サウィノスを奪え
その頃、ダストボックスにいたジャスミンは、相変わらず自由を手に出来ずにいた。リスターとゴードスの脱走があってから、DASは監視の強化を実施。囚人への拷問も始まり、いよいよ外部からの救出以外、このダストボックスを出る手段はなくなろうとしていた。
「あー。もう。どうしたらいいの?」
ジャスミンは、酷く取り乱していた。
何処に行ったのか分からない弟の助けを期待するほど、楽天的な人間ではない。少なくとも、自力で何かをしようとするのが、ジャスミンという女性である。ただ、現状それは難しい。
時期悪く丁度STRSとDASの正規軍同士が衝突し始めた頃でもあって、ついに両陣営が刃を交えたばかりの状態であった。
単純な兵力数で比べると、DASの方が遥かに多く、約2倍以上とSTRSが劣っているかのように見えるが、主兵力である宇宙空母や宇宙戦艦以下級(A~G)ランク宇宙駆逐艦といった兵器の質の差で兵力の不足分をカバーしていた。戦力はほぼ拮抗している。そんな見方が大勢を占めていた。量より質のSTRSと質より量のDASの戦いと言えた。
戦いの主眼は、現状DASが支配下に置いているアスグリア銀河中央に位置しているサウィノスを奪い合う事に置かれていた。
サウィノスは、元々STRSがずっと実効支配してきたのであるが、STRSの求心力の低下に伴い、DASの実効支配を許す形となった。
サウィノスは、その地理的特性から、「サウィノスを抑えずしてアスグリア銀河を制する事まかり通らず」ということわざがあるほど、アスグリア銀河にとって多大なる影響を持つ場所であった。
現状のSTRSの戦力ならば簡単に奪い返す事が出来そうな気もしないではないが、当然DASはそこに防衛ラインを敷き随時大艦隊を配置している。それが分かっている為、STRSも中々突破口を見出だせずにいた。