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第八話 白銀世界の作り笑い/犯罪者達の談話


作り笑い。

これが良いことなのか、悪いことなのかは正直私というちっぽけな人間如きには到底答えが見つかるものではないが。ただ、この言葉を聞いて良い印象を受ける人は少ないだろう。


幼少期に散々とその笑みを見てきた私にとって、目の前の彼が作り笑いをしているか、なんていうのは大体分かるものだ。

まあ、こうぐだぐだと語っている私も今作り笑いをしているのだが。


「─だからね、狂偽ちゃんも……!」


そんな笑顔を見せているイセラさんの表情が一瞬とまった。目を見張って、すぐまたあの笑顔に戻った。

え……? 何か察された……の?

あの顔は一体なんなのだろうか。何かに気付かれた? いや、気付かれて困るものなんてあっただろうか。対応が年相応では無かっただろうか。流石に転生者とはバレてはいないだろうが、妙に頭が良いと思われるよりは馬鹿だと思わせておいた方が色々楽なのだが。


「どうしたんですかぁ?」

「あ、いや、思ったよりも家に着くのが早そうで、びっくりしちゃっただけだよ」


嘘だな。

きっと何かを察せられた。だが、今ここでそれが何なのかを突き止めるのは無理そうだ。


はぁ~、こんなに色んなことを難しく考えなきゃいけないんだったら、前世【つきちか】の狂偽主人公の番外を読んどけば良かった。ま、お家柄一人で本屋には買いに行けないし、お母さんの()()()も1番酷い時期に発売してたしね。過去のことを悔いても仕方ないか。


「きゃぁ!!」


そんなことを考えていると、私は急に大きく揺れた。車が駐まったのだ、というかイヴァンさん運転荒いな。


「Я прибыл(着いたぞ)」

「着いたって。イヴァンが運転荒かったね。大丈夫?」

「……はぃ」


びっくりした。本当やめて欲しいわ。安全運転を心がけて欲しい。

というか、この車……。


L.G.(ロザンドグラス)だ……」


不意にそんな一言がでる。

L.G.とは、海外の高級車の会社だ。鬼目堂家は相当な名家なので、この会社の車を何台か持っていた。特に、自己顕示欲がエベレスト級に高い叔母はよくこの車に乗っていた。性能も確かだが、何よりもデザインを重視した高級感もあり、エキセントリックな車体は異能名家や国家の重役に大人気だ。

叔母の送迎用の車もこれだったのでよく覚えている。あの車に乗るたびにカスタムオーダーでデザインも私が一役担っただのと自慢を毎回毎回運転手さんに言っていた。何度も相槌を繰り返す運転手さんを私は不憫に思っていた。


そんな運転手さんの困り顔を思い出していると、イヴァンさんはバッと振り返り私を見つめた。


「Эй, Изера(おい、イセラ)」

「Какой ваня(なんだよイヴァン)」

「Что тысказал сейчас?(今そいつなんて言った?)」

「Что?(え?)……L.G.?」


私のことをを凝視しながらイヴァンさんはイセラさんと会話をしていた。内容はよく分からないが、イセラさんが困惑しているのは分かった。


「……! Я тебя понимаю,да?(お前分かってるじゃねぇか!)」


ぶすっとした仏頂面はどこへやらイヴァンさんは何かを言いながらニカッとした人懐っこい笑みを私に向けていた。

あれ、素? この人、作り笑いじゃない。


困惑している私にイセラさんは頭を掻きながら。


「あぁー、あいつ車好きだからさぁ、狂偽ちゃんがロザンドグラス?っだっけ? それがわかるから嬉しくなっちゃったんだと思う」


そう呆れた顔で言う、その表情は私が初めて見た彼の素だった。

なんだろう。あんなに警戒していたのに、彼等の人間味が少しずつ見えてきてそれが薄れてきているのだ。


「まぁ、雑談もさておき家に入ろうか」

「うん!」


いかんいかん。

どんなに好感を持っても絶望にふり堕とされる疑いは拭えない。

狂偽は母親に捨てられたが、狂偽のゲームでの陰の含んだセリフは母親には触れてはおらず全て【あの人】のことだった。

はぁ、マジで【あの人】って誰だわ……。

その【あの人】って人は、母親か古井戸さんかと思っていたけれど、それだと狂偽のセリフとの矛盾点があるし……。


考え事を一旦中断して、車から降りる。もちろんイセラさんはエスコートを忘れない。

さっきのような雪を投げつけるような吹雪は止んで、外には静かな白銀世界が広がっていた。その世界には爽やかな緑などは存在せず、雪だけが景色を覆っている。


「雪すご……」

「……、そっか。狂偽ちゃん雪初めてか」

「うん!」


あぁ、確かに転生してからは私は雪を見ていない。

前世も自然とか全く興味なかったし、こんなに雪で感動するのは初めてかも。


手袋越しにイセラさんの手を握りながら、サクサクと雪を踏みしめる。少し後ろにはイヴァンさんがいる。二分程歩くとレトロな煙突のあるレンガの家が見えてきた。玄関の前には黄緑色のクリスマスローズと紫とピンクのアネモネが植えてあり白銀世界の中で鮮やかな存在感を放っていた。他にも庭には噴水があったりして、この家が相当金が掛かることが窺えた。


