キーパーソンとキーアイテム
ダストボックスにリスターとジャスミンが連行されてから10日たった頃であろうか。ひょんな事から隣の部屋に収監されていたゴードスという男に声をかけられた。
彼の正体は後に分かる事になるのだが、この時は、1日5分の体操の時間しか接触の機会がなかった。まだ、お互いの事をよく知らなかったが、ゴードスという男は信頼出来る人物であることをリスターは感じていた。
初めはお互いに挨拶程度に自己紹介をするだけだったが、ダストボックス内部では、収監されている人間の中で模範囚には、ペンとメモ帳が使える様になるという。そのメモ紙にゴードスが、脱獄計画の為に力を貸して欲しいと、お互いに最小限度の共有事項を仕入れる事が出来るまでに至った。
まずは、出口の見えない所から脱獄することをお互いの共通目的として、共有した。あとはこのダストボックスから出てしまえば何とでもなる。その為にやるべき事をゴードスは紙に書き出した。少し時間をかけても、このダストボックスから確実に逃げられる方法を2人は模索した。
その為にはまず接触時間を増やす必要があった。体操の時間の5分では流石に短すぎた。まずは、隣り合っている2人の部屋の特徴を活かすため、壁を叩く事で通信出来るようにした。1回叩いたら"も"2回叩いたら"か"3回叩いたら"と"いう具合に決めた。
リスターとゴードスの間でどのような暗号通信になっていたか詳しい事は、分からないがこれで何とか意志疎通できる。監守に見つからない様にするため、時間を区切り通信する事にした。それは二人の暗黙の了解であった。
話によると、ここは想像以上に厳重な警備が敷かれているため、脱獄は難しいという事であった。ただ、5分間体操の時だけはその限りではないらしい。結局、5分間体操の時間に行動を起こすしかないらしい。
手先の器用なリスターは、持て得る道具をフル活用して、2つのキーアイテムを大量に作った。それは奇しくも、ゴードスの指示で逃げる為の鍵を握る道具であった。