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プロローグ
エルク・ローライトという名前を、往来するものに尋ねれば、必ず同じ答えが返ってくる。
「英雄」と。
そう彼の者は、英雄なのだ。今から、数百年も前のことだ。
この世界に、厄災が訪れた。空は闇に覆われ、大地は枯渇し、人々は困惑し、混乱し、争いを始めた。厄災は、一人の人間が起こしたのだ。彼は、自らのことを「魔王」と名乗り、人々の阿鼻叫喚を聞くのを、楽しみとし、世界を混沌へと導いた。
そこに立ち上がったのがエルクという男だった。彼は、一振りの剣を背中に携えて、魔王に立ち向かい。この世界に青空と秩序を取り戻したとされている。
彼の伝説は、色あせることなく、数百年と語り継がれている。
そう彼の話は、過去の伝説である。この物語は、彼の英雄譚などではなく、新たな伝説を刻む英雄の物語なのだ。