ジレンマ
前進あるのみの猪突猛進タイプを大概の指揮官は好む。それが突入部隊であろうと、無かろうと。突入部隊の指揮官ならば、尚更である。
しかし、リスターは、そういうのが好きではないし、そういうタイプではなかった。それは、部隊の運用の方法を見れば、一目瞭然であろう。
猪突猛進タイプの指揮官が、少しずつ前進する牛歩戦術タイプの指揮官に相性が良いはずがない。
だが、圧倒的数的不利を克服するためには、牛歩戦術こそが最大のワクチンだった。自らの安全確保をしながら、目標地点に向かうのは作戦遂行上の王道であろう。
リスターが、最前線にいる理由は書くまでも無いが、最強の盾を持って後ろで下っ端を指揮するのと、同じシチュエイションで、最前線から必要な作戦及び指示を与えるのでは、どちらが士気が上がるのかは、明らかだろう。当然死亡するリスクは断然高まるが、リスターは、そのリスクを承知で最前線にいる。
指揮官の率先垂範は、STRS指揮下幼年学校からの教えであった。それをリスターは遂行しているに過ぎない。彼ならばSRSソードやKMシールドが無くても、無駄口やぼやかず、勇敢に敵部隊に突入する指揮官である。彼のそれは、勇敢さと、冷静さのバランスのとれた"英雄"の素質を持っている。
それは、現場で共に戦う仲間の多くがそう、思っているだろう。それほど、現場の評価は高い。指揮官先導というのは、部下もそれに続かねばならない。この両者の息がピタリと、あった時に猪突猛進という作戦形態は成功するのだ。
リスターが、すごいのはパターンがいくつもあるという事である。ある時は勇敢に、ある時は慎重に緩急をつける。それが敵を引き付ける要因だ。
雑兵とは言え、DASの本拠地サウィノスを守る精鋭だ。しかし、リスターはものともしなかった。大した戦闘訓練もせずに、ここまで戦えるのだから、磨けばもっとひかるだろう。
今はSRSソードやKMシールドの武具の威力に振り回され、制御に苦労しているが、コントロールがつけば、大物に化けるだろう。
だが、倒しても倒しても、DAS戦闘員は蟻のように出て来る。が、ここで諦めてしまえば、ここまで来た苦労が報われない。そんなジレンマとの戦いも、リスターを少しずつではあるが、苦しめていた。リスターはロボットでも殺戮マシーンでもないだから。




