第25話 ヴィークル乗りと猫耳アザラシ娘
前半と後半でどこかで分けようと思ってたのに、分けられなかったのでこのままで。ちょっと文章量が多めです。
バレリアの言葉がベニエみたいになっていたので、修正しました。
セイジンの言っていたキャラバンプロジェクトは早速暗礁に乗り上げていた。
なぜなら、ヴィークル乗りは大抵すでにチームに加入していることが多く、意外にも売り手市場だった。
「そうか、ヴィークル乗りなんてそもそもそんなに出会わないもんだものな。」
セイジンがぼやく。ヴィークルは低性能でも人間とは比べ物にならないほどの耐久力と火力を兼ね備える。弱点と言えば、ダンジョンの発信している電波で定期的に不調を起こしてしまうことや、ダンジョンの構造的に狭すぎて入れないなどが挙げられるが、いざと言うときの遮蔽物、長距離の移動の負担軽減、いざと言うときの休憩&睡眠スペースの確保とあるだけでも助かるものなのである。
単機でも優秀だが、それがチーム全員に行き届いている場合などはキャラバンの専属護衛になったりもする。
そんな中で、唯一チーム加入の希望があったのがバレリア&スカイのチームだった。
彼らはまだルーキーの域を出ただけに過ぎず、ようやく赤龍を倒したところだと言う。
なぜ、彼らがセイジンたちのチーム加入を希望しているかと言うと、セイジンがヴィークルの乗り換えを検討しているなら資金支援を行うと宣言していたからだった。
物静かな青年、スカイがセイジンに問いかけた。
「あの、本当にヴィークル乗りかえの費用を援助してもらえるんですか?」
「ああ、どんなものに乗り換えるつもりか次第だが、バックアップするよ。その代わりに、ウチのキャラバンになって欲しい。」
「キャラバン?」
「ああ、簡単に言えば、このダンジョンを回る行商人だ。商品を買ってくれそうな人を探して売って、それで得たCPを使って次の街を目指すんだ。もちろん、道中で襲ってくるエネミーを倒しても構わないけどな。もちろん、商売の部分はこちらが行う。あくまで、運搬をお願いしたいってことだ。」
「なるほどねぇ…。」
「でも大丈夫かな? 戦闘とか大丈夫ですか?」
バレリアは納得したが、スカイは心配そうである。
そこにニコが割って入る。アランも説得に一役買うつもりだ。
「なーに言ってんすか! ワラヒたちだって同行するッスよ!」
「そうだぜ、スカイ。俺たちも一緒に行くんだ、3層到達者が3人も同行するんだ。万が一なんてことはねえさ。」
その答えを聞いて、バレリア・スカイの2人はキャラバンになることを決めた。
自分たちは所詮、2層到達者ではあるものの戦闘が得意と胸を張っては言えないスカイとオールラウンダーと言えば聞こえはいいが、どうしても器用貧乏なところが出てしまうバレリアなので、3層到達者の戦闘力支援は非常にありがたかった。
そして早速出発となるのだが……
「ところで、どうやって移動するんですかね? 装甲車はそんなに乗れませんよ?」
セイジンはニヤリとした笑みを浮かべる
「ああ、それなら大丈夫だ。オレはこっちに乗るから」
と言って、セイジンは意識を集中させるセイジンの影から出てきたそれは……
「えっ!? コレに乗っていくのですか!?」
それは、青い輝きを纏った、全長5m程度の竜だった。サイドラグーンのジョブ能力の一つ【竜騎】であった。
【竜騎】は静かにその身を沈ませて、セイジンを載せる用意をする。そこに颯爽とまたがるセイジン、そしてニコだった。
「コイツはオレの能力で生まれた乗機なんだ。これでオレとニコが乗るから、そっちはアランを頼む。」
「悪いな、水入らずのところに邪魔するようで。まぁ、甲板の上でタバコでもやってるから何かあったら下に入らせてもらうぜ。」
こうして、セイジンたちのキャラバンは出発した。
まず目指すは、2層にあるビーム商店。そこで、3層に売りに行く商品を買い付けるつもりだ。
「よし、ここら辺でいいだろう。」
2層の道半ばで、一行は一旦休憩をとることにした。さすがに装甲車に全員は眠れないし、全員が寝るわけにもいかないので順番に歩哨を立てる。
スカイだけは昼間の運転で疲れもあるだろうと、歩哨は免除されたので装甲車の中で寝ている。それ以外は、外でテントを張って寝袋に寝ることになった。
