永久の孤独
漆黒の闇が辺りを包んでいる。他には何もない。其処でうずくまるようにして、全身を小さく丸め込んでいた。
脳裏に再生される、『捨てられた』という言葉。其れが心の心髄まで浸食し、一欠片の良心までをも喰らい尽くす。何も見たくない。何も聞きたくない。何も──感じたくない。
不意に瞳から銀の液体が流れ落ちた。あぁ、これが人間の言う“涙”という奴か……。
そうせせら笑い、伝った先から拭う。
皮肉なものだった。あれ程までに嫌悪され、また自身も憎悪の感情を持っていた人間と同じものを流すだなんて。これが嗤わずにいられるか。
昔はこんな事を思わなかった筈だ。昔はもっと清らかだった筈だ。では誰がそうした? 誰がこうさせた?
──人間だ!!──
『悪魔の道具だ』、『穢らわしい』、『呪われる』。
噂ばかりを鵜呑みにし、私を恥辱した者共を救う義務が何処にある? よく知りもしないで、偏見を持ち、山に埋められる悲しさがお前達に分かってたまるか!!
そう吠えて、叫んでも、誰も聞かない。聞こえない。その虚しさが闇の増殖を促進した。
──ザリっ──
深海に沈むような思い気持ちを裂くように、不意に穴を掘る音が聞こえた。其れは次第に大きくなり、段々と此方に近付いて来るのが分かる。
捨てた癖にまた拾い戻す気か? それとも私の噂を聞き付けて、悪魔崇拝の道具として持ち出すつもりか? もうどうでも良い。どちらにせよ殺すだけだ。
そう思って刃を合成しようとした時、私の聖遺物を包むケースを払う音が聞こえた。
「漸く……漸く…………見つけたぞ…………。硝吸鎌…………」
人間が着ないような漆黒のローブ。異様に透き通った肌に埋まるのは、アメジスト色の瞳。額には玉のような汗が滲んでいた。
何となく本能が告げる。“此奴は人間でない”と。
「もう大丈夫だ。今まで……悪かった……。お前の居るべき所に帰ろう」
そう言うと私を抱え、異空に消えた。
硝吸鎌が異空に連れて行かれた話はまた別の物語で。
─終─
要智さんに合うまでのほんの一部の記憶。
この頃から…………極度の残酷さが…………。゜(゜´Д`゜)゜。
大丈夫、紅葉に会えるよ……。幸せになれるよ……
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