第34話 装備更新
ハルカのイメージ画像を載せました(画像生成AI)
もっと良いイメージが出来たので、違うイラストへと差し替えました。
ヴァイスが消えたあと、その場には大量に出てきたマンイーターの屍と改造されたネクロマンサーの残骸、壊れた量産型義体が残った。
「コレ、ちゃんと解体できれば結構なCPになるんじゃナイノ?」
アモットが一面を指示して、そういった。
血まみれになりながら、ハルカたちは解体をし始めた。ユラやメルも嫌がりながらも手抜きせずに作業に当たった。
あたり一帯にキツイ血臭と腐臭がする。ゾンビになったハルカはそこらへんが鈍くなったのか、それとも感覚が変わったのか。あまり気にならなくなっていた。
これらを解体して(マンイーターはドッグタグを探した)、稼いだ額はかなりのものとなった(一人当たり30CPで、初心者向けのウェポンは一つ10CPで売買される)
「マンイーターのドッグタグ、チリツモで、結構な量になったね。」
「我々だって、もしかするとこうなっていたかもしれん。遺体は丁重に葬っておこう。」
「埋葬ってどうするの?土に埋める?」
「数が多いからな、申し訳ないが火葬にさせてもらおう。隣のエリアに燃料になるものがあったはずだ。探してこよう。」
「アタシは、深めの穴を掘っておくよ。さすがに燃やしてそのままってわけにもいかないだろ?」
各々で、火葬の準備を行う。火付けはハルカが行った。
実際の所、一番にこの光景をリアルに感じているのはハルカだった。ちょっとでも何かが違えば、こうなっていておかしくなかった。
ただ、単純に運が良かっただけ。それでも、ゾンビになってしまったけれども、自分は【生きている】と思っている。
大量の遺体を一気に燃やし、ユラがその悪臭に顔をそむける。メルやアモットは臭覚そのものはあるが、機能としてオフにしてしまえば我慢が出来た
ハルカは、何かを感じることが無かった。臭いそのものはしたが、それに対して何かを思うことがなかったのだ。
確実に、体は人間じゃなくなっている。そう感じざるを得なかった。
大量の遺骨をユラが堀った穴に埋め、簡単に弔った。今の時代、死んだ人間を弔うやり方を正確に把握してるのは【教会】の人間くらいなので
あくまで、それっぽいことをしたにすぎない。それでも、野ざらしにするよりは良いと思えた。
帰り道、ユラがわざと声を大きくして今後のCPの使い方を喋っていた。
「アタシは、今回多数の相手をする必要性を感じた!なので、多数に攻撃できるようにワザを覚える!」
「某が思うに、そなたは何かウェポンを装備した方が良いのではないか?素手での攻撃力には限りがあるだろうに。」
ユラは今回、範囲攻撃が無かったのを悔やみ、範囲攻撃のワザを習得することを宣言していた。ウェポンを新調した方が効率的だとメルが主張するが、己の拳に拘っている様子だ。
「ワタシは悩むなぁ。攻撃力も上げたいけれど、やっぱり防御力とかカナ!戦車用の装甲を増設しようカナー。」
「アモットちゃん、良いんじゃない?ますます戦車そのものっぽくなるけど…。」
アモットは装甲を増やす方向へ。雑魚の攻撃を弾ければ、もっと楽に戦えるし回復も温存できると判断した。ハルカの言うとおりに、戦車にどんどんと近づいている。
「某はやはり、ダンジョン内での行動を優先するとしよう。トラップにかかって窮地に陥るようでは1層以降じゃ務まらんで御座る。あとは、手裏剣を改造するか。」
「どういうことだよ、メル。アタシには散々いってた割には、自分も似たようなこと言ってるじゃないか。」
メルはダンジョン内の活躍をするため、ダンジョンの知識を上げた。ダンジョン内の隠し扉の位置や、トラップの有無を見分ける力、解除能力などを上げるつもりだ。
次に攻撃力を上げるために手裏剣のカスタマイズに手を出す。ユラから文句を言われるが、やはりメルにもこだわりがある。
「私はどうしようかなぁ。このままでも良い気はするんだけれど、もうちょっと搦め手があると良いかな。」
「なら、ワタシと同じ魔術にシヨーヨ。オソロだよ?」
ハルカはサイコガン以外にも相手の弱体化を狙った阻害系能力を持った方が良い気がして、新たなウェポンを探す。アモットにもお勧めされた魔術に手を出して、みようか悩む。
ちょっと前まで、普通の学生だったハルカだ。ウェポンスロットが使い方を理解させるとはいえ、よくわからない魔術というものに手を出すべきか悩んでしまう。
もっとも、異能を扱うジョブのエスパーだったり、異能の力を弾丸にして撃ち出すサイコガンを使ってる当たり、もう今更という話でもあるが。
表層都市に戻ってきて、一番最初に全員が血まみれの自分たちを洗う事だった。洗浄タオルで拭く程度では気分がすっきりしない。
ちょっと高くても、個室の風呂がある所でアモット以外が順番に洗っていく。もちろん、お湯は都度入れ替えをする。
