トモくんの捜索
暗い道をひたすら走った。
そこにトモくんがいるという確証はない。でも、ひとつの可能性にかけてみることにしたのだ。
大学に着いたときには夜の11時を過ぎていた。
そして俺はまっすぐある場所へ向かった。
池だ。
外に出かけるときに、わざわざ水着を選んだ理由は、なごみのお守りを探すためなんじゃないかと思ったのだ。秋山によって池に投げ入れられたお守りを。
それ以外に水着が必要な場所が思い浮かばなかった。
俺は池の周りを探した。幸いにも街灯のおかげで池の周りは明るかった。
しかし、石で縁取られた池の周りには芝生になっているので、間違えて踏み潰すことのないように、しゃがみこんで慎重に草をかき分けて探す。
一周し終わったが、見つからなかった。
まさか、池の中で溺れてしまったのだろうか…。もう見つかる気がしなくて、本当に泣きたい気持ちになってしまった。
もっと早くに気付いていればよかった…。そうすればもっと早くに探せたのに…。
いや、そもそも早く謝っていれば、こんなことにはならなかったんだ。
涙が頬を伝って落ちる。
「トモくん…、一体どこにいるんだよ。出てきてくれよ。もう二度とあんなひどいことは言わないから…」
涙を拭いながら、そうつぶやいた。
…すると、
「…進……ここだ……」
かすかにトモくんの声が聞こえた。
「トモくん!!!!どこだ??どこにいるんだ?」
「……ベンチの下だ…」
急いでベンチに駆け寄って下を見ると、トモくんが倒れていた。それも、泥が髪や体にたくさんついている状態で…。
俺はすぐにトモくんを手の上に乗せた。
…よかった。生きていた。
俺は安堵感から涙を流した。
「…ょぉ、進。俺を探しにきたのか?」
トモくんは弱っているらしく、いつもよりも弱々しい声だった。
「当たり前だろ。ドールハウスにいなかったから心配だったんだ。大丈夫なのか?」
涙を拭ってそう聞くと、トモくんはゆっくりと笑顔をつくって、
「多分な。ちょっとお腹が空いてるのと、疲れただけだよ」
「トモくん、ここで一体何してたんだよ。もしかして、探してたのか?お守りを」
「…ああ、そうだ」
「トモくんとなごみには悪いけど、お守りは無理だよ。ここの池、狭いくせに割と深いだろ?しかも汚いし。見つけるのは困難だよ…」
そう言うと、トモくんは笑顔のまま、
「進、よく聞けよ。イケメンの条件その4だ。
イケメンの辞書には、不可能の言葉はない。どういうことかわかるな?」
そしてトモくんはさっきまで倒れていた場所を指差した。
「まさか…」
近寄ってみると、そこには泥が染み込んで汚くなったお守りが落ちていた。汚さの中に、狐の刺繍がはっきりと浮かび上がる。
「魔法が使えなくたって、役に立っただろ?」
俺は両手でトモくんをギュッと抱きしめた。
「ひどいこと言って本当にごめん。…お守り見つけてくれてありがとう」
抱きしめながらそう言うと、
「いいんだ。俺は進が幸せになるためだったら、どんなことだってするからな」
いつもなら歯が浮きそうになるくさいセリフも、その時は見事に心にぐっときてしまい、俺はまた泣くことになった。