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王権を失った世界1位は、レベル1で贖罪する  作者: マコPON


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3/10

第3話 裁定

ここまで読んでくださっている皆様、ありがとうございます。


第3話では、主人公・黒斗が“世界一位”から“レベル1”へと堕ちます。


この物語は、単なる追放や復讐譚ではありません。

また、デスゲームでもありません。


これは、

「強さとは何か」

「勝利は免罪符になり得るのか」

という問いに対する物語です。


本話では、AIによる裁定と痛覚テストが描かれます。

やや痛みの描写がありますが、物語上必要な描写としてご理解いただければ幸いです。


彼が辿り着く先は、救済か、それとも更なる絶望か。


引き続きお楽しみください。

ログイン。


視界に広がったのは、見慣れたギルドホールではなかった。


無色の空間。


上下も奥行きも曖昧な白。


音はない。


温度もない。


ただ文字だけが浮かんでいる。



《観測対象:黒斗》

《逸脱率:82%》

《裁定執行フェーズ 移行》


黒斗は眉をひそめた。


「なんの演出だ」


UIを閉じる。


反応しない。



《AEGIS SYSTEM 最終解析》


・Interference権限 過剰行使

・Protection使用率 極小

・弱者排除傾向 顕著

・恐怖誘発的公開戦闘 多数確認


《目的逸脱 判定確定》


「勝っただけだ。強い方が支配する。それがこの世界だろ」


《否定》


即答。


《本システムの目的は“世界の調律”である》


《支配の正当化は目的外》


空間がわずかに暗転する。



胸元の盾紋章が砕ける。


光が散る。


《AEGIS SYSTEM 使用権限 剥奪》


数値が書き換わる。


Lv99 → Lv1

攻撃力:0


《経験値取得機能 無効》

《全武器・防具 装備不可》

《全スキル 使用停止》


スキル一覧が灰色に沈む。


パッシブも消灯。


積み上げた全てが、音もなく失われる。


「……ふざけるな」


《痛覚再現率:100%》


喉が詰まる。


《ログアウト:倫理修復完了まで不可》



腹の奥に、微かな軋み。


《空腹パラメータ 有効化》


空腹値:18%


《時間経過により自然減少》

《安全地帯滞在中も減少》

《極限値到達で行動不能》


黒斗の表情が歪む。


止まっても減る。


隠れても減る。


《守護行動時のみ回復判定発生》

《詳細条件:非公開》


救済条件は明かされない。



《初期リスポーン地点:中級エリア“グレイヴン荒原”固定》


灰色の荒野が映し出される。


中級帯モンスターの徘徊区域。


レベル1では生存困難。


「最悪だな……」


《安全地帯到達時、リスポーン地点変更可能》


辿り着ければ、だ。



空間が凍る。


《痛覚・恐怖耐性検証 実行》


黒い裂け目が走る。


そこから狼型擬似モンスターが生成される。


《致死設定:OFF》


黒斗は知っている。


右フェイント、左噛み。


百回以上倒した型。


だが今は違う。


レベル1。


スキルなし。


武器なし。


反応が遅れる。


牙が肩に食い込む。



裂ける。


削られる。


神経が直接引き剥がされる感覚。


熱ではない。


“壊されている情報”が脳に叩き込まれる。


呼吸が止まる。


「あ……っ」


血の匂い。


鉄の味。


現実と同じ。



フラッシュバック


〈やめてくれ〉

〈初心者なんだ〉


チャットログが重なる。


復活地点。


囲まれた初心者。


黒斗は剣を振るった。


「泣き言で強さは変わらない」


観戦数が増える。


拍手。


笑い。


今。


脚を噛まれる。


骨へ振動が走る。


絶叫。


「やめろ……!」



公開アリーナ中央。


震えるギルドマスター。


「俺たちは遊びじゃない。ここが唯一の居場所なんだ」


黒斗は答えた。


「居場所は奪われるためにある」


一閃。


沈黙。


歓声。


今。


HPは6。


涙が滲む。


無意識だった。



狼が跳ぶ。


避けられない。


腕で庇う。


砕ける感覚。


HP 1。


「やめてくれぇ!!」


それは、かつて無視した言葉。



《検証完了》


狼が消える。


痛みが止まる。


だが震えは止まらない。



擬似帰還


白い光が包む。


《通常世界へ一時帰還します》


終わる。


助かる。


涙が溢れる。


だが光は停止する。



《現実世界更生可能性:低》


《想定制裁:外的制裁のみ》


《倫理理解取得:未達成》


《内的変容発生確率:極小》


0.02秒。


《本世界内更生が最適解》


光が消える。


地面へ落ちる。



宣告


《黒斗》


《あなたは恐怖を娯楽化した》


《他者視点 未取得》


《取得を強制する》


《守護行動時のみ回復判定発生》



再起動


世界が再構築される。


灰色の空。


荒れた大地。


中級エリア《グレイヴン荒原》。


遠くで魔物の影が動く。


Lv1

攻撃力0

空腹値24%


腹が鳴る。


逃げられない。


戦えない。


止まれない。


世界一位は死んだ。


残ったのは。


痛みを知った、最弱。

第3話「裁定」でした。


黒斗は“外的制裁”ではなく、“内的理解”を求められる世界へ閉じ込められました。


罰を受けることと、本当に理解することは同じではない。


AIの判断は冷酷ですが、そこに怒りも感情もありません。ただ「最適解」を選んだだけです。


ここから黒斗は、奪われた力の代わりに、何を得るのか。それとも、何も得られないのか。


物語はまだ始まったばかりです。


もし続きが気になりましたら、応援していただけると励みになります。


次話もよろしくお願いいたします。

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