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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
ハルカたち
42/97

第42話 強制サルベージャー 懲役500年。(6000CP相当)

近いうちに、TRGPデータ化したエルやニコやハルカをお披露目しようかと思います。

 薄暗い倉庫の様な場所に男は居た。男と言うには、あまりにも身長が短すぎ、子供にしては横幅がデカイ。

 男はドワーフだった。太古の昔に人間、エルフ、ドワーフはこの世界がマザーAIに造られる前から存在していた種族だ。

 手先が器用で、テック技術に造詣が深い。マザーAIのハードウェア部分を担当した種族としても知られている。


「ふう、ようやくここまで逃げることが出来たか。後は、俺の運がまだ残っていることを祈るだけだな。」


 ドワーフの男は、荒く息を吐いて安堵した。男は逃げてここまで来たのだ。古代技術庁の追手から逃げるために、隠し持っていたブレスオブファイアも使い切ってしまった。

 

「せめて、CPがいくらかありゃマシなもん作れるんだがなァ。」


 左腕のマニュピレータを動かしながら、男はボヤいた。よくよく見ると、男の体は皮の長袖を来ているがその下は包帯で巻かれている。かと言って、怪我をしているわけではなさそうだった。

 とりあえず、疲労が溜まっている。ここはもう少しで動き出すはずだが、敵に自分の場所は知られていないはず。ここはセキュリティも甘い所だがキャラバンの成功率自体は悪くない。

 運悪く、敵襲に遭わなければ無事にマシンヘブンへと逃げ込めるはずだ。

 早く自由ってやつにあり付きたい。そう思いながら、泥の様に眠気が襲ってきた。今だけは、この眠りに抗う事なくまぶたを閉じた。寝息を立てる頃には貨物室は音を立てて動き始めたのだった。



 表層都市の大通りをハルカ達は歩いていた。マフィアのナフサファミリーのボスだった3人を浮荷台に乗せて歩いていると言うのは非常に目立った。猿轡をはめているが、モゴモゴとうるさい事この上ない。こう言う時には車両があればなぁ、とハルカは思ったが無いものは無いので諦めるしか無かった。

 

「ハルカー。このオジサン達ってどうなるの?」

「私もよくわからない。生死問わずって書いてあって、生きてる時はボーナスアリって事しか知らないよ。」 


 アモットがその体でナフサの3人を隠そうとしていたが、焼け石に水だった。

 ハルカはアモットの疑問に答えられなかったが、代わりにメルが答える。


「ハルカ殿、こう言う奴らは大抵が強制サルベージャーの刑につくで御座る。罪状次第で御座るが、こいつらの場合は500年の懲役で、6000CP稼げば解放といったところで御座ろうか。まぁ、死ぬまで出てこられんで御座るよ。」 

 

 表層都市の場合、大した罪でなければCPを払う事で解決する。しかし、大きな罪を背負ったり、支払うCPがない場合はダンジョンでの強制労働という形で執行される。

 監視人が常に居場所を確認していて逃げることも難しく、スタンガンを仕込まれた首輪で何かあった場合は動きを制される。ウェポンには特殊処理が加えられて、監視人の一存でウェポンコネクトが停止されることもある。

 そんな状態で、ダンジョンで働いて自分の罪に応じた負債を返していくのだ。一般人はジョブなんて持っておらず、1層のエネミーでも手間取ることも少なくない。もちろん、命の保証はされていないので、死んでデッドギフトを手に入れて強くはなるが、ウェポンの更新も自腹とあっては早々に死に続けて終わることが多い。

 その代わり、この世界に死刑という制度はない。合理的に都市に益を持たらす様になっている。

 余談だが、ダイバーが犯罪者となってサルベージャーになった場合は装備もジョブも特殊調整されるが基本はそのままで、深い階層に送り込まれる。稼ぎは吸い上げられるので都市にとっては場合によっては莫大な利益を生むことがあった。

 

 ハルカは元々は企業の関連企業に就職する様な位置にいたので、そんなことは知ろうとも思っていなかったため初めて知ったことであった。企業人は、大抵のことはカネで解決することが普通であり、一文無しになるなんてことは基本的に無い。企業法に触れて、ポジションが下がることの方が恐ろしいことであった。



 メルから犯罪について教わっている間に、ダイバーズオフィスまでたどり着いていた。ユラが浮荷台の上からナフサの3人を引き摺り下ろし、オフィス受付のカウンターに投げ入れた。 