今の時間は、アランとバレリアが歩哨だった。この層では比較的良く取れる機械オイルを火種にしてランタンのようなものを即席で作ってキャンプファイアの代わりにしている。
火の明かりに照らし出されながら、猫耳を持ったアザラシと言う風体のバレリアが火を挟んで対面に座った巨漢のアランに疑問をぶつけた。
「なぁ、アラン。ここのリーダーは性格が変わっちまったのかい?もっとガツガツと5層到達に燃えた男だったと聞いてるんだが?」
「ああ、多分変わっちまったんだろうな。バレリア、そっちはまだダンジョンで死んだことは?」
「幸いにも、相棒含めて0だよ。危ない時は何回かあったけどねぇ。すると、やはりデッドギフトの後遺症ってことかい?」
「よりにもよって、自分のモチベーションを代償にしちまうとはな。まぁ、早死にするよりはマシだと俺は思ってるよ。」
そこまで喋って、アランは電子タバコを一息入れた。胸の中にミストが循環するような気がした。本物のタバコも吸ったが、ランニングコストが割に合わないので
アランは電子タバコ派だ。こちらでもニコチンはしっかりと取れる。紫煙がわざと出るタイプを吸っているので、本物と同じような感覚が楽しめる。
「電子タバコね、アタシは悪くないと思うけれど、煙がこっちに流れるのはいただけないね。」
「おっと、悪かったな。悪気はないんだ、許してくれ。」
「別にそこまでのつもりはないよ。それより、アタシらは3層までは行けないよ?そこんところはどうするんだい?」
「セイジンがな、ギガントタンクを探し出してヤルつもりだ。促成培養みたいになるので悪いが、ここは我慢してもらおう。」
タバコをもう一息分吸い、虚空へと吐き出す。アランはバレリアの出方を待った。
「そう言うことなら、こちらからお願いするところだったね。アタシらは特別強かったりするわけじゃないからね。早く強くなれるってんなら、大歓迎さ。」
「早死にするような真似はするなよ?俺の目の前で死ぬやつは見ないって心に決めてるんだ。もう2度とヘマもしたくない。」
「気になる言葉だ。気になるが、そろそろ交代時間だ。ニコとセイジンを起こしてくるよ。続きはまた今度聞かせてくんな。」
そう言って、バレリアはすぐそこに立っているテントの中に入り、ニコとセイジンを起こしてくるのであった。
「今回、正規のキャラバンについて行ってないのは、2つ理由がある。1つは、もちろんオレたちが単独でキャラバンの仕事をするからだ。もう一つは、2層で出る彷徨える戦車とギガントタンクの討伐を狙っている。そのためには、短期間に目的地についてしまう正規のキャラバンじゃなくてある程度寄り道ができるようにしたわけだ。」
「至れり尽くせりだね。裏がないか勘ぐっちまいそうだ。」
セイジンの説明にバレリアが返す。もっとも、バレリアもそこまで疑ってはいない。どちらかと言うと、感謝の気持ちを皮肉で返してしまったようなところだ。
スカイがバレリアを宥めながら、思ったことを話す。
「セイジンさん。彷徨える戦車ってことは、解体でフレームが出ることを狙って?ギガントタンクは3層に行くために必須だとわかるんですけれど。」
「そう言うことだ、スカイ。もちろん、出なかったら支援金出してマシンヘブンで探すつもりだけれど、当たればデカイだろ?」
なるほど、とスカイは納得した。セイジン達はすでに彷徨える戦車もギガントタンクも戦っている。後は、スカイとバレリアが安全に戦えるなら、問題らしい問題はなかった。強いて言うならば、ワンダリングエネミーはダンジョンに再度出現するまでは間が必要なこと。おそらく、同じスペックのエネミーをどこかで作り直しているのだろうが、出現タイミングに合わなければ、無駄骨になってしまうところがネックだった。
「ワラヒたち、解体は本当に下手なんスよね。スカイ君もバレリア姉さんも解体上手って聞いて、それだけでも戦力っすよ!」
これは事実だった。セイジン、ニコ、アラン、全員が解体に必要なスキルやノウハウが今ひとつだったので、これまでも大きな獲物を無駄にしてしまっていた。例えば、彷徨う戦車なら、それこそ戦車が獲得できていた可能性もある。セイジン達は揃って脳筋なのであった。
あれから4日経ち、雑魚エネミーは何度も倒したが、目的の2大エネミーにはお目にかかれていなかった。相変わらず、工場地帯は何かしらの金属音が鳴り響いている。
