にゃんにゃん大魔王、碧天に堕つ③
にゃんにゃん大魔王はその名前に負けないくらいにすごく怖い顔をしていました。また、戦いのため、そして放っておけば仲間内で争ってしまうような血気盛んな仲間を束ねるためにも、にゃんにゃん大魔王は強く、威厳に満ちたリーダという役割を演じ続けなければなりませんでした。
だからこそ、にゃんにゃん大魔王の仲間たちの中にも、にゃんにゃん大魔王のことを恐れるものが多数いて、近寄りがたいと思われることもしょっちゅうありました。それでもにゃんにゃん大魔王はそれを仕方ないことだと割り切っていました。少ないながらも、にゃんにゃん大魔王の優しさを理解する側近もいましたし、そして何よりも、にゃんにゃん大魔王が悪い王様と闘っていたころからずっと献身的に支えてくれた、愛する猫がいてくれたからです。
彼女はにゃんにゃん大魔王を助けた反政府勢力リーダーの一人娘でした。年も同じくらいで、にゃんにゃん大魔王がまだ自分に課せられた運命について理解できていない子供のころからの遊び相手でもありました。そして、にゃんにゃん大魔王が反政府勢力の指導者となり、そして戦いに明け暮れるようになってからは、にゃんにゃん大魔王を献身的に支えるパートナーとなりました。にゃんにゃん大魔王が自分の無力さを呪う時も、大事な仲間を戦いで亡くして打ちひしがれているときも、いつも彼女はにゃんにゃん大魔王のそばにいて、彼の気持ちに寄り添い続けました。
にゃんにゃん大魔王が新しい王に就任した時、他の国から沢山の縁談が持ち込まれました。それでもにゃんにゃん大魔王はそれらを断り、代わりにずっと昔から自分を支えてくれた彼女に求婚しました。自分は王妃になる器ではないと身を引こうとする彼女を必死に引き止め、そしてとうとう二人は永遠の愛を誓うことになりました。確かに彼女は商人出の娘で、生まれがいいというわけではありません。それでも、彼女の器量の良さや心根の優しさを国民も、仲間たちも知っていました。だからこそ、二人の結婚の儀を国民は、にゃんにゃん大魔王の王就任のときと同じくらい、いやそれ以上に祝福しました。国民から反感を買うかもしれないと思っていたにゃんにゃん大魔王は国民からのお祝いの言葉を聞き、感極まって泣いてしまうほどでした。
にゃんにゃん大魔王は幸せでした。国民をひどい王様から救うことができ、そして愛する王妃と一緒になれたからです。国民も、一緒に戦った仲間たちも幸せでした。そんな幸せがそれからもずっとずっと続くことができていたら、それはどんなに素敵なことだったでしょう。