第四話 従兄弟について
ブクマ付けてくださった方、感想をくださった方。ありがとうございます!!
さて、今日私には従兄弟が出来た。
いやっほい! 可愛がってやんぜ! 前世は兄弟も従兄弟もいないかった私はきっと今世が狂偽じゃなければ、彼が攻略対象なんかじゃなければこう思っていたことだろう。
鬼目堂 空城。
それが、今日産まれた私の従兄弟の名前だ。空の城と書いて、ラ◯ュタとでも読むのだろうか。まぁ、でも狂うとか偽者の偽とかが付けられてる私がいうことでもないわな。
さて、軌道修正。
ゲームでの彼は、主人公の一つ下の後輩。
ピンク色の髪に淡い紫のパステルカラーの瞳、可愛すぎる男の娘キャラだ。
最初は、庶民で異能力を持っていないのに評価される主人公を嫌い、結構ないじめをし突っかかってくる。この時期には私は、彼のことを極度のツンデレ君かな。と、思っていたが予想は外れ、まぁまぁ攻略したときには彼は立派なヤンデレになっていた。それは彼の異能力にも関係する。なんだっけ、たしか、【暗褐色の跡】とかいうやつ。
【暗褐色の跡】は、その異能所持者に血を吸われた者は異能所持者の所有物になる。つまりは、空城が主人公ちゃんの血を吸ったら、主人公ちゃんは空城の所有物ということだ。因みに、所有物になったときの効果は離れていても所有物の位置が分かったり、自由に檻を出現させることが出来る。
というわけで、私の従兄弟はヤンデレ吸血鬼な訳だ。
いや、ほんと恐ろしい。ゲームしてた時、マジでビビったもん、主人公ちゃんの首筋に見える牙の跡。痛そーだった。
さて、そんな子が今日産まれたわけだが。空しいことに私に出来ることはこうして考えることと、クレヨンでお絵かきをする事ぐらいしかない。
コンッコンッ
「古井戸です。狂偽様、入りますね」
「はぁい」
如何にも、二歳児のような舌っ足らずな滑舌を披露する。まずまず、歯も全て生えきっていないのだ。最近、奥歯が生え始じめた位だ。例えでもなんでも無く歯痒い。最近もたまにゴム製おもちゃをガジガジする事がある。
「狂偽様、お昼の時間なので昼食を用意いたしました」
「ありがとー」
「どう致しまして」
古井戸さんは言葉遣いこそ侍女だが、私に言葉を教えたり、ご飯を食べさせたりと、私に愛を持って接してくれてる。こういう人が、私のお母さんだったら……って、駄目駄目。もう家族には期待しないって決めたんだ。無償の愛は自分で勝ち取る。
「はい、じゃあ狂偽様。いただきます?」
「いただきます」
でも、少しはこの優しさに浸ろう。堕ちない程度に、再び叩き起こされるように目を開けぬ程度に。
ガチャ
「あ!」
堕ちぬようにとか、厨二病かましてたら、フォークが落ちちまったぜ。
拾おうと机の下に入ると、「あらあら」という古井戸さんの優しい声が聞こえた。見ると、フォークは床に落ちる寸前の所で浮いていた。それから引き寄せられるようにふよふよと私の手に納まる。
え、なんで?
今誰も、触ってないよね……?
固まる私に、古井戸さんが気が付いたように言った。
「あっ! そういえば言ってなかったわ……! 狂偽様、私は異能は小さい物を少しなら触らないで動かせるんです」
古井戸さんは当たり前のことを言い忘れてたように、ニコッと笑いながらそう言った。
つまりは、軽いサイコキネシスってことか。
忘れてた、ここは異能力有りの世界だったわ。びっくりした、唐突なポルターガイストかと思った。しっかし、初めて見たけど凄いね! ふわ~って浮いたよ! あぁ、ごめん、今私人生初の異能力に興奮してんだわ。
つか、古井戸さんすげぇ!
「すごぉーい」
「いえいえ、こんなちんけなもの、一族の方に比べれば微々たるものです。狂偽様の異能だってきっと……、あら、そういえば……!」
照れて卑下し始めた古井戸さんは私に話題を移すと、何かに気が付いたらしく目を見開いた。
「空城様が産まれたので、もうすぐですね。異能力検査」
「なにそれー」
「狂偽様の異能力のお名前を調べに行くんですよ」
「ふぅん」
いや、分かってたけど、まんまだな。つーか、知ってるし。空城は【暗褐色の跡】で、狂偽が……。あれ、なんだっけ。名前長いんだよな。シャバラチャなんたらかんたら、みたいな感じだったと思う。まぁ、名前はね! 大事なのは能力。たしか、異能所持者が呪文を言い硝子のハイヒールを鳴らすと魔法を放てるという異能。詠唱とかに時間がかかるけど、効果は素晴らしく、相手の受けたダメージだけ異能所持者の身体能力向上や傷の回復に充てられる。わぁ、素敵。さすが、敵キャラだけあって良い異能もってんね。
ま、またその異能力調査私の長すぎる異能力名も分かるらしいし、今はゆったりしとこう。
物語本当に進まねぇ!
第四話で二歳児ってどういうことだよ!
はい。すみません。
まあ、次回の次回辺りで狂偽ちゃんが海外飛ばされるんで、お楽しみに。(ネタバレ)
次回は異能力調査です。