アモットは慣れたもので、既に洗車屋を利用している。豪快に左右から水流が浴びせられ、回転ブラシとウォッシャー液で泡だらけになりながらも綺麗にされるのをみて、他の面々もまずはそれだ!と思ったとか。
ハルカは風呂場で血糊を落としながら、温かいお湯で少しのんびりする。あとがつっかえているのはわかってはいるが、ここまでの出来事が目まぐるしくて頭の整理をしたかった。
(ヴァイスって、ミストマン。もしかしたら、また会うのかな。あった時に、私は何を考えるんだろう。)
ゾンビの方も、今のところは安定してると思ってるけれど、改めて失ったものも多いのに気づかされた。もう、家族ともあってないし、五感は鈍ってるみたいだし。
それでも、このお湯が温かいってことがわかるのが、何よりも貴重な事だと思えた。
ハルカたちはさっぱりとしたところで、依頼の完了を告げるためにウェポンショップ【BSS】へ向かった。
集めてきた資源のCPへの還元と、帰り道に言ったウェポンの新調や改造を行うためである。
「えらいことに巻き込まれてるな、ハルカちゃん。ダンジョン管理人なんて、話す事も珍しいっていうか、ここ最近で聞いたことないぜ?」
「あはは…。それよりも、何か良いウェポンありますか?サイコガンは使い慣れてきたんですけれど、もうちょっと搦め手系と言いますか。」
「うーん、無くもないけれどやっぱりブレスオブファイアじゃないかな?こいつなら、搦め手もバッチリ。」
「あ、それはスルーで」
ハルカもケイスケのあしらい方に慣れてきたようで、雑談をしつつもケイスケからウェポンのスペックなどを教えてもらう。
その中でも、しっくりきたのがマインドコネクト。エスパー専用のウェポンで、装備するとウェポンスロットを通じて起動する。
効果は攻撃対象の回避力を下げつつ、一緒に攻撃した仲間と一時的だが精神的に繋がることで神がかり的な連携を行えるようにする。
魔術を使えるウェポンにも興味はあったけれども、自分の現在のスロットは2つ。とりあえず、マインドコネクトを試してみて、それから考えることにした。
「アモットちゃんのご希望の装備はここじゃ無理だ。ギザ3世の方へ行ってくれ。こっちからも連絡はしておくから居留守はしないだろう。」
そう言われて、行った先はパンツァーファックシェフト。普段はシャッターが閉まっていて、何が何だかわからない店だ。
今日もシャッターは閉まっているが、小さなドアの鍵は開いていて入ることができた。もっとも、アモットはそのあとシャッターを開けてもらえるまで入れなかったが。
ドアを開いて入ると、そこには数台の戦車と様々な戦車用ウェポンがディスプレイされていた。
「ようこそようこそ、いらっしゃいませ!お嬢さんの誰が戦車乗りなのかな?あ、待って待って。ワガハイが当ててみる!うーん、そこの顔色の悪い子!君でしょ!!」
「あ、ちg」
「あ、違ったかー。残念、無念。そういうことなら、次の子かな?え、違う?そもそも戦車じゃない??え、どゆこと?ちょっとワガハイ、ケイスケに聞くことがあるからちょっと待っててね。」
ギザ3世と思わしき人物は、ハルカたちに名乗る事すらせずに端末を使ってケイスケに連絡をし始めた。
「ごめんごめん、どうやらワガハイの勘違いだったご様子。今からシャッター開けるから、安心して。んでもって、シャッター閉めまーす。」
シャッターを開けてもらい、少し窮屈そうに入ってくるアモット。すぐに店主はシャッターを閉めてしまった。
「ごめんなさいねー。ワガハイ、ちょっと近年太陽光が苦手でね。すぐに劣化しちゃうのよ、こう見えても777年生きてるから。うん、だいたいそのくらい生きてるから。」
まくしたてる店主にハルカが口をはさむ。
「あの、こちらのアモットちゃんが欲しい装備があると聞いてやってきました。装甲とか防御力を上げたいんですけれど。」
「あー、了解了解。こう見えて、もワガハイもゴーレムだから。ゴーレムでダイバーしてたときありますから。ワガハイ、ギザ3世。一端のダイバーやってたこともありますから。どんなの?あ、そう。防御力ね。攻撃力は足りてる?んじゃ、次は大砲買おうね。いーって、いーって。同族のよしみで何事もノンプロブレム。ちょっとそこに待っててね。今もってきますからね、あ、どこだっけ。そっちか、こっちか!これだ!はい、どーぞ」
そういって、店主が持ってきたのが可動式の装甲とバリアシステムだった。
ひたすら高いテンションで話し続ける店主の言うことを要約すると、盾のように使える装甲と、瞬間的に衝撃の直撃を半減させるシステムとのこと。
幸い、額自体は足りていたので両方買うことにする。
「おじさん、楽しい人ダネー?ワタシ、常連にナロウカナー。」
「んー。いいよー。次来るときは、連絡くれればシャッター開けといてあげるよ。お嬢さん。」
何か、通じあうことがあるのか、仲良くなるアモットと店主。
置いてけぼりのハルカたち。
種族が同じだと、テンションも似るのか。たまたまだと思いたいハルカだった。