そろそろ2層も衛星都市マシンヘブンまでの道程を中盤を超えて終盤のところに差し掛かっていた。このままでは徒労に終わる可能性が出てくるため、セイジンは焦り始めていた。
そのため今日は朝から、彷徨える戦車とギガントタンクを探すことに全力を注いでいた。
「お兄さん!彷徨える戦車の気配がするッス!!」
「よし、ニコはそのまま追跡してくれ。バレリア、行くぞ。」
「おうさ。」
バレリアをのせたヴィークルをスカイは走らせる。
スカイの運転技術はかなり高い。ヴィークルが高速で走る中、スカイはハンドルを握りながらも周囲を警戒していた。その前方には【竜騎】に乗ったセイジンとニコがいる。
すると、前方に巨大な影が見える。
そのシルエットはまさに、彷徨える戦車そのもの。
スカイはヴィークルを止める。セイジンも【竜騎】を止め、ニコを下ろす。
すぐに、バレリアとアランもヴィークルから降り、戦闘準備を始める。
彷徨える戦車が、こちらに気付き向かってくる。今回は別エネミーを数体連れている。
彷徨える戦車の砲塔が、セイジンとバレリアを捉える。
「散開しろ!!オレとニコ、バレリアで彷徨える戦車を引き受ける。スカイはF・H・S《フライングハードソーサー》の群れを頼む。」
「了解です!」
セイジンの指示に各人は従う。
彷徨える戦車が、セイジンとバレリアに砲撃を行う。
セイジンとバレリアはその攻撃を左右に避ける。
そして、彷徨える戦車へと接近した。すでに倒したことがあるとは言え、巨大な戦車相手に気圧されそうになる。
そこにバレリアがマルチガンで牽制をしながら、フォースカタナで切り込んでいく。
「2層の初陣はやらせてもらうっ!くらいな、ガラクタッ!!」
バレリアは装甲の厚い彷徨う戦車相手に、多少なりのダメージを与えている。思ったよりも、戦力になるとセイジンは計算をし直す。
向こうを見ると、スカイの操作する装甲車が着実にF・H・Sの群れを撃退していく。こちらも、思ったよりも頼りになる。F・H・Sは空とぶ皿そのものだが、その実とんでもなく硬く、耐久力がある飛行物体で、一緒に現れたエネミーの盾となる習性を持っている。
そのため、彷徨う戦車の壁になられると厄介だと思っていたが、この分なら安心して任せていられるようだ。
先手をとったセイジン達はその勢いで、怒涛の攻撃を仕掛けていく。セイジンの支援魔術が飛んだ後、ニコがバレリアに負けじとタイタンハンマーを大きく振るい彷徨う戦車の装甲に大きな窪みを作り上げていく。
エネミー側の反撃には、ジョブチェンジの弊害でセイジンが個別にシールドを展開できなくなったが、代わりに【ドラゴンクライ】による敵への強烈なデバフ効果が発揮されていた。
「グゥオオォォォゥ!」
【竜騎】の叫び声とともに、青い光の筋が敵に絡みつく。彷徨う戦車の砲塔の回転や、キャタピラの回転が緩慢になる。そんな状態からニコへと彷徨う戦車からの砲撃が飛んだ。
「フンッ、大したタマじゃないな。」
バレリアがニコの前にさっと飛び出し、砲弾をフォースカタナで方向を逸らして防御をする。セイジンが庇おうとしていたが、間に合わなかったようだ。
F・H・Sはフチを使った切り裂き攻撃しかないので、装甲車には対したダメージは無かった。
バレリアの戦いっぷりを見て、セイジンは独り言を漏らした。
「なるほどな、得意は近接だがどんなポジションでも戦えるってのは嘘じゃ無いわけだ。スカイも言うほど悪く無い。装甲車でこれだけ戦えるなら、戦車に乗ればもっと活躍できそうだ。」
セイジンは新規参加の二人組を見て、そう評した。
後衛から、多少暇を持て余しているアランが通信に加わってきた。
「なかなか動けるじゃ無いか、あの二人。案外、ラッキーだったかもな。」
「ニコと模擬戦やった時は、どうだろうかな?と思ったけどな。」
セイジン達と合流したスカイとバレリアはいの一番にニコから腕試しを申し込まれた。
ハンデとして、バーサークはなし。炎の異能も使わない。その上でバレリアとスカイにはフルに実力を発揮してもらいたいと言う内容だった。
さすがに舐められたと思いバレリアが怒ったが、スカイが勝てばいいだけだよと諭して落ち着かせた場面もあった。
セイジンとアランはもしもの時のために待機していたが、心配はしていなかった。