「あら、二人も生きてる状態で連れてこれたの?やるわね、あなた達。」


 ダイバーズオフィスのリカが、感心した様にハルカ達に言った。ナフサファミリーは最近、縄張りを広げながら構成員を大量に増やしたということで賞金首に指定されていた。本人達は所詮マフィアの枠を超えないことから、賞金額自体は小さめだったはずだが。それでも、2人生捕りは中々の戦果だった。

 

「こいつら、ジョブ持ちと同じ効果のドラッグチップも使ってたから、結構倒すのに骨が折れたぞ。」

「何それ!?ちょっと、詳しいことを聞かせて頂戴!!」


 ユラの言葉に慌てるリカ。周りも新種のドラッグチップと聞いて、聞き耳を立てている。

 ハルカはこれまであった経緯を説明し、2種類のドラッグチップが流れていたが、マフィアを壊滅させたことで出回らないだろうと説明する。ヴァイスが作り方を握ったまま何処かへ行方をくらましているので、間違いではないだろう。


「うーん、思ってたよりも大きいことになったわね。洗脳チップも頂けないけれど、ジョブチップはもっと頂けないわ。コイツら、小物だと思ってたけれど、ダイバーズオフィスを揺るがしかねないことしてたのね。ちょっと、オキロ所長に報告するわ。少し待ってて。」


 そういって、リカは端末を操作して何やら報告をしている様だった。報告が終わると、ハルカ達にリカが今回の処置を伝えてきた。


「コイツらの元々の罪はマフィアのよくある罪状しか無かったけれども、違法ドラッグの程度がとんでもなかったことから報酬を上乗せしたわ。合計で60CPよ。はい、受け取ってね。」

「うわ、結構な額になったんですね。そんなにあのドラッグチップってよく無かったんですね。」 

「最悪よ、一例を挙げればマフィア達に出回ったら、ジョブの優位で勝てただろう相手にダイバー達が勝てなくなる可能性が出てくるわ。マフィア相手のイザコザなんてルーキーのお仕事のことが多いのに、ベテランを当てなきゃ行けないなんて、とんだ損失よ。」 

「あ、そういう問題なんですね。なるほど…。」


 オフィスから出ると、皆が開放感に溢れた様子だった。女子高生におっさんを引きずる様な絵面は気分的に良くない。

 今回の報酬は皆、ため込む方向で落ち着いた。表層都市では買えない2層の装備を買うためである。


「それじゃ、2層行きのキャラバンが出発するまではお休みです。みんな、ゆっくりと休んでくださいねー。」

「アタシは適当に強そうなヤツ相手に勝負してこよっかな。」

「適度ニネ?ワタシは特に何もないから、パンツァーファックシェフトにデモいってコヨウカナ。」

「某は自宅にいるで御座る。何かあれば連絡してもらえれば。では、御免。」


 そういって、各々が散っていった。


 2日後、キャラバンが出発する日になって、キャラバン専任の護衛チームと顔を合わせた。


「我々ライダーズは、対個体には強いが数が出ると孔がどうしても生まれてしまう。そのために、君たちを雇わせてもらった。随時、急行してほしいポイントは連絡する。君たちの構成の場合、迎撃が主な担当になりそうだな。特定のポイントを優先的に守ってくれ。12号装甲車をとりあえず頼もう。後は、状況次第だ。」


 ベルトを巻いた男がハルカ達に今回の仕事を伝えていく。「ライダーズ」というチーム名らしい。そういえば、チーム名をつけてなかったなとハルカは思い出す。

 まぁ、チーム名なんて箔付けだから、思いついたらでいいと思った。ハルカ自身まだまだ、ルーキーに毛が生えた様なものだと思っていることもあった。


 ハルカ達は迎撃チームとして12号装甲車へと割り当てられた。12号装甲車は雑多な荷物を積んでいるという情報が端末に送られてきた。護衛としてはランクは低いが、仕事は仕事とハルカ達は割り切った。

 

「どうせ、重要なところはライダーズが守っているのでしょうからね。」

「ハルカ、アタシ達もそういうところ行こうぜー?」

「だーめ、ここを守ることを依頼されたのだから、守りきらなきゃ。でしょ?」


 駄々をこねるユラを正論で丸め込むハルカ。ちなみに、ユラはライダーズのベルトに興味津々だ。自分も2層へ行ったら絶対に買うと決意をしている。

 

