にゃんにゃん大魔王、碧天に堕つ②
にゃんにゃん大魔王は産まれたその瞬間から、大魔王としての役割を担う運命にありました。
にゃんにゃん大魔王が産まれたのは日照りが三日、大雨が三日、そして流星群が三日続いた後の満月の夜で、にゃんにゃん王国に伝わる言い伝えの中に、王国の危機を救うために神様から遣わされた使者はそのような日に生まれるとされていたからです。
さらににゃんにゃん大魔王が産まれた頃、王国は欲張りで自分のことしか考えられない王様によって支配されていて、国民みんなの不満が高まっていたときでした。だからこそ、にゃんにゃん大魔王の生誕は、村を越え、街を越え、王国全体へとその情報が伝わっていきました。もちろん当時の王様からしてみれば、こんなに面白くない話はありません。王様はすぐに兵士をにゃんにゃん大魔王の村へと派遣しました。一足はやく噂を聞きつけた反体制側の猫たちによってにゃんにゃん大魔王自体は逃げ延びることができましたが、村の猫たちは大勢捕まり、村は焼き払われ、にゃんにゃん大魔王も母親と父親と離れ離れになってしまいました。
「辛いことがあっても、人から冷たくされても、ずっとずっと優しい子でいるんだよ」
これは母親がにゃんにゃん大魔王と離れ離れになるときに言った言葉です。にゃんにゃん大魔王は当時はまだ幼く、母親の言葉の意味はよくわかりませんでした。それでもにゃんにゃん大魔王は母親の言葉を深く深く、その小さな胸に刻みこみました。
それから月日が流れ、にゃんにゃん大魔王は言い伝え通りの見事な猫へと成長しました。仲間を従え、国民の支持を得て、沢山の争いを経て、とうとうにゃんにゃん大魔王は悪い王様を追放し、新しい王様になりました。戴冠式では国民のみんなが新しい王様の就任をお祝いし、祝福のパレードは一週間も休みなく続きました。国中に希望が溢れ、国民の表情には笑顔が戻り、そしてにゃんにゃん大魔王もまた国民が喜ぶ姿を見て、とてもとても嬉しい気持ちになったそうです。