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王権を失った世界1位は、レベル1で贖罪する  作者: マコPON


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11/11

第11話 十人の討伐隊

第11話です。


戦いの形が変わります。


人数が増え、

連携が噛み合い、

そして相手も変わる。


ここからが本番です。

鉄牙ボアを倒した帰り道、リュミエールへ続く森の道は、夕日で赤く染まっていた。


誰も大きな声では話さない。


戦闘の熱がまだ身体に残っている。


土の匂い。

血の匂い。

踏み荒らされた地面。

沈みかけた陽の色。


その中を、七人は静かに歩いていた。


先頭はアリシア。


その少し後ろにケインとダリオ。

中央にマルクとエリナ。

少し距離を取ってレイ。

最後尾に黒斗。


誰も欠けていない。


それだけで、本来は十分だった。


だが、レイの中では終わっていなかった。


前に出すぎたこと。

吹き飛ばされたこと。

黒斗に抱き止められたこと。

そして――


貫かれたはずの腕が、次の瞬間には戻っていたこと。


理解できない。


整理できない。


言葉にできない。


視線が後ろへ向く。


黒斗は変わらない。


フードを深く被り、一定の歩幅で歩いている。


何も言わない。


何も見せない。


レイは口を開きかける。


止める。


違う。


今じゃない。


何も言えないまま、街へ戻った。


リュミエールの門をくぐる。


空気が変わる。


石畳。

灯火。

人の声。


戦闘の緊張が、少しだけほどける。


ギルドで報酬を受け取り、七人はそのまま酒場へ入る。


席につく。


しばらく誰も話さない。


マルクが口を開いた。


「今回の戦闘ですが」


丸眼鏡を押し上げる。


「明確に安定していました」


ケインが頷く。


「崩れなかったな」


ダリオも続く。


「無理に押さなかったのが効いてる」


マルクは黒斗を見る。


「戦術ですね」


視線が集まる。


黒斗は短く言った。


「形を崩さなかっただけだ」


マルクは首を振る。


「違います」


「順序がありました」


少し間を置く。


「最初は受ける」


「崩さない」


「動きを見る」


「そこから削る」


「最後に落とす」


アリシアが頷く。


「はい」


全員を見る。


「最初から倒しにいかないことで、安定しました」


黒斗を見る。


一瞬。


黒斗がわずかに頷く。


それで確定する。


アリシアは続ける。


「最初は防御を優先します」


「形を維持すること」


「そこから崩れを見て、攻撃へ移る」


マルクが補足する。


「段階的な運用ですね」


ケインが言う。


「受けて、崩して、仕留める」


ダリオが笑う。


「分かりやすいな」


黒斗は何も言わない。


否定もしない。


アリシアがまとめる。


「この形でいきます」


声は静かだが、決定だった。


レイは黙って聞いている。


だが理解している。


自分の動きが、その中に組み込まれていることを。


翌朝。


ギルド掲示板の前は、人が多かった。


新しい依頼が貼られている。


ダリオが前に出る。


「これだ」


マルクが読む。


「初級ボス討伐……グレイブウルフ」


ケインが腕を組む。


「ボスか」


マルクが続ける。


「推奨人数、十名」


エリナが小さく言う。


「足りません……」


「足りない」


黒斗が言った。


全員が見る。


「最低でも十人必要だ」


その時。


後ろから声がした。


「だったら貸してやるよ」


振り向く。


マサヤ。


その後ろに三人。


ガルド。

ベルク。

ロック。


前衛。


それだけで分かる。


ケインが言う。


「マサヤか」


マサヤは黒斗を見る。


「鉄牙ボア、やったらしいな」


ダリオが笑う。


「まぁな」


マサヤは続ける。


「前衛三人出す」


マルクが問う。


「条件は?」


マサヤは短く言う。


「俺も行く」


沈黙。


ケインが言う。


「理由は」


マサヤは黒斗から目を離さない。


「確かめる」


「何を」


「今の動きだ」


一拍。


「前と同じか」


わずかに目を細める。


「それとも違うか」


空気が張る。


黒斗は何も言わない。


やがて短く言う。


「好きにしろ」


マサヤがわずかに笑う。


「だろうな」


アリシアが一歩前へ出る。


全員を見る。


人数。


戦力。


関係。


一瞬で整理する。


そして言った。


「お願いします」


迷いはない。


マサヤは頷く。


「決まりだ」


十人。


討伐隊が成立する。


黒斗が低く言う。


「終わった後が一番隙ができる」


ケインが言う。


「何の話だ」


黒斗は一瞬だけ間を置く。


「……その時に来る奴がいる」


──────


森の奥。


空気が変わる。


静かすぎる。


鳥の気配が消えている。


マルクが小さく言った。


「……縄張りです」


ケインが盾を持ち直す。


「出るな」


アリシアが前を見る。


一瞬だけ黒斗を見る。


黒斗は短く頷く。


それだけで伝わる。


アリシアが言う。


「防御陣形」


全員が動く。


迷いはない。


ケインが前へ。


その後ろにレイとガルド。


左右にベルクとロック。


中央にマルクとエリナ。


後方にダリオ。


最後尾に黒斗。


