青き司令官
リスターには、のんびりしている時間が無い事など当然分かりきっていた。敵部隊に捕まる事は戦死したものと判断される。
それがSTRS幹部教育で、まず初めて教えられる事であった。だからといって、ジャスミンやミシェリーをみすみす見殺しには出来るはずもない。これまでにどれだけの人の協力があったかという事を考えれば、素直に引き下がる事など出来ない。要するに救出あるのみという事だ。
だが、持久戦やむなしの作戦を打ち切るという方針を示したのはそんなジレンマを抱えていた時の事であった。
後方支援隊員50人を残して、残りの50人を突入部隊に編制する積極的姿勢に打って出たのである。勿論、先導はリスターが務める。ジャスミン小隊を見つけ出す事を最優先事項として、とにかく敵陣深くまで、切り込んで行った。
ここで行き止まりかというブヘルキア城最深部で、ようやくジャスミン小隊を発見した。全員が卑猥な格好をさせられていたが、直ぐにそれを振りほどき、STRSの制服を着させた。
「リスター!来てくれたのね?」
「当たり前じゃねぇかジャス姉。それより急いでここを脱出して‼味方の軍艦が待ってるから。」
「宇宙ギャング総組長ギャートルが追って来るわ。」
「そこは俺に任せろ。さぁ、行って‼」
リスターは全員の無事を確認すると、後方支援隊員の待つ宇宙戦隊エイトフリゲーツの元へ向かわせる誘導隊員を20人さいて、残りの30人(最精鋭)で、宇宙ギャング総組長ギャートルと、タイマンをはる事になった。相手は50人位はいただろうか?ギャング軍団の精鋭だったが、怒りに狂ったリスターの相手ではなかった。
あんな辱しめを長時間味あわせて、リスターの最愛のミシェリーに傷を与えた事。勿論、ジャスミンや他の隊員への扱いも、捕虜規定条約を明らかに無視する、愚行であった。
ミシェリーの事が一番心の中では心配だったが、勿論そこは隊長として、私情は挟むべきではないと思った。軍人は私情や政治的な意図で、動いてはならない。これがSTRSの幹部教育の2番目に教わる事であった。
しかし、リスターとて人間。脆く弱い生き物である。そして何よりも自分中心の考え方をいつでも優先させたいという気持ちを、持っているとかく弱い生き物なのである。
リスターもそういう私情はあったが、とりあえず脇に置いておいて戦えるほど、彼はまだ熟していなかった。そう、彼はまだ青い司令官だったのだ。




