表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王権を失った世界1位は、レベル1で贖罪する  作者: マコPON


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話 黒猫と七人のパーティ

第6話です。


黒斗は居場所を失ったまま、灯火の街リュミエールを出ようとします。


そこで出会うのは、少し変わった六人の初心者パーティ。


強くはない。

効率も悪い。


それでも――


黒斗が今まで出会ったことのない人たちでした。


今回は「小さなクエスト」と「七人の始まり」の話です。


ゆっくり読んでもらえると嬉しいです

朝の空気は冷たかった。


初心者の街リュミエール。


昨夜の賑わいが嘘のように、通りはまだ静かだった。


黒斗は街の外れの石段に座っていた。


一晩、ほとんど眠っていない。


頭の中に残っているのは、昨夜の光景だった。


ギルドの視線。


怒り。


恐怖。


そして――


「ありがとう」


自分の口から出た言葉。


あれは、本当に自分が言ったのか。


黒斗はゆっくり息を吐く。


視界の端に小さな表示が浮かぶ。


空腹値 61%


ゆっくりと減っている。


だが、気にするほどではない。


それよりも胸の奥の重さの方が大きかった。


黒斗は立ち上がる。


街の外へ向かうつもりだった。


この街にいる理由はない。


装備不可。


武器使用不可。


攻撃ダメージ0。


戦えないプレイヤーがここにいても意味はない。


その時。


背後から声がした。


「少し、いいですか?」


振り返る。


六人のパーティだった。


男三人。


女三人。


初心者装備だが、雰囲気が落ち着いている。


先頭の女性が一歩前へ出た。


長い髪を後ろでまとめている。


「昨日、アルカディアにいましたよね」


黒斗は答えない。


女性は軽く頭を下げた。


「私はアリシア」


「プリーストです」


回復専門の支援職。


隣の男が腕を組む。


体格のいい男。


「ケイン」


「ガーディアン」


盾役の防御職だ。


丸眼鏡の男が手を上げる。


「マルクです」


「エンチャンター」


味方に強化魔法をかける支援職。


大柄な男が笑う。


「ダリオ」


「クラフター」


アイテム生成や修理が得意な生産職だ。


小柄な女性が静かに頭を下げる。


「エリナです」


「バード」


補助魔法と回復を扱う支援職。


そして最後。


少し離れて立っている少年。


短い髪。


鋭い目。


「レイ」


それだけ言った。


少し間を置き。


「ストライカー」


近接火力職。


このパーティ唯一の純アタッカーだった。


黒斗は一瞬で理解する。


支援過多。


火力不足。


典型的な初心者構成。


ダリオが苦笑する。


「見て分かると思うけどさ」


「俺ら火力が足りないんだよ」


マルクが肩をすくめる。


「敵が全然倒せなくて」


レイが言った。


「弱いパーティ」


空気が止まる。


だがアリシアは微笑む。


「でもレイ君は残ってくれてます」


レイは顔を逸らす。


「別に」


「この人たち」


少し間。


「放っておくと危ないから」


エリナが小さく笑う。


「優しいですね」


「違う」


レイはすぐ否定する。


黒斗はそのやり取りを黙って見ていた。


居心地が悪い。


この空気。


昔の自分が一番嫌っていた種類のものだ。


レイが黒斗を見る。


「で」


「入るの?」


突然の言葉だった。


黒斗は少し考える。


行く場所はない。


そしてこのパーティは――


弱い。


昔の自分なら絶対に選ばない。


だが。


黒斗は言った。


「……いい」


アリシアが微笑む。


「ありがとうございます」


こうして。


七人パーティが出来た。



最初のクエストは単純だった。


迷子の黒猫を探す。


初心者クエスト。


レイがため息をつく。


「マジかよ」


「これチュートリアルだろ」


ダリオが笑う。


「まあまあ」


マルクが言う。


「手分けしましょう」


「黒斗さんと一人ずつ」


黒斗は理解した。


五人は、順番に黒斗と歩いている。


偶然ではない。


話しているのは一人だけだが、

残りの四人は少し離れた場所から様子を見ている。


何も言わない。

だが視線は外さない。


黒斗は思った。


(……試されてるのか)



最初に一緒に探したのはケインだった。


街の裏路地。


木箱の影を覗く。


ケインが言った。


「昨日のこと」


黒斗は黙る。


ケインは続ける。


「何をしたか知らない」


「でも」


少し間。


「今どうするかの方が大事だ」


黒斗は言う。


「俺は」


少し迷う。


だが。


言った。


「プレイヤーを潰してきた」


ケインは黙って聞く。


「ギルドも」


「何個も」


ケインは短く言う。


「そうか」


それだけだった。



次はマルク。


マルクは言う。


「人って」


「失敗する生き物なんですよ」


黒斗は黙る。


「大事なのは」


「そこからどうするか」


黒斗は小さく言う。


「……変われると思うか」


マルクは即答した。


「思います」


迷いはなかった。



三人目。


ダリオ。


井戸の近く。


ダリオは笑う。


「難しいことは分からん」


「でもさ」


「謝れる奴は嫌いじゃない」


黒斗は言う。


「許されないこともある」


ダリオは頷く。


「あるな」


そして言う。


「でも生きるしかない」



四人目。


エリナ。


花壇の近く。


エリナは優しい声で言う。


「人って」


「やり直せると思うんです」


黒斗は黙る。


「時間はかかりますけど」


「きっと」



最後。


アリシア。


静かな裏庭。


アリシアは言う。


「全部聞きました」


黒斗は言う。


「隠す意味がない」


アリシアは微笑む。


「私たちは」


「過去で人を決めません」


「見るのは――今です」


黒斗は黙る。


胸の奥がわずかに揺れる。



その時。


声が響く。


「いた」


レイだった。


黒い猫を抱えている。


暴れる黒猫。


レイが言う。


「クエスト終わり」


ダリオが笑う。


「早いな」


レイは黒斗を見る。


「言っとくけど」


「俺は信用してない」


黒斗は何も言わない。


レイは続けた。


「この人たち」


後ろを見る。


「全員受け入れるんだよ」


小さく舌打ち。


「甘い」


沈黙。


アリシアは微笑む。


「それでいいんです」


レイは呆れる。


「ほんと」


空を見上げる。


「強くなれないパーティだよ」


誰も怒らない。


黒斗はその光景を見ていた。


理解できない。


だが否定もしない。


胸の奥で何かが動く。


黒斗は小さく呟く。


「……変われるのか」


誰にも聞こえない声だった。



灯火の街リュミエール。


黒猫を探すだけの小さなクエスト。


だが。


その日。


黒斗は、奇妙な感覚を覚えていた。


理解はできない。


だが――


否定もできなかった。


弱いはずのパーティ。


それでも。


その背中は、不思議と前に進んでいた。


黒斗は黙って歩く。


灯火の街リュミエールの朝の中を。


七人の足音が、静かに重なっていく。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は黒斗が新しいパーティと出会う回でした。


この六人は、黒斗がこれまで関わってきたプレイヤーとはまったく違うタイプの人間たちです。

そしてその空気は、黒斗にとって決して居心地のいいものではありません。


それでも彼らと過ごす時間の中で、少しずつ黒斗の中に変化が生まれていきます。


このパーティが黒斗に何を与えるのか。

そして黒斗が彼らに何をもたらすのか。


その関係は、ここからゆっくりと動いていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