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一般常識?

 地上に戻った俺たちは早速ギルドでドロップ品の売却を行うことにした。今回潜る前には地図の購入やマジックポーションの追加購入、食料の調達などでほとんど使い切っていたため宿代くらいは残っていたけども、かなりカツカツだった。


「それにしても、かなりの数のゴーレムを倒しましたね。三階層はストーンゴーレムしかいないはずですが、ブリックゴーレムですか――落とし穴の罠にかかって四階層に出現したと。それは新しい情報ですね。それからこっちはブラックストーンゴーレムですか」


 受付嬢がそういった瞬間、ギルド内の冒険者にどよめきが起こった。俺たちが苦労したこともそうだけど、本来四階層程度で出てくるような魔物ではないので、よく無事に帰還できたということのようだ。

 ちなみにブラックストーンゴーレムというのはその名の通り、ストーンゴーレムの亜種でブラックストーン=黒墨鋼と呼ばれる鉄よりも高度のある金属で構築されているらしい。

 予想通り体全体が素材として買い取り対象となるようだ。

 単価としては鉄よりも高いが、銀よりは劣る。とはいえ、量があるのでそれでも結構な買取り額になるそうだ。


「全部で338万ダリルですね。振り分けはどうしますか?」


 銀のインゴットなども含めて恐ろしい金額になってしまった。毎度毎度ギルドの買取りではびっくりすること続きだ。取り合えず端数となる38万を金貨で受け取り、残りは預かりとした。


「明日は防具でも買いに行くか」

「そうしましょう」

「ああ、やっと初心者装備から卒業できる」

「シエスの分は武器も買おうか」

「いいですか」

「もちろん」


 シエスの頭を撫でながら冒険者ギルドを出ていこうとするとギルドスタッフから声がかかった。


「あの、すみません。一つ伝え忘れていました」

「どうかしたんですか」


 振り返って尋ねる。


「みなさんはまたダンジョンに入られますか」

「ええ、そのつもりです」

「そうですか。それでしたら中で宮廷騎士に会うことがあるかもしれませんのでご注意ください」

「宮廷騎士?」

「ええ、なんでも12階層のワイバーンが目的らしいですが、第三王子殿下のレベル上げも兼ねているそうです」

「第三王子が?」

 

 驚きのあまり素っ頓狂な声でネルが聞き返した。

 王城にいたころも王子や王女と謁見する機会はあったが第三王子と会った覚えはない。確か別の国に勉強に行っているという話だった。とはいえ、周りを固める騎士とは顔を合わせている可能性があるので注意が必要だろう。まあ、先に潜っている連中に遭遇する可能性は低いと思うが。


「はい。別の冒険者の邪魔をしないのは通常通りなのですが、万が一遭遇したときに粗相のないようにお願いします」


 随分とあいまいに注意喚起に俺は苦笑する。まあ、相手は国のトップに対して、荒くれ物の多い冒険者に対しては最低限の注意が必要なのだろう。


「まあ、大丈夫じゃないですか。相手は先行しているようですし、12階層を目指しているんですよね。俺たちはゴーレムで苦労するようなレベルですから、そんなに深く潜ることはないと思いますので」

「??? ゴーレムは普通に倒されているんですよね」

「ギリギリですよ。切っても破壊しても元に戻ってしまうので結構大変でした」

「元に戻る? クレバルの粉を使えば再生を阻害できるはずですけど?」


 不思議そうに聞き返すギルドスタッフに、俺たち四人もキョトンとして返す。


「なんですかそれ?」

「いやいや、えええ? クレバルの粉を使わずにゴーレムを倒したんですか?そっちの方がびっくりですよ」

「いや、だから、クレバルの粉って」

「クレバルという植物を乾燥させて粉にしたものです。剣に粉を振って切れば、ゴーレムの修復を阻害することが出来るアイテムですけど……」

「どこで売っているんですか?」

「ここで買えますよ?」

「は?」

「ちょっと、うそでしょ。私たちの苦労はなんだったの?」


 ギルドスタッフにはとりあえず情報を小出しにするのをやめてほしいものだ。ゴーレムにはクレバルの粉というのが一般常識なのだろうか。俺たちが三階層の地図を購入したときにそのくらいの情報は付け加えてほしかった。


「ちなみにいくらです?」

「一袋2000ダリルです」

「安!!」


 ちなみに一袋は米20キロくらいの大きさである。粉は剣に振りかける必要はなく戦闘中にその空間に撒いても効果はあるらしい。つまり、魔法でも俺の拳で砕いても、クレバスの粉が舞っていれば効果を発揮する。

 なんだろう、ゴーレムがもはや雑魚に思えてきた。

 俺たちが情報に疎いのは冒険者ランクが低いのにもかかわらず、高レベル者向けのダンジョンに潜っているからだろうか。正しく冒険者ランクを上げていけば、自然と入ってくる知識の習得ができていないのかもしれない。

 ここのダンジョンである程度結果が出たら今度は依頼をこなして冒険者ランクを上げていくのもいいかもしれない。


「王子一行がいるということはわかりました。とにかく遭遇しないように、万一遭遇した際には失礼のないように気を付けます」


 そういって俺たちはクレバスの粉を一袋購入するとギルドを後にして宿に向かった。明日は防具を買うことにしているけども、俺はみんなとは別行動をしようかと思う。 

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