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崩壊世界とダンジョンと   作者: めーた
セイジンと仲間達
22/96

第22話 ギガントタンク

ちょっとわかりにくい表現を修正しました。

 キャノンt-REXを倒した後、セイジン達はそのままフロアの探索を続けた。

 アランがいうには、先ほどのワンダリングエネミーはフロアボスのギガントタンクの予行戦に最適だったという事らしい。その予行演習が思ったよりも消耗が少なく済んだので、このまま探そうという話に落ち着いたのだった。

 この階層の特徴として機械系エネミーが多かった。

 今セイジン達が戦っていたのは、人型ロボットのような機械兵や戦闘用ドローンなどだった。量産プラントがあるのか、どれも新品のようで1層の壊れかけのテック系エネミーとは性能が違っていた。

 これらテック系エネミーはどれも今の時代の技術力を上回るようなオーバーテクノロジーが組み込まれており、同じくテック系ウェポンの修理部品としてパーツが取れる稼ぎの良いエネミーだった。逆に、それ以外のエネミーは少なく、アラン曰く事前に食糧などの準備を怠ると痛い目に遭うとのことだった。

 そして、このエリアの最大の特徴が広大な工場地帯である。

 セイジン達のいる場所は、巨大な煙突が天井まで続き、それらが立ち並ぶ工業地帯といった雰囲気の場所であり、至る所にコンテナが積み上げられていた。遠目に巨大なクレーンに吊り下げられた巨大な物体も見える。

 あれは旧世代の巨大兵器の部品だという事で、アランからそれを聞いたセイジンは、売れたら幾らだろうと随分とダイバーらしい発想が出てきたことに我ながら笑ってしまった。

 そんなことを考えつつ、今セイジンはチームの斥候役も務めるべく端末をいじりながら近辺の情報収集に勤しんでいた。端末の情報を信じるなら、この近辺には敵もいなく罠らしいものも見当たらない。遠方の巨大クレーンを目指していけば、とりあえず未知の地域はなくなりそうだった。


「アランが言ってた部品のあるところにでも行ってみるか。もしかしたら、価値のあるものが転がってるかもしれない。」

「あまり、期待していくなよ?責任は持たんからな。」

「良いっすね!一攫千金はダイバーのロマンッスよ!!」


 そんなことを話しながら工場の中を歩いていると、遠くの方で巨大な音が鳴った。


「ゴオオオオッ!!」


「ん?何の音だ?」

「ああ、おそらくアイツだろう。気合入れていけ、お目当ての相手がいたぞ。」


 アランが指差す方を見ると、そこには巨大な人型のロボットが立っていた。

 全身はメタリックな輝きを放ち、頭部は3つのカメラレンズが付いており、両腕は、太く大きく、腕だけで2m以上ありそうなほど大きい。胴体部分は、丸みを帯びた形状をしており、胸の部分は大きく膨らんでいた。脚は短く太いため、安定性がありそうだ。足の裏にはキャタピラが付いているようだ。

 全体的に重厚感があるデザインをしている。全長はキャノンt -REXと同じくらいか、それ以上だ。

 そして、背面に背負っているのは、大きなバックパックだろうか。そこから大きな唸り声のような吸気音がしているようだ。

 背中には砲身が突き出していた。肩には大きな砲塔が取り付けられていて、さらに両手には、大型のガトリングガンが据え付けられている。


 ギガントタンクはセイジン達を見つけると、その両眼が赤く光った。

 次の瞬間、ガガガガッ!!と激しい音をたてながら、こちらへ向けて無数の弾丸を撃ち込んできた。

 事前に対象を確認していたおかげでアランとニコは飛び退き、セイジンはフォースシールドを展開して弾丸を受け止める。急速にフォースシールドのエネルギー残量が減っていく。

 セイジンはシールドの残量を気にしながらも、支援魔術のウェポンを立ち上げる。魔導書が眩く光を放ち、自身にに「竜鱗」、ニコには「倍速」、「魔刃」をかけていく。

 ニコは、砲弾を回避しながらハンマーを振りかぶり突進する。接近してハンマーをフルスイングする。

 しかし、ギガントタンクはキャノンt-REXより素早い動きで回避し、反撃とばかりに、キャノン砲を向けてくる。

 セイジンは、キャノンt-REXとの戦いを思い出したのか、焦って叫んだ。

 

「くっ、また大砲か!?」


 キャノンt-REXの時のように、ニコが吹き飛ばされるかと思ったが、今度は違った。より速い速度で接近しハンマーを叩きつけたのだ。

 キャノンt-REXの時は力任せに押しつぶしていたが、今回は的確にギガントタンクの関節を狙って叩きつけていた。しかし、ギガントタンクはビクともしない。

 ハンマーを振り上げようとするが、その時既にギガントタンクはキャノン砲の狙いを定めていた。

 そして、その巨大なキャノン砲から激しい音と共に砲弾が撃ち出される。

 キャノンt-REXのキャノン砲とは比べ物にならない程の威力を持った砲弾が、ニコに迫る。

 その光景を見たセイジンは、咄嵯の判断で、ニコを後ろに庇って盾になるように前に出た。

 直後、セイジンの左肩が弾け飛んだような衝撃が貫いた。

 衝撃で後方に吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直す。左肩の感覚がなくなっているが、慌てて触れてみるとまだ繋がっていた。サイシールドが砕け散った瞬間に、千切れかけた腕をアランがエイドキットをセイジンに投与したおかげで体に繋がったようだ。その際、神経が繋がる前に修復されたので、感覚が一時的になくなっているようだった。

