甲を撃ち抜いて内部にダメージを与えている。

 ハルカがマインドコネクトを使いながらサイコガンを当てていく。サイコガンは履帯に衝撃を与えて弾けさせ、機動力を奪っていく。メルは両手のガンファーを撃ち、マインドコネクトの恩恵を受けてアモットは戦車砲を一気に当てていき、中央の重要機関部にダメージを叩き込んだ。


 ギガントタンクが砲塔を旋回させるが、ギシギシと音をたてて中途半端な狙いをつける。狙った砲撃はアモットに当たったが、シールドバリアを張ってダメージを軽減したおかげで軽微なダメージに留まる。

 

「ウェッ!?、シールドの上からダメージが入るんですケド!さっきのお兄さんは何でこんなのと普通に戦えてタノ!?」


 アモットがエルの戦いぶりを思い返し、思わず叫ぶ。先ほどまで戦っていたエルは回復魔術を使用されていたこともあるが、砲撃を直撃されても弾き返すなどをしていた。アモットからすれば、エルの戦いはバケモノじみたように感じた。

 シールドバリアの残量が一気に持ってかれ、次のダメージは通常装甲で受けるしかなくなってしまった。マイペースなアモットが焦りを感じる。

 しかし、エル達と戦っていたダメージがギガントタンクにも蓄積している。勝負の行方はどちらがどれだけ大きなダメージをたたき込めるかという状況になっていく。

 

 ギガントタンクの機銃攻撃がアモットとユラを襲う。砲撃に比べれば小さなダメージだが装甲の類がないユラはまともに食らってしまう。アモットはエグゼキューターの装甲部分を盾代わりにして直撃を防いだが脚部などのはみ出ていた部分にダメージを受ける。

 さらに砲撃がハルカの方へ発射された。回避力などないハルカは直撃を受けて胴部に大穴を開けながら後方へ吹っ飛んでいく。


「ハルカ殿!よくもやってくれたな!!」


 メルが叫びながら銃撃を浴びせ、ギガントタンクの装甲を削り取っていく。もう、ギガントタンクもボロボロになっていて動力機関や内部構造が見えているような有様で戦っている。


「皆!私は大丈夫だから、攻撃に集中して!!」


 ハルカが腹部の負傷から内臓をはみ出させつつも、立ち上がる。ゾンビであるハルカは人間と違い、致命傷を受けていてもは普通に動くことができる。サイコガンから弾丸を放ち、ギガントタンクにダメージを重ねていく。

 ハルカの攻撃に重ねるように、ユラとアモットが攻撃を放つ。それぞれの攻撃が胴体部分を貫き、ギガントタンクが動きを停止させた。


「ハルカ!今直してやるからな!!」


 停止させたギガントタンクから離れ、ユラがハルカの負傷をチャクラで癒そうとした時だった。



「アォォォォォォオンッ!!」


 何処からか動物、それも肉食獣の叫び声を思わせる声が聞こえた。


「な、何だろ…?警戒を解かないで皆。」


 負傷を直してもらいながら、ハルカが端末越しにチームに警戒を促す。

 叫び声を聞いたエルがハルカ達に声を張り上げた。


「フラウロス・フラペチーノ、4層にいるバケモノだ!前衛連中、俺が壁になるからマトモにぶつかるなよ!?Mr.トリック、出番だぞ!!」

「了解したッ!先ほどの戦いでは、出番がなかった分こちらでは存分に活躍させてもらおうではないかっ!」

 