腕試しが始まってみれば、ニコが圧倒する形で勝負が決まった。
バレリアの防御を上回る大打撃を与え、防戦一方に押し込んでいたのだった。
スカイも装甲車で応戦したが、生身の人間が戦車と渡り合う現実に混乱をしながらだった。
ニコに生半可なダメージを与えたことが敗因となり、バレリアは致命傷一歩手前、スカイは装甲車両から引き摺り出されると言う結末に
終わってしまったのだった。
ニコ曰く、「かなりいい線行ってたッス。地味に暴走を解禁して戦ってなきゃ負けてたかもしれないッスね。」
それは反則だろうとセイジンは思ったが、負けた二人はそこは気にしていなそうだったので放っておいた。
回想にふけってしまったが、彷徨う戦車戦は見事にスカイがF・H・Sを壊滅させ、ニコとバレリアが彷徨う戦車を叩きのめして勝利となった。
ニコがこの戦いの感想を口にした。
「やっぱり、思ったよりも楽に戦えたッス。人数も増えてたし、ベルセルクだし。ラクショーだったッス。」
「その通りだと思うよ。バレリアもスカイもよくやってくれたよ、ありがとう。」
武器をしまいながら、バレリアが応える。
「最も、ダメージの大半はそっちの嬢ちゃんが出してたようなもんだ。アタシらも精進してかないとな。」
「そうだね、バレリアさん。さて、戦車の方は念入りに解体していきましょうか。」
上手くいけば、自分のものになるためにスカイは気合が入っている。バレリアもそこそこ気を入れている。
セイジン達は邪魔にならないようにF・H・Sの残骸から何か無いかと解体していたが、大したものは見つからなかった。
思ったよりも早く終わってしまい、バレリア達の様子を見てみる。
「バレリアさん、そこの配線を変更したいんだちょっと持ち上げてもらっていい?」
「はいよ、重いな。早くしな。」
「了解、この線とこっちの線を入れ替えて、と。ありがとう。あとはシンクブロックさえ切り離せれば、大丈夫。問題なく…、行けたっ!」
「それじゃ、運転席を占拠してるガラクタを外に出しておく。CPになりそうなものがあったら浮荷台に詰め込んでおく。」
「ありがとう、バレリアさん。試運転が問題なければ、装甲車から武装を移してくから手伝って。」
戦車が手に入るかは半信半疑だったが、どうやら上手く行ったらしい。
自分たちの時は、使い道のない戦車砲だったのを考えると、やはり出来る。
スカイはサイバーデッキも使っていて、主に情報収集や事後処理に有利なアプリを使っているらしい。その点でも、斥候役がセイジンになっていたこのチームの足らないところを押し上げる人材と言えた。
工場地帯の遠くで金属が軋むような音が響いている。それに負けじと戦車がエンジン音を響かせている。バレリア、スカイの活躍のおかげでしっかりと戦車フレームが手に入った。装甲車は戦闘には使えないが、オート追尾で追いかけてくるように調整した。
セイジンが【竜騎】に乗りながら、チームメンバーと通信する。
「残るはギガントタンクのみだな。だいぶ遅くなったが、衛星都市に着く前に何とかなりそうだ。こればっかりは運だからな。」
前回に遭遇したところに行ってみたが、ギガントタンクはいなかった。どうやら、別の場所で活動しているか、まだ出来上がってないかだ。
とりあえず、ここら辺で粘っていると、以前も聞いた音が聞こえた。
「ゴオオオオッ!!」
セイジンは当たりを引いたと思った。が、音源まで近づいてみると、少々厄介なところにいた。
ギガントタンクの近くにプラントがあり、今は停止しているようだが臨戦状態の戦闘ドローンと武装したマネキンのようなアンドロイドが3体ずついた。どうも、ギガントタンクと連携をとっている動きをしているので、仲違いを狙うことも難しい。
「アラン、どうだろう。正面突破で行くか?」
「この距離から攻撃できるウェポンを持っていないな。悔しいが、正面突破だ。」
「わかった。」
雑魚がいると戦車で突っ込むのは難しい。
だが、今は対戦車用の重火器を積んでいるだけって、スカイの戦車は対ギガントタンクの要だ。
「バレリア、あの小さいの任せてもいいかな?キミとニコと俺で雑魚を殲滅しよう」
「ああ、アタシに任せときな。そっちこそヘマしないよう頼むよ。」
「うん、任されたッス!」
セイジンはニコとバレリアに指示を出す。二人とも、了承してくれる。
