窮鼠猫を噛む
ギャートルとリスターの対決は、見ている者を圧倒した。周囲では誰も自分を助ける者がいなくなったというのに、ギャートルは冷静だった。そして、憎らしいまでの余裕が彼をそうさせていた。
「どうした?その程度か?」
ギャートルはリスターの更なる猛撃を期待した。まるでこの戦いを楽しむかのように。
それとは対称的に、リスターにはギャートルを圧倒する余裕など、あるはずもなく、格上の相手にアップアップしていた。正直言って勝てる気がしなかった。それでもこの場を乗り切る為には、相手を気絶させる程の一撃が必要だった。他に策はない。
まだ、SRSソードもKMシールドもろくに使いこなせていないにも関わらず、リスターは何か隠された機能があると信じて、他力本願になっていたのは、仕方のない事であった。
確かにSRSソードやKMシールドには、まだ使えるツールがあったが、その用途の全てをリスターが理解し把握していた訳では無い。しかしながらこの場を上手く切り抜けられるとするならば、そのリスターの把握していないツールに勝利の女神が微笑む何かが、隠されているとリスターは思った。
ギャートルのリジェクトウェーブは、そんなリスターの思案をよそに、吹き飛ばすかのように、襲いかかってくる。無論、その目標はリスターただ一人だ。ギャートルの感覚では、水槽の中で優雅に泳ぐ金魚に餌を与えている様な軽い感じであったのである。ギャートルが飼い主、リスターが金魚である。
まさか、金魚に反撃されるとは、思ってもいないし、気絶など有り得ない。リスターが付け入る隙があるとすれば、絶対にやられはしないと言うような、ギャートルの心に潜む油断や慢心といった部分に突け込むしかない。
いずれにしても、リスターがDAS四天王の一角である宇宙ギャング総組長ギャートルは、今のリスターには、強すぎる相手だった。が、そこは、STRS史上最年少で少尉になった男。"窮鼠猫を噛む"を演じて欲しい。