 エルが呼びかけると、ミストマンのMr.トリックが空中にホログラフの姿を投影してエルの隣に現れた。

 エル達がハルカ達の陣形に加わるように体制を立て直したと同時に、遠くに見えたエリアゲートから猛烈な勢いで向かってくるエネミーが確認できた。

 それは、体全体が氷でできている巨大な豹のようだった。こちらもまた巨大なツララを2本浮かべながら、駆けてくる。

 剥き出した牙の隙間から冷気を吐き、ウェポンを構えたエルとぶつかった。


 フラウロス・フラペチーノは巨大な茶色の豹を思わせるシルエットをしている。全長は10 mを超えていて、その巨体で俊敏な動きをしている。

 特徴的なのは2対の大きなツララを浮かべていることで、攻撃に防御にと使ってくる。

 このエネミーはこのなりで、このエネミーは食料分類のエネミーである。フラペチーノの名が示す通り、その正体はカプチーノ入りのフローズン飲料なのである。体毛のように見える細かい氷は茶色のカプチーノが溶け込んでいて、食べることができれば非常に美味である。しかし、4層のユニークエネミーとして存在するフラウロスは簡単には倒せない。

 常に体表に凶悪な冷気をまとって、氷壁を作り出し攻撃を妨害することもできる。攻守ともに優れたエネミーである。


 接敵したフラウロスは2対のツララを打ち込んできた。発射した際に、空中にツララを次から次へと生成し連射を可能としていた。

 エルは撃ち込まれたツララを構えていた装甲銃で弾き、逆に銃撃を撃ち込んでいく。この銃撃をフラウロスはツララとは別に瞬時に作り出した氷の壁で相殺した。

 接近距離ながらも、2者は射撃武器での戦いを選んだようだった。激しいぶつかり合いが行われる。


「武者震いがするなっ!これが4層の、ユニークエネミーって奴かっ!!」


 いつにない震えを無理やりに押し殺しながら、ユラが巨大な姿で殴っていく。しかし、固いかと思っていた体表はふわりとした柔らかな雪を思わせる茶色の体毛で衝撃を包み殺した。

 【浸透撃】を使えばダメージが入るかもしれないが、先のギガントタンク戦で力を使い切ったために今は放つことが出来ない。


「まさか、こんな化物とやりあうなんて想定外だったからな!」


 せめて、足手まといにはならぬように自分にできる最大限の4連撃をぶちかましていく。大部分の衝撃が吸収されてしまうが、構わずに攻撃に専念する。

 ユラが果敢に攻撃を行なっている姿を見つつ、アモットも撃ち切ってしまった戦車砲の代わりに、エグゼキューターによるマシンガンの攻撃に切り替えている。


「念のタメニ、魔杖に切り替えておかないトネ。」


 魔杖による魔術サポートを想定して、アモットは戦車砲を格納して魔杖を右手に装備した。戦い方が派手な戦車砲に注目しがちだが、エレメンタル・ウィザードのアモットは魔術を使うことも得意としている。魔杖のスロットには回復と防御の魔術がセットされている。この二つも使って格上相手に今できる最大限の活躍をせねばならない。


「ワタシはテッククルセイダーのヒトの邪魔にならないように戦ウヨ!!さぁ、避けて避けてお兄サン!!」

「おっ、おい射線上に俺を入れるな、ゴーレムの嬢ちゃん!!」


 アモットが左腕に構えたエグゼキューターから大量の弾丸を吐き出す。エルを掠めるようにだが、フラウロスへ命中させていく。3層のウェポンらしく、フラウロスの体毛の衝撃緩和を上回りダメージを与えていく。致命傷には程遠いが、ダメージは積み重ねられていく。


 ハルカとメルはマインドリンクで息を合わせながら遠距離からの攻撃に徹している。ハルカのサイコガンはエスパーの能力によって、ダメージが入らなくとも、相手の行動を阻害する。

 メルはこの機会が使いどころと判断し、密かに買っておいた【ブレスオブファイア】を発射した。超広範囲にスマートミサイルをばらまく武器なので、本来なら対多数戦に遭遇したときに取っておくつもりだったが4層のエネミーとの戦いで自分が行える最大限の行動をしていく。


 【ブレスオブファイア】は対象の装甲を貫通し、さらに撃ち込まれる瞬間に質量を爆発的に増加させる使い捨てのテック武器だ。強力な威力に広範囲の攻撃で、命中対象の回避力を下げる。その代償に、使いきりのウェポンだ。

