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王権を失った世界1位は、レベル1で贖罪する  作者: マコPON


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2/10

第2話 AEGIS SYSTEM

この物語の舞台は、世界同時接続型フルダイブオンラインゲーム《REGALIA》。

剣と魔法、ギルド戦、スキル――だがこの世界で最も価値があるのは、強さの数値化と序列だった。


頂点に立つ者だけが手にする《AEGIS SYSTEM》。

それは本来、弱者を守り、世界を調律する守護の力。

しかし、黒斗――元世界一位の男にとって、それは支配の道具でしかなかった。


勝てば認められる。

負ければ叩かれる。

どちらでもいい。


だが、この物語は、最強から最弱へ堕ちた男が、

「守る」とは何かを知り、仲間と共に成長していく物語でもある。


第2話では、黒斗が王権を初めて自由に使い、その力の絶対性と歪みを知る。

権能の快感、戦略の優越、そして――AIによる観測の冷徹さが、彼を心理的に追い詰める。

勝者の喜びと、王であることの孤独。

その狭間に立つ黒斗の姿を、じっくりと見届けてほしい。

世界一位――その称号は、ただの飾りではない。


RG――《REGALIA》。

世界同時接続型フルダイブオンライン。剣と魔法、スキルとギルド戦。だが、本質は戦闘ではなく、序列だった。勝敗も、順位も、言い訳も、すべて公開される。


その頂点に立つ者が得る力――《AEGIS SYSTEM》

Interference(干渉)

Protection(保護)

Purge(掃討)


王権。守護の力。だが黒斗には違った。


「鍵だ……」


盾を象った淡い光の紋章。守護の象徴。それは世界を開ける鍵にしか見えなかった。


黒斗は肩をすくめ、淡々と権能ウィンドウを開く。

視界の中央で、紋章が微かに輝く。

「面倒くせぇ……」


彼は説明文を最後まで読まなかった。理解する必要はない。必要なのは結果だけだ。



まず黒斗が選んだのは干渉――Interference。

対立ギルドの主力プレイヤーに、ログイン遅延を発生させる。

視界の中で、相手の接続バーが止まる。

チャット欄がざわつく。


〈王権使っただろ〉

〈卑怯だ〉

〈いや、それも戦術か〉


「便利だな」

黒斗は小さく笑う。淡々と。

相手の反応は数字だけで返される。

彼にとって、それだけで十分だった。


干渉をかけた瞬間、相手の思考もリズムも狂う。

瞬時に、行動選択が一拍遅れる。

これだけで勝敗が決する。



次は保護――Protection。

傭兵の一人が瀕死になる。

黒斗は淡い光を放つ。

防御力上昇、状態異常無効。


本来は弱者を守るための権能。だが守られたのは、金で雇った駒。

「正しいか? どうでもいい」

彼は思った。

守られようが守られまいが、勝てばすべてが肯定される。


傭兵は咄嗟に盾を構え、前線で耐える。

その瞬間、黒斗は分析する。

「ここをこうすれば、さらに効率が上がる」

次の行動を、完璧に読み取った。



そして掃討――Purge。

規約違反の軽微なログを検出し、敵の能力を制限する。

移動速度低下、スキルクールタイム延長。


「掃除は必要だ」

黒斗は呟く。

この権能が最も面白い。

支配と効率。倫理の外で世界を動かす感覚。


傭兵たちの動きも、相手の行動も、すべて数字で確認できる。

それで十分だ。



その日から、黒斗の勝率はさらに上がった。

Interferenceで出鼻を挫き、Protectionで味方を守り、Purgeで敵を削る。

完璧な支配。観戦者数は過去最高。アンチも増える。罵倒も増える。

だが、無関心よりはましだ。少なくとも世界は、彼を見ている。


現実。

部屋は静かだ。

父からの振込通知。メッセージはない。

既読も未読もない。ただの数字。

しかし、RGでは自分が中心。視線が注がれ、名前が呼ばれ、存在が認識される。

それだけで、生きていると感じられる。



だが夜になると、AIの観測が始まる。


《AEGIS SYSTEM 使用履歴解析》

Interference 使用率 64%

Protection 使用率 4%

Purge 使用率 32%


《本来目的との適合率:21%》


「数字遊びか……」

黒斗は鼻で笑う。

《本権限は調律維持を目的とする》

《弱者保護の優先度:最上位》


画面を閉じようとしても閉じない。

《Protection使用対象:傭兵》

《弱者保護対象との乖離:大》


胸の奥がわずかにざわつくが、すぐに無視する。

「勝てば世界は回る」


0.09秒の一瞬、AIが静止。

《逸脱傾向 増加》

《倫理基準との差異 拡大》

黒斗の苛立ちは微細な震えとして、言葉に現れる。

「うるせぇな」



数日後、黒斗は新興ギルドへ戦を仕掛ける。

初心者も多い。だが関係ない。序列を守る。それが王の役目だ。

Interferenceで出鼻を挫き、Purgeで弱体化。

公開アリーナへ転送。

泣き声のようなチャットが流れる。


〈やめてくれ〉

〈まだ始めたばかりだ〉


「ここは競争だ」

剣が振るわれる。

配信視聴数は過去最高。スポンサー通知が鳴る。存在が証明される。黒斗は満足する。



盾の紋章を見つめながら、黒斗は思う。

「王は、俺だ」


だが視界の端に微かな表示。

《観測対象 自己中心傾向 上昇》


気づかない。

現実は無音。無関心。誰も見ていない。

だがRGでは違った。自分が中心だと信じていた。



暗闇。

《逸脱率:82%》

《裁定執行 条件達成》

0.02秒の沈黙。

《次回接続時、調律措置実行》


守護の盾は、やがて刃へ変わる。

王権――《AEGIS SYSTEM》は、単なる力ではない。

世界を動かす権限であり、同時に人間の行動と倫理を測る尺度でもある。


黒斗はまだ、力の使い方を理解していない。

勝利の快感、支配の優越、世界を数字で動かす感覚に酔いしれる。

だがAIの観測は容赦ない。

逸脱率、倫理基準との差異、弱者保護の乖離――すべて記録され、次の裁定へと繋がる。


強者としての栄光と、最弱へ堕ちる可能性。

その狭間で、黒斗は一歩も退けない。

勝利だけが価値であり、しかし守護の力は彼を静かに試す。

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