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王権を失った世界1位は、レベル1で贖罪する  作者: マコPON


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4/10

第4話 荒野を越える者

第4話


強者から最弱へ落ちた黒斗が、初めて「守る側」に立つ回になりました。


この物語は、単純な転落や制裁の話ではありません。

痛みを通して、何を失い、何を拾い直せるのか。


グレイヴン荒原は、ただの中級エリアではなく、

黒斗の過去そのものでもあります。


その境界を越える意味を、少しでも感じてもらえたなら幸いです。


どうぞ、最後までお付き合いください。

灰色の風が吹き荒れる。


中級エリア《グレイヴン荒原》。


乾いた地面。

岩が突き出し、視界は広い。

隠れる場所はほとんどない。


推奨レベル30帯。


ここは本来、黒斗が狩る側だった場所だ。


出現モンスターは四種。


クロウビースト。

群れで行動する中型タイプ。前脚のなぎ払いと噛みつきが主軸。


サンドランナー。

直線加速特化タイプ。視認された時点で逃走は困難。


ロックバジリスク。

硬い外皮を持つ低速タイプ。噛まれれば致命傷。


ハーピィ。

上空旋回から急降下する飛行タイプ。


すべて知っている。


かつて狩っていたからだ。


蹂躙していたからだ。



空腹値:41%


腹の奥が締めつけられる。


止まっても減る。

隠れても減る。

死んでも減る。



低い唸り。


振り向く。


クロウビースト三体。


かつては一撃。


今は違う。


逃げるしかない。


走る。


レベル1の脚は短い。


岩につまずく。


背後で地面が裂ける音。


衝撃。


肩が裂ける。


「ああッ!」


痛覚100%。


神経を直接ひっかく感覚。


倒れる。


牙。


視界が赤く染まる。


――死。



灰色の空。


《リスポーン地点:グレイヴン荒原》


戻る。


またここだ。


空腹値:46%


減っている。



サンドランナー。


一直線に迫る。


避けられない。


腹部に衝撃。


息が抜ける。


噛みつき。


絶叫。


――死。



ロックバジリスク。


遅い。


だが逃げ切れない。


足を噛まれる。


骨が軋む。


「やめろ……!」


意味はない。


――死。



空腹値:59%


死ぬ。

戻る。

死ぬ。

戻る。


終わらない。



岩陰に座り込む。


「……もういいだろ」


世界一位だった。


誰も逆らえなかった。


今は餌。


痛い。


怖い。


逃げたい。


空腹値:66%


立たなければ減る。


動かなければ終わる。



また裂かれる。


痛い。


だが、最初ほど暴れない。


拒絶しない。


これは罰だ。


自分が与えてきたものだ。


歯を食いしばる。


逃げる。


死ぬ。


戻る。


空腹値:74%


痛みは消えない。


だが、受け入れ始めている。



遠くに境界が見える。


中級と初級の境界は明確な壁ではない。


地面の色がゆるやかに変わるだけだ。


知らなければ、数歩踏み越えてしまう。


灰色から淡い緑へ。


初心者エリアは近い。


空腹値:92%


その時。


前方に小さな影。


革装備。


レベル一桁の初心者。


地面に落ちた採取素材を追い、境界を越えてしまったのだろう。


本人は気づいていない。


背後で唸り声。


クロウビースト。


さらに遠くで地響き。


一回り大きな個体。


傷だらけの体躯。


片目が潰れている。


グレイヴン・アルファ。


圧が違う。


初心者が振り向く。


足がもつれる。


転倒。


距離は数歩。


助ければ死ぬ。


見捨てれば、自分は境界へ走れる。


空腹値:95%


過去の声が重なる。


〈助けてくれ〉


あの時、自分は笑った。


身体が動く。


「立て!!」


腕を掴み、引き上げる。


その瞬間。


グレイヴン・アルファが跳躍。


牙が肩へ迫る。


直撃するはずだった。


だが、わずかに軌道がずれる。


深く入らない。


それでも激痛。


「あああああッ!!」


骨に響く。


初心者が立つ。


「す、すみません!」


「走れ!!」


守るための声。


二撃目。


横腹を裂かれる。


血が飛ぶ。


空腹値:97%


黒斗は初心者を境界側へ突き飛ばす。


「行け!!」


初心者は走る。


境界を越える。


振り返る。


目が合う。


安堵。


だが、戻らない。


怖い。


それでいい。


三体のクロウビーストが迫る。


黒斗は立つ。


腕を広げる。


塞ぐ。


牙が腕を裂く。


脚を抉る。


倒れる。


本来なら終わっていた。


だが、クロウビースト同士がわずかに接触し、進路がずれる。


ほんの数秒。


生まれた隙。


黒斗は地面を掴む。


引きずる。


境界まで一歩。


グレイヴン・アルファが再び跳ぶ。


牙が迫る。


境界線を越える。


アルファの牙が見えない壁に弾かれる。


初級エリア侵入制限。


群れは荒原へ戻る。



黒斗は草地へ転がる。


空腹値:100%


行動不能。


身体が動かない。


冷える。


喉が震える。


「……誰か」


かすれ声。


「助けてくれ……」


命令ではない。


懇願。


「助けて……」


意識が沈む。



足音。


「え、人倒れてる!」


三人組。


革装備。


始めたばかりの初心者パーティ。


黒斗を知らない。


「HP減ってる!」


「パンある、早く!」


水と食料が口元に押し当てられる。


黒斗は震える手で掴む。


噛む。


飲み込む。


空腹値:100 → 83 → 62


身体に熱が戻る。


指先が、わずかに動く。


「無理しないでくださいね」


その言葉が、胸に刺さる。


喉がひくりと動く。


何かを言おうとする。


声帯が震える。


だが、音にならない。


唇だけが、わずかに動く。


……。


言えない。


視界が滲む。


黒斗は小さく頷いた。


それだけだった。


空は青い。


荒原は遠い。


世界一位は、境界で死んだ。


ここにいるのは。


守り、懇願し、救われた――


まだ感謝を言えない、レベル1。


《観測継続》

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


今回は戦闘描写と内面描写の比重を大きくしました。

レベル1という絶対的な弱さの中で、それでも選んだ行動に意味があるのかどうか。


黒斗はまだ変わりきってはいません。

それでも、確実に何かが動き始めています。


痛みは消えません。

過去も消えません。

けれど、それでも前に進めるのか。


引き続き見守っていただければ嬉しいです。

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