 この効果により、ハルカの攻撃によって阻害されていた回避能力がさらに激減する。本来なら躱せた、もしくは軽減できたような攻撃が全て命中していくようになる。

 おかげで、直撃させづらかったアモットのエグゼキューターの射撃や、致命部位に当てられてなかったユラの攻撃も当たるようになる。


「ふむ、これならば我が友に強化とフラウロスへの攻撃を行う方が良いな!」


 Mr.トリックはエルへの強化とフラウロスへの阻害を同時に行った。Mr.トリックに搭載されたスロットに入った【Exアタックアプリ】を使い、エルの弾道制御や起動演算などをエルの拡張視野に加えていく。エルの動きが目に見えて変わり、的確な攻撃タイミングで打ち込んでいく。

 さらにフラウロスには【ライトニングアプリ】を使い、フラウロスの受信装置にハッキングを仕掛けて行動阻害と同時にダメージを与えていく。


 フラウロスとエルは近距離での撃ち合いをしながら戦いを続けている。幾多の妨害を受けながらもフラウロスはエルに無視できないダメージを与えていた。

 そこにエルフのアザニンはエレメンタルサマナーの能力の一つである、精霊召喚を行い水の精霊を呼び出して自分の魔術の支援をさせる。

 アザニンはエルにダメージが入り、負傷で動きが鈍くなる前の的確なタイミングで回復魔術を使っていく。


 フラウロスはツララでの攻撃を切り上げ、冷気をまとわせた牙による接近攻撃へと切り替えた。行動阻害を受けつつも、エルの装甲銃をはねのけて胸倉に牙を突き立てる。


「ぐぅッ!?」


 強化鎧パワーアーマーを貫通して、フラウロスの牙が容赦なく冷気を体内に送り込んでいく。装甲のおかげで牙が刺さった深さはほんの少しだが、その少しの傷から付近の細胞を壊死させていく。

 アザニンの回復魔術では切り傷などの負傷は塞げるが、壊死していく細胞を蘇らせることが出来ない。

 ユラが攻撃をやめて、エルへとチャクラによる回復を試みる。邪魔と判断したのか、フラウロスがユラへと牙をむいた。


「オォォォン!?」


 ユラへの攻撃を、瞬間的に増速したエルが受け止める。テック・クルセイダーは纏っている強化装甲服(パワースーツ)にブースターがあり、それによる急加速で近距離の仲間への攻撃を防ぐ壁となることができる。

 さらに、装甲服パワースーツ装備者でないと動かす事すらできない、強化鎧パワーアーマーはブースターの性能をさらに強化しつつ、その装甲の分厚さで効果的にブロックを行った。

 エルはフラウロスの牙を今度は装甲銃で受け止めて、さらにデッドギフトのアーマースキンによる強化防御を行うことでダメージを削減する。エルに出来うる防御策を全て講じてここまでやって、何とかフラウロスの牙を食い止めることができた。


