第45話 アザゼルとジャスティス
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ハルカ達は工業地帯の様なダンジョンを歩いていた。
このエリアにはほとんど機械系以外は現れるのが珍しい場所だった。
「あっついねー、ココ。内蔵された冷却装置がどうにかなりそうダヨ。」
アモットが意外にも一番根をあげていた。高音、低音に弱いらしい。ゴーレムとしてそういう種族なのではなく、彼女個人の感覚からだった。
とはいえ、チームメンバーが全員大丈夫かというとそうでもなく、平気にしているのは2層出身のユラくらいなものだった。
今回のハルカ達はテック至上主義者の中にいるジャスティスという男を探さないといけない。ダンジョンの奥深くにまで行ってないことを祈りつつ、人間らしき集まりを探していく。
テック至上主義者はその名の通り、旧時代においてもテックによる文明が優勢だったとし、今この世界にも旧時代の様なテック文明を取り戻そうとしている団体だ。
ただし、問題点として異能はテックの下位互換、プロミスのワザに至っては存在すらもスルーされるほどにテック以外を信じない、一種の宗教と言える団体だった。
その中で、例の違法チップを量産し続けていたジャスティスという男、簡単なプロファイルはヴァイス経由で手に入れることができていた。
一言で言って仕舞えば、夢想家の類に過ぎない男というのが端的な表現となる。
テックが全てを救い、テックさえあればマザーAIすらも手中に収められるはずと信じている。
違法チップ、とりわけジョブチップは人類の戦力を増強する切り札として彼はキリキリと働いていたはずだ。
それが、何故かテック至上主義者の中でも原理主義はというべきか、テック以外の存在を拒み、積極的に排除していく団体と合流しているらしい。
2層に居る間メルがいろんな場所を出入りして、集めてきてもらった情報によると、原理主義に傾倒して行ったらしいことがわかる。
「さすがだよね、メルさん。ここまで情報集めてくれるなんて。」
「ふ、某にかかればこの様なこと些事に御座るよ。」
メルの調べによると、ダンジョンの中でもサルベージが済んでしまい何もなくなった様なダンジョンにアジトを作り、その中で何かやっているらしい。
「人間の相手が予想されるけれど、ハルカ大丈夫か?」
「うん、なるべく殺さない方向でやっていこうと思う。いいかな?」
「まぁ、アタシらも殺人鬼じゃないんだ。そのくらいは大丈夫だぜ。」
テック至上主義者の施設占拠というのは、マシンヘブンにある3DPよりも性能の良いもので高性能ウェポンを作り、自分たちの戦力増強に充てたりしているらしい。
その不穏な動きがダイバーズオフィスへと伝えられ、何かしでかす前に捕縛してしまおうという流れになり賞金首になったという流れである。
ちなみに、主な賞金首は「レイザーザモン」というリーダーが筆頭となり、あとは烏合の衆と捉えられているが、ジョブチップの危険性を知っているハルカ達はその程度の脅威で治れば良いなと思っている。
事前情報だと、戦車や人型兵器などもあるらしく、ジョブと関係なく危険度の高い仕事に感じた。
ハルカは、なんでこんな仕事を2層にきたばかりの私たちに当てたのだろうと納得していなかったが、報酬のCPが良いことで誤魔化されていた。
「大丈夫、ワタシらが一緒なら平気ダッテ!」
ハルカの心を読んだかの様に、アモットが声をかけてくれる。それに対して笑顔で振り返るハルカ。
ダンジョンの中には狩り尽くされた様でエネミーは一切出てこなかった。おそらく、定期的に排除をしてるんだろう。そうでもなければ、壁や床から定期的に補充されるエネミーがいない訳がない。
エネミーを駆除できる程度の強さを持った集団かぁ、とハルカは考える。作業として戦えるなら、それはダイバーと同程度の戦力を持っていると思って然るべしだと思った。
「あまり、相手を見縊らない方がいいで御座るな。場合によっては、相手の方が上にいるかも知れぬで御座る。」
「そうだね。正直、ここまでエネミーがいない場所だとは思ってなかったです。それだけ、清掃が済んでるってことですからね。」
そうこうしている間に、団体の反応をメルが見つける。もしかすると、向こう側もこちらの反応を感じた様だった。
奥のエリアから警報の様な音が鳴り響く。ハルカ達は強襲が失敗に終わったことを悟った。
ある程度、血が流れることは仕方ないと思いながら、戦闘の準備をする。
向こうから現れたのは事前情報があった「レイザーザモン」と、姿を教えてもらっていた「ジャスティス」という男、それ以外に妙に筋骨隆々とした男が二人、いかにもなテック製のウェポンを装備した男が一人。