家のドアをイセラさんがカードキーで開けると、暖かい空気が優しく私たちを迎え入れた。


「寒かったね? じゃ、入って入って」


イセラさんに言われるがままその家に入ると、オレンジ色の優しいライトで照らされた、玄関は少し広く生活感もあった。玄関のすぐ横の棚の上には、セピア色を基調としたアンティークたちが並んでいる。

一瞬だけ玄関を眺め、すぐに靴を脱ぐ。イセラさんがハーフだから、やっぱり日本に影響されているのだろうか。

玄関の奥には螺旋階段があり、右には一つ、左には二つドアがあった。イセラさんは右のドアを開けた。


「ここがリビングとキッチンね。朝ここに来たら、多分イヴァンはいるから」

「うん」

「で、ここが──」


それから、順々に部屋の説明を受けた。1階の右側の部屋にはリビングとキッチン、左側の二つの部屋は手前が三点ユニットバス、奥の部屋がイヴァンさんの部屋。イセラさんが勝手に開けると車の本や工具、パーツなどがあった。この人は本当に車好きなんだなぁ。そして、勝手に開けたのを怒ったのかイヴァンさんがイセラさんに蹴りを入れていた。

仲良さそうやね。

うん。特定の貴腐人達が喜びそうな絡みかたするね。


まぁ、それは置いて置くとして。私の部屋がね! 広いの! ピンクなの! 目がチカチカする!

いや、マジで。スゲぇ広くて、ピンクのレース付きの天蓋付きベッドに壁紙もラブリー。落ち着かねぇよ。


「今日は疲れたよね」と言って、イセラさんは2回にある私の部屋を案内すると共に休ませた。ロシアは日本より六時間ぐらい遅く、今は午後二時で私のお子様な四歳児ボディは眠たくて仕方がない。だが、することはあるのだ。


ベッドの上に用意してあった、ライラック色のパジャマに着替え厚めの毛布を被る。あぁ、ふかふかだぁ。


さて、情報をまとめよう。

まず、2人の名前ね。

『鈴木 イセラ』

『イヴァン』

イヴァンさんって、前世のロシアでは多い名前だったと思う。偽名か? でも、今のロシアの名前の流行とか分かんないし。あと、この人凄い車が好きそうで情報とか聞き出せるかもしれないんだけど、日本語喋れないんだよなぁ。明日から勉強するか……。頼めば本くらい用意させてくれそうだしね。


あと、イセラさんね。あの笑顔は怪しかった。幼稚園の先生が子供達に作り笑いをする時の笑い方とはまた違う。私のことを見定めながら会話をしていた。前世の父の友人達(表面上だけ)のようだ。


「あとは……当面の目標は2人の異能だよね」


そうそう。

私のような異能力者の家庭教師やベビーシッターには異能が必要だ。特に異能を発現させてない私の場合はもっと。

理由は単純。

異能力者は発現から二、三年は自分で制御できない。そのため何かと自己防衛や戦闘に慣れている異能力者が必要なのだ。死亡例などがあり、条例としてそれは定められている。


そう、異能を発現してない私は何時爆破するか分からない爆弾なのだ。So.I'm a bomd! 最悪だね。


あぁ、ヤバイ眠い。

もう明日やろう。明日、イセラさんから異能を聞いて、ロシア語の本……を……。


☆☆☆☆


「どう? あの子?」

「あぁ、気に入った! L.G.が分かるなんて、大したガキだ」

「態度変わりすぎじゃない? ほんと車になるとチョロいな」

「うるせぇよ。ほっとけ。ていうか、お前はあのガキどう思ってんだよ?」

「うーん、あれは四歳児じゃないね」

「は?」

「語尾を伸ばしたりしてたけど、慣れてない。まるで自分を馬鹿と思わせようと思ってるみたいだ。あと、俺の作り笑いに気付いてたと思うし」

「おいおい、頭良いってだけじゃねぇだろ、そりゃ」

「うん、だからさ、時期にバレると思うんだ。俺らが()()()ってこと」




後書きも9回目となると何言って良いかわからなくなりますね。

じゃあ、とりあえず昨日私がGを殺した話を……。あ、要らない? そうですか。

では、いつも通り数多くの小説からこれをタップしてくださった皆様、ブクマをして下さった方々、


愛しております!


はい、すみません。作者は最近乙女ゲームで忙しく、頭がおかしくなっているようです。元々愉快な頭なのに。まぁ、こんなオチのない話は隣の家のポストにでも突っ込むとして、次回に会えたら幸いです。

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