第43話 怪しいドワーフ クラフト
ハルカのチームが長続きします。もう少ししたら終わるか、それともハルカのチームを主軸に据えた話にシフトするべきか…。
一区切りついたら、TRGPデータも公開します。
もし、興味がある人がいればデータを公開します。
12号車両はすでに何発かの被弾をしていた。金属質の光沢を放った煌びやかさを感じさせた車両はもう見る影もない。
先手は取れたが、流れ弾が当たってしまっていたらしい。
タイタンアームズは巨大な両手を地面に叩きつけ、跳躍する様に追いかけてくる。巡航速度はやや落ちて40km/hといったところだろうか。
「2体かあ、早めに倒さないと12号車がキツいかも。もう流れ弾で結構破損してるし。」
「走れるうちに敵をどうにかしないとで御座るな。」
マインドコネクトをかけ、素早く情報共有ができる様にする。
アモットがさっさと終わらせるが吉として、シューティングモードに体を変形させて撃っていく。
タイタンアームズの腕の付け根に命中し、致命傷を与えられたらしい。相手の腕が一本ちぎれて転がっていく。
「ヤッタ!大当たり!!」
命中箇所がよく、ほぼ一人で無力化できたアモットが大喜びする。
巨大化したユラが外に出て、車両と併走する形でタイタンアームズを相手する。そこに生まれたちょっとしたスキにハルカとメルがそれぞれサイコガンとガンファーを当てていく。
さらに体が崩れたところにユラが4連撃を加え、最後に蹴りを放ってその反動で車両側へと戻ってきた。
「なんとかなったな!」
「後続のエネミーはいないみたいで御座るな、少し休もう。」
「賛成です。勿体ないですけれどね、解体する相手がもうどんどんと向こうのほうへ…。」
いくら低速とは言え、時速40kmは動かなくなったエネミーを置き去りにするには十分な速さだった。
「仕方なかろうな、こればっかりは。」
と、ハルカ達が喋っている時だった。12号の扉が中から開き、ずんぐりむっくりという形容がふさわしい男が歩いて出てきた。
「よう、姉ちゃんたちいい腕してるな。俺に雇われないか?報酬は弾むぜ。」
「怪しいおっちゃんだな、何者だ?」
唐突な男の言い分にユラが拳を握り、ハルカ達の前に出る。
ドワーフの男は左腕がマニュピレータになっているが、デッドギフトだろうか?
「安心しな、左腕は別にデッドギフトみたいな物騒なもんじゃない。俺の名前はクラフトって呼んでくれ。表層都市からマシンヘブンへと旅行中の旅人だ。」
「その旅人さんが、なぜこんなところで無賃乗車なんてことを?」
「単純に金がなかったんだ。ここに潜り込めたのはラッキーだったな。」
何気ない会話をしつつ、さりげなくハルカはクラフトと名乗ったドワーフに近づいていった。
「おっと、お近づきになりたいのは山々なんだがね、俺はこう見えてシャイなんだ。そこから近づかないでくれると助かるね。」
クラフトの目が警戒した目になる。ハルカがやろうとしたことを見破っていたのかは分からないが、クラフトは少し距離を置いて止まった。
カネがないという割には、支払うカネはたっぷりあるという。怪しい人物。ハルカはそう判断していた。
「ちょっと待っててください。」
「できれば手短に頼む。」
◆この場合、犯罪に巻き込まれるケースが最悪だと思う。マインドリンクを目立たない様に起動させ、他の皆にも意見を募る。
◆あのね、最悪は犯罪の片棒を担ぐことだと思うの。ユラちゃん、アモットちゃん、メルさん、どう思う?
◉そういうことであれば、オフィスのオーダー履歴を洗って、該当する人間がいたか調べるで御座るよ。
○ワタシはこのおじさん、嫌いじゃないんだけれど。目的とか目的地はしっかりと聞いておきたいかな。
■アタシはこのおっさんから強さを感じないから、どうでもいい。あ、ヴァイスと関連性がないかだけはハッキリした方がいいんじゃねぇか?
◆すごい。ユラちゃんから建設的意見が出た。
■アタシが頭使っちゃいけねぇ言い方だな。まぁ、流しておくぞ。
◆それじゃ、ヴァイスとの関連性から調べてみようかー。
ドワーフの男は少し不気味なものを感じていた、先ほどまで喋り倒していた女子どもがいきなり声を上げるのを止めて沈黙したのだから。
益々、あのセミボブの髪型をしたゾンビの女子はエスパーで間違い無いだろう。
程なくして、ゾンビの女の子、ハルカと呼ばれたダイバーが話しかけてきた。
「あなた、クラフトさんでしたっけ?そちらと私たちが追っているヴァイスという人が関連性があるかだけ調べたいんですけれど。」
「なんでもやるがいい。わしの潔癖が証明されればオーダーもしやすいという話よ。」
「では、ちょっと失礼。」
端末をいじり、画面をホログラフで投影していく。そこにはやや退屈げな男の姿が映った。
「ヴァイス、ちょっと聞きたいことがあるんですけれど。」
「さんをつけろよ、デコ助と言いたいが面倒だな。忘れてオケ。で何の様かなー?」
「目の前のドワーフさん、見覚えはありますか?」
目を細めて、ドワーフをしみじみと見回すヴァイス。
「いや、オイラとは関係がないな。で、そのドワーフがどうかしたのか?」
「ちょっと成り行きで、護衛を受けるかどうかで悩んでいるだけでした。関係がないなら、ここまででーす。」
ハルカが送信を切ろうとしたとき、ヴァイスが間に入り込んできた、
「悪くは言わん、そいつの護衛ならやっといた方が得だぞ。詳細を言えば、ドワーフの方が機嫌を損ねるだろうから詳しくは言わないがな。」
「はぁ?」
そう言って、ヴァイスとの連絡は途切れてしまった。
マインドリンクを経由してメルが結果報告を行なってくる。
◉少なくとも、表層都市を出るまでに受けていたオーダー一覧の中には似た様なものはないで御座る。ついでに言えばクラフトという依頼主もいなかったで御座るよ。
◆ありがとう、メルさん。正直二層で手間取りたくないからCP集めは出来るだけしたいなーって思ってるんだけれど、どうする?