「うーん、ここら辺ですね。12号装甲車。あ、よろしくお願いしまーす。」

「おう!お嬢さん達が守ってくれるダイバーさんかぁ。…まぁよろしく頼む。」


 おそらく、まともな女子がいないことに気がついてしまったのだろう乗組員が後半は投げやりになって返事をした。

 半分ゾンビ女子、ロボット女子、ちっちゃい人形ニンジャ女子、ロリ体型の女子。特殊な性癖でもないと、流石にこれらを相手には出来まい。

 

「熱い目線を送られても、それはそれで困るんですけれどね。」


 独言をハルカがいった。聞いていた周りのチームメイトも皆うなづいている。


「この車両は何を運んでいるんですかー?」

「大したものは入ってないよ。このキャラバンの補給車両みたいなもので、キャラバンを食わせるための食材や燃料とかが入ってる。直接商売には関係しないところだね。」

「まぁ、それじゃここがやられたらキャラバンとしては運行が困難になるのですか?」

「そうだなぁ、多少問題を抱える程度だよ。何せ、各自にそれなりに物資と燃料は投資しているからね。」


 ハルカが、乗組員に質問する。それに気さくな乗組員は答えてくれた。

 なら、すごく重要なところってわけでもなく、無視してもいいってわけでもない車両ってことかぁ。とハルカは考えていた。

 少し時間が経ち、キャラバンの発車となった。キャラバン全体がゆっくりと動き始める。

 轟音を立てて走り出すキャラバンを猛音で追っていくライダーズのバイクの数々。

 時間が経つに連れ、キャラバンは巡航速度をとった。ちなみに、ハルカ達はヴィークルを持っているわけではないので、護衛車両に乗り込み、周囲を見張っている。

 

 しばらくは暇だー、何か起こらないかーと駄々こねていたユラ とアモットだが、今は真面目な顔をして防衛に当たっていた。

 突如、ドローンによる空爆とタイタンアームズ(巨大な腕を持った二足歩行のロボット)が襲いかかってきたからだ。

 ドローンによる空爆は3回きりだったが、空中へと攻撃を行えるダイバーが少なかったため、撃墜が困難であり非常に広い範囲でキャラバン全体が損害を被っていた。

 そこに、前中後とそれぞれにエネミーが襲いかかってきたのだった。

 

「鬱陶しいドローンがいなくなっただけでも随分マシだな!」

「ええ!そうですねー!!」


 巡航速度60km/hで走るキャラバンの屋外通路や天井で各々がウェポンを持って待機していた。これ以上の速度はダンジョン内の凹凸やトラップに引っかかることが無視できない確率で発生するのであげる事はできなかった。それに引き換え、相手の構成はこの速度でも確実に追いつけるロボット達で構成されていた。

 

「追いかけてくる奴を撃ち落としてください!ユラさんは前線で待機!車両が止まる様なことがあれば、率先して前線構築して車両に敵が近寄らない様にしてください!!」


 ハルカがユラへと指示を出す。他の面々はすでに迎撃するためのポジションに移動していた。


「この程度の雑魚相手ニ、アタシの戦車砲使うのは使うのはモッタイナイヨネェ?」

「今のところ、正真正銘の雑魚ばかりで御座るからな!もう少し、本命が来た時まで待っていても良かろう!」

「アタシはしばらく待機かぁ。【パワーウェーブ】のワザでも教えて貰えばよかったな。」


 ユラがボヤクが、アモットとメルはへばりついて来る雑魚ロボット相手に迎撃をしていた。

 車両にへばりつく様に登りつつあるロボットどもを射撃ウェポンで落としていく。それでも間に合わない時は、ユラが殴り落とすという流れだ。

 大体を撃ち落としたと思った頃に、ギガタイタンアームズというべき、巨大な腕を持つロボットが乗り上げてきた。12号車に攻撃を行い、12号車の動きを止めた。


「皆、降りて撃退しましょう!」


 ハルカが叫びながら降りていく。ユラ とアモットが前線を構築するために前に降りて後方の安全を確保する。メルはハルカと同じ後方に位置した。

 敵の巨大な手の指一本一本からガトリングガンが射出される。ユラ とアモットが食い止める。すぐ後ろは12号車両だ。

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