クラドークサス自警団隊長アットラー
リスターは、アットラー隊長の元へサーヤンを連れてやって来た。勿論、"この星を脱出する為"である。それ以外に目的はないのだ。
「隊長の元に来ればこの星を脱出出来ると聞いたのですが?」
「リスター君、だったね?生憎今はC級以上の宇宙駆逐艦は出払っているんだ。」
「それが戻って来るのはいつですか?そもそも帰還の可能性はあるのですか?」
「君はSTRSの少尉だろ?そんなことも分からないのか?この星の惨状を本部の連中は知っている。でもデスフラワーが怖くて、テントスが怖くて、大型艦の派遣には消極的なんだ。」
「生憎今は只の放浪者ですから。状況なんざ知るか!さっさとデカイ艦寄越せ‼これはアイザー・ゼルト元帥閣下の命令だ。STRS総出で俺を探してる。」
「自警団の隊長の分際で天下のSTRS士官の命令が聞けぬと申すのか?」
「その若さでアイザー・ゼルト元帥も認める少尉とは、ただならぬルーキーですが、艦がないのではどうしようもありませんね。」
「まぁ、焦りなさるなリスター少尉。どっちにしろ惑星移動が出来なければ、この惑星から出る事は出来ません。」
「ですから、それはいつになったら可能になるのかと申しているのです!」
「場合によっては力に訴えますよ。舐めないで下さい。」
「おいおい、よそうぜ。子供の痴話喧嘩じゃないんですから。」
「アットラー隊長が嘘をついていないのは確かです。ただ…。」
「俺を信用出来ない様だな。」
「はい。残念ながら。」
「無理もないか。でも今は本当に輸送艦が不足してるんだ、慢性的にな。」
「そこまで言うなら信じましょう‼」
「懸命な選択だなリスター少尉。」
「言っとくが、この星から脱出たいのなら、俺の指揮下に入る事をオススメするぜ。」
「郷に入っては郷に従え。鉄の草鞋を履いてでも探せと、STRS指揮下幼年学校生時代に教わりました。」
「リスター少尉は、本当のエリートなんだな。」
「アットラー隊長だって古武士みたいな人ですね。」
「お互いに骨がありそうたな。」
「私はただのSTRSの少尉です。一緒にしないで下さい。」
「自警団の中でもSTRS出身の猛者がいるが、実力のある奴は皆自警団に回ってるぞ?」
「STRSは、アスグリア銀河全土から集めて来ますからね。変わり者が死の星の自警団に身を潜めるパターンも無いことは無いでしょう。」
「もう少しリスター少尉と、話をすれば分かち合える気がするのは、俺だけでしょうか?」
「時間の許す限り付き合いますよ。とにかく今は宇宙駆逐艦C級以上の大艦を待たねばならぬのですから。」
「急がば回れ回り道っていうことわざもありますしね。」
「まぁ、そうなんですが、僕としては早く移動し、アイザー・ゼルト元帥閣下の元に戻らないと。」
ここから反撃を開始する。そんな気持ちはさらさら無かった訳であるが、リスターはとりあえず自称自警団隊長を名乗るアットラーを利用してこの星から出る事を最優先に考えなくてはならなかった。
後編 反撃STRSに続く




