名刀サマムネ
修行は無事に終わった。最高レベルのキランドロイドも常人ならば2日以上かかるところを、10分で仕留めた。このリスターの成長ぶりに驚いていたのは、他の誰でも無く竜童だった。
恐らく、修行の成果を全て出し切っていた訳ではなく、消化不良であった事は竜童もリスターも一様に思っていた事であった。
迎えの宇宙戦艦コバルニトフが来た為、2人は別れの時を迎えた。
「リスター、お前はもう我が剣を越えたな。」
「いえ、まだ道半ばですよ。」
「次こそブラックキャットを倒してくれ。」
「次は負けません。」
「リスター!これを持ってけ‼」
「これは?」
「俺の刀のコレクションで一番切れ味のある刀サマムネだ。SRSソードの代わりっちゃあなんだが、持ってけ。餞別だ。」
「お世話になりました。短い間でしたが。」
「達者でな我が愛弟子よ。」
2人はがっちりと握手をした。男と男の別れに涙は不要だ。そんな事を進化したリスターの背中は、物語っていた。
リスターを宇宙戦艦コバルニトフでピックアップした次の進路は、STRS作戦司令本部のあるSFFに向かった。
「ミシェリー!お前何でここに?」
「リスターが修行している間に大尉に昇進して、このコバルニトフの艦長になったの。」
「はっはっは。ミシェリーが艦長?大出世だな。つーかそんなにSTRSは人手不足なのか?」
「実力でなったんだから、馬鹿にしないでよねリスター少尉。」
「アイザー・ゼルト元帥閣下に階級上げてもらわねぇとな!ミシェリーの下なんてあり得ねぇ。」
えらく出世したなと言おうともう1度言おうと思ったが、次の瞬間もう一人の重要な人物に遭遇する。ジャスミンだ!
「ジャス姉、どうしてここに?」
「久しぶりね。リスター。私はこの宇宙戦艦コバルニトフの副長兼砲術長なの。ちなみに階級は中尉よ。」
「何だよ。アイザー・ゼルト元帥閣下の指示は。ったく。女に甘いな。」
ミシェリーもジャスミンも、もう昔のような弱い戦士ではない。彼女らの顔がそう語っていた。たくましく成長した姉と恋人に親しく話すのは、この戦いが終わってからにしようと、密かに心に誓った。何だか急に眠くなって来た。
「ミシェリー大尉?仮眠室借りますね。」
「眠いの?スペース・フォース・ファイブまではあと5時間よ。」
「充分だ。じゃあおやすみ。」
コバルニトフはアスグリア銀河をひた走っていた。




