作戦会議
ほとんど囚人に近い扱いだった為、塀の中で持てる物は限られて来る。その為、限られた行動しか取れないのは分かりきっていた。2つのキーアイテムのうち1つはリスターが提案して、もう1つのキーアイテムはゴードスが提案した物だった。
そのキーアイテムとは、弓と矢であった。そう弓矢こそ2人で考え抜いて産み出した脱走用兵器だった。弓こそ、その辺に落ちていた木の枝に輪ゴムを組み合わせた簡素な物だったが、リスターが力を入れたのは矢の方だった。
出来るだけ矢の先を鋭利な物にして、少しでも矢の先の殺傷能力を上げるのに余念が無かった。
ゴードスとリスターは、壁越しに"Xday"つまり、脱走の日をいつにするか決めた。そしてついにその日は訪れようとしていた。リスターとゴードスは頼りなさそうな弓矢に過大なる戦果は求めていなかった。あのアイテムは、監守の武器を奪う為のもので、応戦援軍に来るであろう雑魚を退けるのは己の徒手空拳であった。
リスターは、姉のジャスミンの事が気になったが、今はジャスミンを救う余裕は、無かった。
リスターは、「いつか助けに絶対来るから!」という事を心の中で反芻していた。無論、この脱走作戦が失敗に終わる可能性もある。その時は2度とここから出られなくなる事も覚悟しなくてはならなかった。この脱走作戦に失敗は許されない。
いつまでも囚われの身では何も変わらない。きっとSTRSの上層部には練習宇宙空母パラリアスが、消息をたった事は把握しているだろう。だが、上層部にはたかだか練習宇宙空母1隻とSTRS指揮下幼年学校生1000人の命など、救う気はない。というより、ここはイーストエリア最果ての地、ダストボックス。探知の仕様がないのだ。だからここから助けを乞うのだ。その他にもDASにとって目障りな人間を集めた施設である事は、STRSの上層部でなくとも、STRS指揮下幼年学校生でも知っている"常識"である。
行動を起こして成功しなかった時は、その時考えればいい。ダストボックスの制圧に成功した時は、それは勲章ものである。
幸い、手足に枷ははめられていない。リスターと、ゴードスは体操の時間5分を積み重ね、壁を慎重に叩きあい、意思の疎通を図った。さぁ、2人は一体どうなるのか?ダストボックスに収監されている同志を救い出す事は、出来るのだろうか?