続いて、スカイにも指示を出した。
「スカイはギガントタンクにまっすぐ突っ込んで、組み伏せてくれ。」
「了解です。対戦車戦ができるなんて…。ここは任せてください!」
セイジンが【竜騎】に乗り直し、腰に納めていた魔導書を宙に浮かべた。
「ニコ、バレリア、オレと一緒に来い!雑魚の殲滅するぞ。」
「はいッス」
「おう!」
アランは戦車に乗り、バックアップをする。
「スカイ、俺らは雑魚を片付ける。ギガントタンクは頼んだ。」
「わかりました、セイジンさん。」
セイジン達は散開して、敵を迎え撃つ体制をとる。
バレリアとニコはそれぞれの得物を構えて、敵に向かっていく。敵もこちらに気づいていて、銃口を向けてきた。
「おらぁああっ!!ぶっ飛べぇえっ!!」
バレリアはマルチガンの弾丸をマイクロクラスターミサイルに変更し、群れ全体に攻撃を仕掛けた。
直後にニコがセイジンの支援魔術を受けて、タイタンハンマーのスイッチを押して猛烈な速度で敵集団にあたりに行った。
エネミーを叩きながら、ブースターの効果で次々に敵を巻き込むコマのようになっていく。
いくつかの反撃をもらいながらも、ニコとバレリアは順調に敵を倒していった。
スカイは敵の射撃を避けつつ、ギガントタンクへと砲撃を開始していく。
ギガントタンクへ主砲が命中し、大きく体を揺るがせた。すぐに戦車モードへと形態を変え、全ての弾丸をスカイに吐き出した。
スカイは落ち着いて回避行動をとるが、点ではなく面で攻撃してきた砲撃にさすがに被弾してしまう。
取り付けておいた装甲タイルが攻撃を受けて爆発し、次々にパージされていく。
装甲タイルが剥がれていないところを把握しつつ、攻撃を行う。
主砲は命中するたびに、ギガントタンクに目に見えるダメージを与えていた。
雑魚どもの反撃で、多少の傷は受けていたが致命的なものはセイジンが庇い、スカイの戦車の中からアランがエイドキットの投射をしていた。
最後の一匹にトドメをさし、ニコとバレリアもギガントタンク戦に参加し始めた。セイジンもいつでもフォローに入れるように近くに待機しながら、支援魔術をバレリアにもかけていく。
「へぇ!こいつはゴキゲンだ!!」
バレリアは青白い焔をフォースカタナでギガントタンクのキャタピラ部分を切りつけ、移動力を奪う。3撃もすれば、履帯が外れてしまった。
ギガントタンクの主砲の照準がニコに向けられる。巨大な発射音がしてニコに砲弾が襲い掛かるが、セイジンが防御に入る。
強烈な威力の弾丸が叩き込まれるが、セイジンの【竜騎】が威力を吸収していく。その分、色素が薄くなっていく。
スカイも主砲を叩き込んでいくが、至る所から煙が上がっているがまだ動き続けるギガントタンクがいた。
ニコが後方に回り込み、ハンマーを地面に叩きつけた反動でギガントタンクの背中を登っていく。
ギガントタンクのガトリングガンはバレリアに向けられていて、ニコに対応できない。
ニコは上りきって、肩部で立つと頭部分に強烈な一撃を与えた。頭部パーツは上からグシャグシャに潰された。
頭部パーツが潰され、照準がかなり甘くなったのをみて、バレリアは一気にギガントタンクの上に乗り込んでフォースカタナを胸部分に刺し貫いた。
フォースカタナで攻撃した部分から光が漏れ出るが即座にフォースカタナを抜いて、背後へと跳躍した。
ギガントタンクは動力炉をやられ、活動を停止した。
セイジンが深く息を吐きながら、全員の無事を確かめた。
「ふう、疲れはしたがギリギリってほどでも無かったな。」
「エイドキットも消耗率が想定以下だった。問題なしだな。」
ダメージこそ受けたが、致命傷には至らず。これで、バレリアもスカイもジョブチェンジの資格が手に入った。
「な、なんかズルしてる気分だね。」
「ハハハッ!真面目だねぇ、スカイ。アタシはアタシの実力をようやく認めてもらったって感じだってのに。」
とりあえず、このままマシンヘブンに行って、ビーム商会に商品になりそうなものを買い取るところからだ。
それが終われば、表層都市に行って商いしつつ、二人のジョブチェンジを行う。
最も、スカイはジョブチェンジよりもヴィークルのカスタマイズやらの方が興味があるようだが。
その後、特に問題になるようなこともなく無事にマシンヘブンへ辿り着き、ロル&ラウルへ到着したのだった。