「貴様ら、ここが我々アザゼルの領域と知っての狼藉かー!?知らぬで立ち入ったなら、すぐさま帰るがよい。追手はかけぬ。しかし!しかしぃ!向かってくるなら、こちらには打って出る覚悟があるぞ!!」
思いの外、宣戦布告を行ってくるテック至上主義者の面々。
「では、ヴァイスからの伝言です。ジャスティス!あなたはなぜ名に背いてそちらに合流したか!返答を聞かせていただきたい!!」
「ヴァイス!ヴァイスだって!?」
奥から、ヒョロ長の男が出てきた。戦闘向けとは思えない、研究者といった体の男だった。
ジャスティスは、前線に出ないもののの、拡張期で答えてきた。
「わ、ワタシは違法チップを作るために生まれた訳じゃない!これを利用して旧時代の文明に追いつくために作っていたのだ!!ヴァイスの体の良い量産工場になるつもりはない!」
なるほど、それはとても納得のいく意見とハルカは思った。このままだと、皆殺しというよりはなんとかして捕縛にする方向で戦った方が後味も良いかなと思った。
「では、私達はジャスティス様の確保をさせていただきます!それ以外の方は生死を問わずで戦わせて頂きます。ご覚悟を!!」
ハルカの啖呵に【アザゼル】の面々はウェポンを握り、掲げて返してくる。奥のガレージから巨大な人型兵器が2体現れた。
「あれは、アタシの相手だな!シェイプシフトベルトの効果、見せてやラァ!!」
ユラが変身ベルトの効果を試そうと叫びを上げる。
メルが相手の行動を読み切り、先手を取る。
人数が多いため、マトを絞り切れないハルカ。レイザーザモン、ジャスティス、人型兵器2体、一般構成員が4体。中々の人数となっている。
マインドコネクトを起動しつつ、人型兵器へと攻撃を集中する。
ジャスティス以外は敵陣は前線へと集中している。これを逃す手はない。
「えっへへへ!ここで役に立つなんて、ワタシってばすごーい!」
アモットは魔杖から新しい魔術アプリを起動して投射した。それは、「火球」の魔術。着弾した周囲を炎の嵐に染めていく。多くのエネミーが炎に巻き込まれていく。
その直後、ユラが【疾風迅雷】の動きで敵陣を縦横無尽に襲い掛かる。一般構成員はあっという間になす術もなく倒れ伏していく。
人型兵器はその装甲の厚さも相まって、半壊で済んでいる。そこへ、ハルカがサイコガンで攻撃を行う。回避も覚束ずに狙い撃ちされる人型兵器、さらに追い討ちでメルがガンファーでトドメを刺しにいく。1体はあっさりと壊れ、動けなくなっている。
敵陣の攻撃として、レイザーザモンはテック主義者とは思えない筋肉美を前面に押し出しながら、ミサイル砲を両手に担ぎ上げて一気にぶっ放した。
この攻撃は前衛、後衛と関係なくダメージを与えた。
この攻撃によって、少なくないダメージをメルが受けてしまった。ハルカも同じ様なダメージを受けたが、ゾンビの体は大した痛みを感じない。それが、仮に一般人だったら悶絶して動けない程度に辛いダメージだったとても、だ。
残った人型兵器がビームを剣型に射出形成した武器を振るってユラ に襲いかかる。
ユラは身を躱そうとするが、肩口からザクリと叩き込まれ赤い鮮血が空を舞った。戦闘に支障が出るダメージだ。
次の攻撃で沈められそうだが、思ったよりもこちら側の損害が出てしまった。
ジャスティスは後方で巨大な攻撃兵器を起動させようとしていた。
それが何なのかは分からないが、おそらくロクなものに違いないと想定する。
ジャスティスを直接攻撃できるのは、前線から射撃攻撃ができるアモットと、後方から狙撃攻撃できるハルカだけだった。
◆あれ、絶対優先順位高いですよね!
◉得体の知れないものほど、怖いものはないで御座る!
○ワタシとハルカちゃんで攻撃して、壊しちゃおう!
マインドリンクによる作戦会議で、即座に破壊に決定がなされた。
ハルカのサイコガンが命中し、動きに鈍りが出たところをアモットの戦車砲がトドメを仕掛ける。
ジャスティス自身、謎の兵器の下敷きになって倒れているが、命に別状は無さそうだ。
レイザーザモンがミサイル攻撃を仕掛けてくる。この攻撃自体は回避も防御もしづらいので、難儀してしまうが、変身ベルトで装甲と耐久力が増している巨大なハチをモチーフにした人影が攻撃を受け止めている。言うまでもない、ユラである。
多くの砲撃をユラが受け止め、残った者はアモットが受けていく。メルに行く砲撃は少なくなり、それによる戦線離脱の可能性は急速に押し込められていった。
レイザーザモンにユラが接近戦を仕掛け、4連撃をお見舞いしていく。さらに、サイコガン、戦車砲と連続して砲撃を受けた敵はなす術もなく倒れ伏した。
最後に残ったジャスティスだったが、流石に形成不利を悟り降参をした。
かくして、アザゼルの面々の討伐作戦は終了したのであった。
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