「なんつーか、俺は低層でバケモンを呼んじまう呪いでも受けてるのか?」


 エルがフラウロスと距離を離し、仕切り直したところで誰ともなくボヤいた。


「たまたま、と言いたいところだが。我々が下層で活動していた時にコレに目をつけられていた可能性はあるな。フラウロスの小型を狩った記憶があるぞ、わが友よ。」

「ああ、それじゃ仕方ないわね。とはいえ、ここでやられるわけにもいかないわ。」


 Mr.トリックがエルへと返答し、それにアザニンが横から会話に入る。

 フラウロスはエルの周囲をぐるりと回るようにしてエルとの距離をゆっくりと縮めていく。どうやら、本気を出して戦うようにしたようだ。

 唐突に、周囲にチラチラと雪が舞い始める。


「これは…?もしや、我々の行動を阻害する為で御座るか!?」


 メルがそれに気が付いた時には、戦場の金属の床は凍結しており、アイスバーンとなっていた。

 近接戦闘を行うユラはもとより、遠距離攻撃をメインにしたアモットやエルもフラウロスからの攻撃を避ける動きを鈍らされている。

 さらにここにきて、フラウロスは巨大なツララをマシンガンのように発射した。しかし、それは前面ではなく上空へ向けてだった。


「まさか、全体攻撃を行うってのか!クソッ!!全員、回避しろっ!!」


 エルが叫ぶが、全域にツララの雨が降り注いでいく。さすがに、全体に放たれた攻撃をエルが庇うことは出来ない。

 メルは元から空中に飛んでいて持ち前の身軽さと小ささでダメージを受けなかったが、ハルカは逃げ遅れてツララを数本胴部に刺される。ハルカは地面に縫い留められるように刺さっているため、動くことすらできない。

 アザニンは召喚した精霊に受け止めさせることでツララの直撃を回避した。しかし、精霊がだいぶ弱ってしまった。もう2回もされれば存在を消してしまうだろう。

 

 前線側も防御が得意なエルは装甲銃を掲げることで弾き止めたが、アモットがエグゼキューターの装甲を使ったが間に合わず、もろに受け止めてしまっていた。

 ユラも回避を試みたが、足元のせいで防ごうとした腕ごと貫かれていた。

 

 逆に、エル達の攻撃はフラウロスへの攻撃は雪のような体毛による軽減や氷壁で致命傷には届かない。

 

「くそ、頼りたくないが使ってくか!」


 エルがデッドギフトの一つ【刃腕】を使い、近接戦を試みる。4層到達者になったエルの【刃腕】はとてつもない鋭さへ変貌していた。一撃一撃が、フラウロスの体を切り裂いてく。


「ワタシもとっておきを使うヨー!」


 アモットがエグゼキューターの切り札、ロケット弾を使う。射出されたロケット弾は水平に煙を吐きながら、フラウロスに命中する。強烈な爆発を起こしてフラウロスの体に大きなダメージを与えた。フラウロスが若干ふらつき、アモットへ敵意を滾らせる。


 Mr.トリックが【ライトニングアプリ】を使って、地道にダメージを積み重ねていく。ダメージは小さいがフラウロスの防御を貫通してダメージを与えられる攻撃だ。


「やっぱ、4層エネミーは一筋縄では行かねぇな!」

「同感だよ、わが友よ!」


 3層すらまだなのに、4層と戦う羽目になったハルカたちはギガントタンクとは次元の違う強さを痛感していた。

 縫い留められたツララを抜きつつ、ハルカはサイコガンで応戦する。


「まさか、こんなところで格上のエネミーと戦う羽目なるなんて…。今だけはゾンビの体に感謝しちゃいますね。人間だったら、私多分死んでます。」

「…あなた、何で生きてるわけなの?とりあえず、回復するわね!」

「あ、大丈夫です。私、ゾンビなんでその手の回復魔術とか効かない体なので。お気持ちだけもらっておきます。」


 大穴が開いているハルカに魔術で回復をしようとするが、ハルカはアザニンにゾンビなので無効な事を伝え、丁重に断った。

 

 相変わらず、フラウロスの猛攻が続き、負傷者が増え始める。アザニンの魔術使用回数も残りがドンドンと少なくなっていく

 さらに全体攻撃が行われ、追い詰められる。フラウロスの全体攻撃は弾数が無限のように発射され、回避が不利になったエル達を追い込んでいく。


「不味いな!デッドギフトで防ぐのも今ので限界だ!!」


 おまけにエルの防御デッドギフトも底をついた。防御面がさらに不利になったことをチーム全員が把握する。もう、アモットとユラはエルを頼ることができない。

 ハルカはマインドコネクトをエルに繋げて、エルの攻撃を最大化する。


「よし、なら俺は攻撃に集中する!」


 さらにエルは自発的に暴走をして、デッドギフトの【刃腕】と【装甲鱗】を暴発させて壁役を辞めて攻撃側まわる。

 暴走したデッドギフトがエルの体を侵蝕する。全身に回ったナノマシンが肉体を作り変えていく。

 エルは敵を殲滅することしか考えなくなり、仲間の防御などは考えなくなる。

 今まで守ってもらっていたアモットとユラも踏ん張りどころとなった。


 全体の攻撃が行われて、前衛のアモットとユラは軽くない負傷を受ける。ハルカに至っては、負傷の影響を受けないから動けるだけであって、体の耐久力は限界を迎えようとしている。