 テックドクターが扱う場合、エイドキットはさらに最適化をされて投与が行われる。一般のダイバーが使用するよりも飛躍的に効果が上昇する。吹き飛んだ腕も即座に繋がるほどだ。

 セイジンはアランへと感謝を叫んだ。


「ありがとうアラン!」


と言いつつ、ギガントタンクの方に視線を向けると、キャノンt-REXの時と同様にニコが突撃していくところだった。


「ニコ!気をつけろっ!!」


 と叫ぶセイジンの声が聞こえているのか、それともキャノンt-REX戦の反省を活かしてなのか、低い姿勢で駆け出した。鉄板の床と引きずられるハンマーが擦れて火花を散らす。

 そして、そのままの勢いで床をハンマーで叩き反動で跳躍すると、さらにギガントタンクの胴部を蹴って肩に飛び乗り、その勢いのまま振り上げたハンマーを頭部へ打ち付けた。 

 バキッという鈍い音が響くと同時に、ギガントタンクの頭が大きく凹み、亀裂がカメラアイに入った。

 これは、もしかしたらこのまま勝てるかもしれないと思い始めた時、異変が起きた。


 ギガントタンクは大きな警報音を鳴らしながら手を引っ込めて脚部を胴部に引き込み、キャタピラ部分を伸ばしていく。ギガントタンクはその姿をよりその名に相応しく、戦車らしく変えたのだった。背中と肩と腕に分散されていた砲台が前面に集中した形になる。

 急激な足場の変化に合わせられず、ニコが肩だった場所から地面へと飛び降りてくる。

 すると、ニコへと照準を合わせた巨大戦車ギガントタンクがその集中した砲台を全砲発射を行った。ニコは回避行動に移るが、全ての砲弾を避ける事は出来ず、何発か被弾してしまう。

 悲痛な叫び声をニコがあげる。胸部が一瞬大きく凹み大量の血を吐いたが、瞬時にアランから回復魔術のウェポン効果が飛んで逆再生するように復元していく。

 死ぬような大怪我を受けながらも、回復したニコは怯むことなく再び突進する。

 そして、ギガントタンクの足元でハンマーを大きく振りかぶると、全身を使ってハンマーを振り下ろした。

「ゴオオッ!!メキメキメキィッ!!」

 と、激しい音を立てて装甲が大きくひしゃげる。

 しかし、それでもなお、ギガントタンク健在であった。

 キャノンt-REXは、脚部が弱点だったが、このギガントタンクは変形し戦車のスタイルをとったことで克服している。

 装填に時間のかかったキャノンt-REXのキャノン砲とは違い、連射性能の高いガトリングガンの弾幕を掻い潜り、懐に飛び込み一撃を加えなければならないようだ。

 今の状況ではニコとセイジンが分断された形になっている。強引に割り込もうとするも、ガトリングガンの圧が強くセイジンは前に出ることができない。

 今は近くにいないためにニコは自分で防御をなんとかしなければならない。だが、バーサーカーであるニコにとっては非常に苦手な分野だった。

 そうこうしている間にもニコはダメージを受け、アランの回復を受けている。アランの回復だって、無限に続けられるわけじゃない。普通の回復役であれば、とっくに尽きていてもおかしくない回数の回復をしている。

 セイジンは、焦りながらどうするかと思案していると、ギガントタンクのガトリングガンの弾が切れたようで、砲身を上にあげて冷却し始めた。幸いにとセイジンは前進してニコのカバーができる位置につく。 

 ガトリングガンの代わりにギガントタンクは巨大な砲塔をニコに向ける。キャノンt-REXのキャノン砲の倍はある大きさの砲塔だ。

 その砲塔の砲口が赤く光り、発射された。刹那にセイジンは射線上に身を投げ出し、ニコを守っていた。残量の減っていたフォースシールドのエネルギーはすぐに空になり、サイシールドも即座に破片となった。衝撃を感じるまもなく、セイジンは地面を転がる。

 アランは悩んだが、ニコへの回復を一時中断してセイジンへと集中させようとした。しかし、ギガントタンクはその砲身をアランへと変更し放った。この瞬間、アランはギガントタンクに勝利はできないと悟り、「奥の手」を切ることを辞めた。


「(何が俺の目の前では死なせない、だ。俺が死んでちゃ話にならんだろう。)」


 ニコは混乱をしていた。歪む視界の中であっという間に、セイジンとアランがやられた。自分は一体何をすればいいのか、わからないまま、ただひたすらハンマーを振り回し続けていた。

 すると突然、後ろから大きな衝撃を受け弾き飛ばされてしまった。

 自分の意思とは関係なく、ハンマーを手放してしまい、地面に倒れる。  

 倒れた衝撃で暴走から目が覚めたニコは、ギガントタンクがセイジンとアランを吹き飛ばしている光景を目の当たりにした。

 すぐに起き上がり、セイジン達の元へ向かおうとするが、また衝撃を受けて吹き飛び、ニコは地面を転げ回った。

 そして、やっとの思いで立ち上がり、セイジン達の方を向き直った時には、セイジン達は既に瀕死の状態であった。


「うそ、セイジン。アラン。」


 ギガントタンクが、今度はニコに向かって狙いを定めた。

 ニコは覚悟を決めて、ハンマーを構える。

「(私は、ここで死ぬ。でも、セイジンとアランだけは助けたい。だって、仲間だもん。)」

 ニコが目を瞑って、ハンマーを握りしめた。


 しかし


 ニコが目を開けることはなく、


 ハンマーを振りかぶることもなかった。


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