第1話 どん詰まりの男
初投稿です。
オリジナルのTRPGの世界観説明のための小説です
エルのイメージ画像を載せました(画像生成AI)
1話目
とある酒場にてとある男が酒場のマスターにカウンター席でくだを巻いていた
「ダンジョンに潜らないダイバーがいて何が悪いんだよ!なぁ、とっつあん!!」
男の名前はエル。苗字はない。
彼は下戸の癖に、この安酒場で飲み通いもう3ヶ月にもなっていた。
3ヶ月も通えば、立派な常連である。もちろん、マスターもあしらい方は心得ていた。
「そうだな、お前に別に悪いところはないんじゃないかな。エルよ?」
「じゃあ、なんでピーピーと呼び出しが鳴り続けてるんだよぉ。出たくねぇんだよ」
この世界では、ありとあらゆる地上の資源が滅ぼされており、生きるためには唯一の資源が確保できる場所
ダンジョンに潜らなければならない。
そのダンジョンに潜るのがダイバーと呼ばれる。ここでくだを巻いている彼もダイバーの一人である。…はずだ。
はずだ、というのには理由がある。彼はとある理由でもう半年ほどダンジョンに潜っていない。
ダンジョン恐怖症に陥ってしまったからである。ダンジョン恐怖症になる理由は様々であるが、彼の場合は死に過ぎた。
ここで、何回も死ぬことができるのか?という疑問が出るののは当然なのだが、出来てしまうというのが実情である。
ダンジョンの中で死んだ場合のみの限定だが、死亡すると何処からともなくブギーマンと呼ばれる存在が現れる。
外観は片手に10の指を持ち、4つの腕を生やし、清潔な白衣を羽織っていて三つの首にそれぞれ仮面を被った人型の生物である。(一体ではないらしく、前記以外の部分は様々な恰好をしている)
そんな存在が、死を感知しては蘇生させていくのだ。生前には無かった、「余計な器官を取り付けたり交換したり」して。
エルはもう人生の中で4回死んでいる。蘇生は無限には行えない。最後には発狂するか、ダンジョンのエネミーの仲間入りをするかだ。だからというわけではないが、エルはダンジョンに潜るのをもう半年、避けていた。
「だせえな、【どん詰まりさん】よ。そんなところで酒なんで飲んでないでちょっとは社会に貢献したらどうだよぉ?」
エルの背後から声をかけてきたのは若手のダイバーだった。おそらく、初仕事が上手くいったのだろう打ち上げで出来上がったという感じを隠してもいない。装備は真新しく、メンバーも3人ほどだが若い男たちだった。BGS装甲銃を背後に背負った強化服を着込んだ男が突っかかってきた。サポートマニュピレータをつけて射撃の精密度を上げてきるガンナーと回復薬を射出するテックドクターが背後にいる。
「おっさん、少しは社会貢献しよぅぜ?俺たちみたいにや!ハハハッ!!」
酒場のマスターは一言やめとけ、とぼやいたがそれだけだった。
飲みつぶれかけたエルは、千鳥足で立った後にルーキーどもに宣言した
「おべぇぇ、うぉべぇぇぇぇえ…!」
何とも言えない沈黙が、その場を支配した。
絡んだらゲロを吐かれた強化服の男が短絡的に銃を抜いてぶっ放した。
死んだと思ったルーキー達だが、エルは死にはしなかった。
「おまえら、オレを舐めんな」
エルは体に針と鱗をまとい、その攻撃を防ぎ切った。
エルの体は装甲服に包まれていて、その上に装甲鱗が生えていた。それは、死んで手に入れた2つ目の力だ。
間髪入れずに仲間達が応戦し始めたが、咄嗟に抜き打ちに成功したガンナーの攻撃を今度は装甲銃で弾き返す。
一瞬で弾き返したシールドのついた銃身がどこから出たのか気づいた時には回復薬を使うテックドクターが構えた腕を撃ち抜かれた。3回目に死んだ時に両腕を交換されたサイバーアームに大きさすらも無視して内蔵されたBGS装甲銃だ。旧世代の技術は物理法則を無視したような性能を秘めている。
「ふざけやがって!」
そう叫んだ装甲服のルーキーだったが、逆に直接銃身を利き手に当てられ、接射をされて腕を使い物に失くした。
「もう、やめとけよ。ここから先は殺すか殺されるかだ。勝つ自信がないなら、逃げろよ。ダンジョンの中じゃないんだ。生き返らねえんだ。」
くそ!と捨て台詞を吐いて逃げていくルーキー達。たまに、どん詰まりだの、崖っぷちだのとあだ名され、実力を知らないのが無駄に絡んでたまに怪我したり、命を落とすのがエルのこの半年の面倒ごとの1つでもあった。