パンツァーファックシェフトから出たハルカたちの端末に呼び出しが入った、ハンターズオフィスから名指しで指名を受けていた。
どうやら、大量のドッグタグがケイスケからオフィスへと渡ったようで、そのお礼を兼ねたオーダーがあるらしい。
ダイバーズオフィスに着くと、受付のリカから話しかけられた。
「あなたたちのおかげで、ここ数年の行方不明だったルーキーダイバーが判別できたわ。ありがとうね。」
「いえ、私たちも必要に応じてやったことですので。」
「あと、報告にも上がっていたけれど、ヴァイスってミストマンが居たのね?要注意人物としてオフィスから警告を出すわ。」
あのルーキー達はおそらく、ヴァイスの犠牲者なのだろう。ハルカ以外にも犠牲者が居たことに動揺する。
「あ、それでね。オーダーの話なんだけれど。あなた達、赤竜に挑戦してみない?」
ハルカとしては、思ってもみない話だったが、メルが目の色を変えて話に加わってきた。
「それはどういうことで御座るか?赤竜が見つかったとかで御座ろうか?」
「ごめんごめん、そういうわけではないのよ。あなた達の戦績を鑑みると、そろそろ赤竜を討伐して2層へ行ってもらっても良いかなって」
リカ曰く、ヴァイスの改造ネクロマンサー討伐での稼いだCPから、そろそろ挑んでみても良いと判断されたらしい。
4人チームで、変な構成だけれど実力はある。と判断し、赤竜討伐のオーダーを出された。
「まぁ、期日なしのオーダーだから倒せたらボーナスが入る仕事だと思って。それ以外も重複して受けてもらってOKだから!」
「うーん、善処します。」
メルが若干、気にしていたようだ。ハルカが何かあるのかと聞いたら、後ほど話すと言われてしまった。
いろいろと装備変更もあって、腕試しとしてダンジョンに入ろうという流れになった。
「ところで、メルさんが言いかけてたことって、何?」
ダンジョンに入る前に、ハルカがメルへ問いかけた。
「それは、某自身の話で申し訳ないが。一身上の都合で、5年内に5層へと到達する必要があるのでござる。なので、もし皆に許してもらえれば討伐を積極的に行いたいのでござる。」
「ソレって、その首輪に関係することカナ?なら、皆までイウナ―だヨ。ワタシたちだって、はやく次の階層へ降りたいモンネ?」
アモットがメルにOKを出した。ハルカも答えは変わらない。
メルが過去に行った事を聞いている。全てが悪いとも言えないと思った。
ダンジョンの中にいると、弱肉強食という言葉を感じる。強いヤツは何をしても良いという空気。メルはそれが怖くて、犯罪者殺しをしてたんじゃないかと思った。
ダンジョンの中では、法律は死んでいる。都市の中でも、死んでいる所は死んでいるのかもしれない。
ハルカは、メルの全てを許すことはできないと思ったが、全てを罪だとも思えなかった。
これは、ハルカがダンジョンに潜ってからの感覚だった。それまでは、どちらかといえば法に守られて生きていた側だった。
犯罪者だからといって、殺して言い訳ではなく。法に則って裁かれるべきだという方だった。
ダンジョンを歩いてから、何もかもが変わってく。自分の体も、心も。
ダンジョン入口にたどり着く。ダンジョンの入り口は1個だが、中に入ると全然別のダンジョンに送られる。
チーム登録は、そのばらけり方を一つにまとめてくれる。各人が持っている端末に一つの信号を発信するようにさせて、集団で送られるようにしている。
また、ダンジョン内で遭難にあった場合、ダイバーが遭難した場合なども端末からの発信でどのダンジョンにいるかを特定できるらしい。
一般人でも、正式にダンジョンに入る場合は端末を貸与される。これをしないのが潜りのダイバーで、サルべージャーと呼ばれる違法者たちだ。
まあ、そんな話もダイバーになるまでは知らなかった。ハルカは元々、都市で生まれて都市で死んでいくと思っていたからだ。
まさか、違法チップでダンジョンに洗脳されて入って、そのはずみで死んで変な蘇生されてゾンビになるなんて、思いもしなかったわけなので。
ぼんやりと、自分の最近の事を顧みて特殊な道に突っ込んでしまったなと考える。
「ハルカちゃん、いっちゃうヨー。」
アモットが先の方から声をかけてくる。頭をブンブン振って気を入れ直してハルカもかけていった。
今回は特にオーダーらしいオーダーは受けてない。なぜなら、新しいウェポンやチームの連携を試すために入ったからだ。
赤竜退治はまたの機会に、ということでメルには我慢してもらってる。
死んでも生き返るとはいえ、ダンジョンで死ぬと大事なことを無くすらしい。だから、ポンポン死んで良いわけではないと聞いた。
そういえば、私は間違いなく死んだのだけれど、蘇生で何かを失ったのだろうか?両親の名前も、妹のことも覚えている。
デッドギフトとやらももらった記憶が無い。そもそも、ブギーマンにあったという記憶自体がなかったのだった。