「これが最後よ!皆を癒やせ、水の精霊ッ!!」


 アザニンは自身の魔術の才能を全開にして、一度きりだがの全体回復を行う。呼び出した水の精霊も消滅させて、最も強力な癒しの魔術を広範囲にかけた。ハルカ以外の負傷がみるみるうちに癒やされていく。アモットの魔杖の回復魔術もストックがつき、戦いは正念場を迎えた。


 フラウロスの速度に追いつき、獣のように暴れるエル。刃腕と装甲麟による侵食を受けた肉体は化け物のように膨れ上がり、猛烈な攻撃を行っている。

 【刃腕】による攻撃がフラウロスを切り刻む。逆に攻撃を受ければ、【装甲鱗】が弾け飛びフラウロスに小さな傷を幾つもつけていく。これにはフラウロスも悲鳴をあげて一旦距離を取る。しかし、エルは追いかけていく。


 ユラはチャクラを使って、ヒーラーとしてダメージを少しでも軽減しようとしていく。


「早すぎる!アタシのチャクラの範囲のなかに収めるので手一杯だ!」 

「うわわっ、ちょちょ!合わせるだけで一杯一杯ですよ!!」


ハルカはエルとマインドコネクトを行うが、とんでもない速度で戦場を駆け巡るエルに振り回されながらも懸命に食らいついて、サイコガンでフラウロスに隙をつくらせた。


「エルさん、お願いします!」


 ハルカの声が届いたのか、エルは渾身の攻撃を連打していく。刃を限界まで伸ばし、【刃腕】でフラウロスの首を叩き切った。さすがのフラウロスも、首から胴体が切り離されては生きていられず、その動きを止めて倒れ伏した。


「あれ、アタシらギガントタンク倒しに来たんだよな?もう帰って良いんだよな?」


 あまりの疲弊に困憊したユラが誰ともなく、声を漏らした

 それに対して、罰が悪そうな顔をしたエルが申し訳なさそうに謝罪する


「すまなかったな、君達。多分、コイツは俺たちが引っ張ってきたエネミーだ。まさか、階層超えてまで来るとは思わなかった。」

「我々は、本当にこの手のトラブルと縁があるな。前回のバルバトス戦は我々に非は無かったがな!」


 エルは一つ、妙案を思いついたと言わんばかりに手を打って、ハルカに申し出た。


「俺たちはこのエネミーの解体権利を放棄する。君たちで処分してくれてかまわない。」

「えっ!?それはありがたいのですが、いいんですか?」

「そうだな、この後都市に戻ってからヴァイスに会わせてくれるなら問題ない。悪いな、Mr.トリック、アザニン。」


 仕方ないという顔で、エルの申し出を承認するアザニン。


「あなたが決めたなら、私は反対はしないわ。ただ、穴埋めは絶対にしてもらおうかしらね、エル?」

「わかった、そう凄まないでくれ。約束するさ。」

「なら、いいわ。あなた達、頑張って解体しなさいな。2層でこんなこと、もう起こらないでしょうし。先に都市で待ってましょう。」

 そういって、端末の連絡先を交換する。


「まさかの遭遇戦だったけれど、これで3層へ進む準備が出来たみたいですね。」

「早く解体して、マシンヘブンに戻るでござるよ。」


 これで、ハルカ達はギガントタンク討伐を終えて3層へ向かうことが出来そうだった。

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