○ヴァイスの言い方も気になるよねー?害じゃなくて得になるってんなら、オーダーは受けたいところだけれど。
◆私がエスパーってところを異様に気にしてるよね?メチャクチャ隠し事がある感じだよ。
○どうしてもっていうなら、ハルカがマインドリーディングすることを条件にしてみたら?
◆なるほどね、それで行こうか
再び、静寂がドワーフに訪れた。おそらくは、精神同士を接続して高速で会議でもしているところだろう。男はダイバーではないが、ダイバーそのものについては一通り知っているつもりだ。そうでなければ、仕事ができない。
静寂を破り、ゾンビの女の子ハルカが男へと話しかけてきた。
「あのですね!私のマインドリーディングをおとなしく受けてくれれば、判断をすぐにでもできるのですが。」
「その提案を受けて、断られる可能性があるということもあり得る。そうじゃな?」
「そうですね!正直なところ、あまり大変なオーダーは私たちに手に余るということもありますし」
ドワーフは逡巡した。正直、自分のことをオープンにすることはしたくない。しかし、戦闘ジョブを持たない自分はこのまま行ってもダメだろう。追手の件もある。自分一人じゃどうのもならないのは元から見えていた。
「よし、いくつか条件を出す。それを飲んでもらえるなら何でもするがいい。一つ目は、わしのことを調べても情報を他者に漏らさないことだ。これは、仲間内にもキツく守ってもらう。ハルカとか言ったな、そちらだけで情報を握っていてもらう。二つ目はこの依頼を受けなかった場合、箝口令を敷いてもらう。もし破った場合、オフィス経由で君たちにペナルティがいくと思ってくれたまえ。」
「了解しました!ではでは、ちょっと失礼します。」
ハルカはドワーフの男の近くへ行き、手を握ってマインドリーディングとサイコメトリーを行った。
「あ、なるほどです。これは、口外したくもありませんし、私を一番警戒しますよね。安心してください、そっち系ではありません。」
「その言質が、どれだけ信頼できるかは他ならぬお前さんらの働きぶりで見せてもらおう。」
「では、皆さん。こちらクラフトさんを雇い主として2層のマシンヘブンまで護衛したいと思います。報酬は一人20cpだそうです!」
「おお!全体じゃなくて一人に対してか!!」
その報酬に対して、大歓声を上げる面々。その後、クラフトの自己紹介が行われた。
腕のいいウェポン調整士だが、割の合わない仕事にでくわして、辟易して雇い主の顔を殴っておん出た
そのせいで、追いかけられるはめになっちまった。賞金首とかは掛けられてないはずだが、もし掛けられたとしてもこちらの依頼を優先してもらいたい。
所持しているCPは少ないが、仕事さえできればあっという間に稼ぐことができるんで、それが出来次第の後払いとなる。
初っ端に変な依頼主を護衛することになったハルカたちだが、目標は早期の3層到達。そのために、2層のフロアボスを倒さないと、とハルカは気を負いすぎていたところがあった。
今回のクラフトさんは、もしかしたらその目的を達成するために重要な役割を果たしてくれるんじゃないかと、密かに思っていた。何せ、彼はxxxxな人なわけだから。
その後、目立った敵襲は来ないで、キャラバンの内部の人と親しくなったりもした。
道中、相変わらずハルカに近寄られることを嫌がり、アモットに接触をとることをクラフトは好んでいた。
やはり、ドワーフの血がテック製品に対して興味を滾らせるのだろうか?
クラフトは2層について落ち着いたら、俺のところに遊びに来い。損はさせんと言い切っていた一場面もあった。
クラフト同行の旅は何事もなく進んだ。定期的に襲われるが、キャラバン事態に問題が起こるほどでは無く鉄の床を疾走するバイクと装甲車は無事にマシンヘブンへと到着した。
最後に入る前に現れたエリアボス的なタイタンアームズの合体版、タイタンアームズ・センチピードに対して、ライダーズが全員集合して、変身後のパンチやキックであっという間にバラバラにしていく様を見てこんな強さが無いと2層は無理かと勘違いする面々のなか、絶対にベルトを手に入れてやろうとするユラがいた。
「嘘でしょ…!アレを11人だけで倒してしまうので御座るか…。」
「カッケーな!!絶対にアタシ、あれ2層で買うぜ!あそこまでじゃなくとも、近づいて見せる!!」
クラフトの指定する場所はロル&ラウルという店だった。
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