十人。


即席。


それでも形は崩れない。


草が揺れる。


影が走る。


次の瞬間。


現れた。


グレイブウルフ。


三体。


低い姿勢。


無音の加速。


ガルドが叫ぶ。


「来る!」


突進。


ケインが盾を出す。


「止める!」


衝突。


重い。


だが止められる。


ベルクが横へ回る。


ロックが踏み込む。


だが。


速い。


ウルフが一瞬で軌道を変える。


ベルクの剣が空を切る。


ロックの一撃も外れる。


次の瞬間。


ガルドの肩に牙がかかる。


「ぐっ……!」


押される。


マサヤが声を飛ばす。


「崩れるな!」


だが、まだ噛み合っていない。


黒斗が言う。


「まだ攻めるな」


アリシアが即座に拾う。


「維持してください!」


声が通る。


ケインが盾を構え直す。


「来い!」


受ける。


レイが動きかける。


止まる。


「まだだ」


黒斗の声が残る。


マルクが前を見据える。


指をかざす。


「マナリード」


淡い光が広がる。


視界が揺らぐ。


ウルフの動きが、わずかに遅れて見えた。


マルクが言う。


「行動に周期があります」


エリナが息を整える。


「小癒の歌」


優しい旋律が流れる。


削られた傷が、静かに戻っていく。


防御陣形が完成する。


ウルフが跳ぶ。


ケインが受ける。


ベルクが今度は外さない。


斬る。


浅い。


ロックが続く。


当たる。


だが、足りない。


ガルドが体勢を戻す。


レイが踏み込む。


速い。


一体の側面へ回る。


斬る。


当たる。


だが浅い。


ウルフが即座に距離を取る。


レイの目が揺れる。


「浅い……」


黒斗が言う。


「深追いするな」


レイが止まる。


数十秒。


崩れない。


やがて。


黒斗が言う。


「見えた」


アリシアが視線を向ける。


黒斗は短く言う。


「二拍で来る」


マルクが頷く。


「跳躍、噛みつき、離脱……ですね」


黒斗は続ける。


「二撃目が本命だ」


ケインが笑う。


「分かりやすいな」


「だが速い」


黒斗。


アリシアが頷く。


黒斗を見る。


黒斗がわずかに頷く。


決定。


「攻撃陣形」


空気が変わる。


ケインが一歩前へ出る。


わざと隙を見せる。


ウルフが食いつく。


跳ぶ。


「今」


黒斗の声。


ケインが盾を振る。


受けるのではなく。


「反衝盾」


衝撃を返す。


体勢が崩れる。


レイが踏み込む。


今度は深い。


斬る。


血が飛ぶ。


一体、倒れる。


残り二体。


ベルクとロックが動く。


今度は外さない。


連携が合う。


ガルドが正面を押さえる。


マサヤが後ろから指示を飛ばす。


「崩すな!」


ダリオが踏み込む。


ハンマーを振り上げる。


「大鉄槌」


振り下ろす。


重い一撃が叩き込まれる。


ウルフの動きが止まる。


黒斗が言う。


「左」


レイが即座に動く。


斬る。


二体目、倒れる。


最後の一体。


逃げる。


「追うな」


黒斗。


全員が止まる。


数秒。


静寂。


ウルフは消えた。


戦闘終了。


ダリオが息を吐く。


「……今のは分かる」


ケインが笑う。


「見てから殺す、だな」


マルクが言う。


「完全に制御されています」


ガルドが呟く。


「なんだ今の……」


ベルクも言う。


「押されてたのに」


ロックが黒斗を見る。


「途中で変わった」


マサヤは黙っている。


ただ黒斗を見る。


黒斗は言う。


「次が本番だ」


マサヤが一歩近づく。


低く言う。


「見えてるのか」


黒斗は短く答える。


「揃ってる」


「何がだ」


黒斗は前を見る。


「勝つ形だ」


それだけだった。


マサヤはそれ以上聞かない。


分かってしまったからだ。


この男は――


すでに、戦いを終えている。


森の奥。


空気がさらに重くなる。


次が来る。


グレイブウルフ。


本体。


十人が、静かに進んだ


気配が重く沈む。


森の奥から現れた。


グレイブウルフ。


先ほどの個体とは違う。


一段、圧が強い。


低く、静かに、殺意だけが研がれている。


マルクが息を整えながら言う。


「……本体です」


ケインが盾を上げる。


「来るぞ」


アリシアが一歩前に出る。


全員を見る。


「防御陣形――維持」


声は柔らかい。


だが、揺れない。


「位置を崩さないでください」


全員が動く。


黒斗は後方で観る。


ウルフが消える。


速い。


次の瞬間、ガルドの横へ出る。


牙。


ケインが割り込む。


盾で受ける。


衝撃。


重い。


だが受け止めず、流す。


「速ぇな……!」


マサヤが言う。


「囲め!」


前衛三人が動く。


だが合わない。


ウルフが抜ける。


ベルクの背後。


ロックが振り向く。


間に合わない。


黒斗が言う。


「右に来る」


ロックが反応する。


牙が空を切る。


アリシアが即座に言う。


「そのまま維持!」


「崩さないでください!」


陣形が繋がる。


数秒。


黒斗の視線が止まる。


アリシアが黒斗を見る。


黒斗が短く言う。


「三手先で来る」


マルクが頷く。


「対応できます」


アリシアは迷わない。


「攻撃に移ります」


黒斗を見る。


黒斗が頷く。


それで決定だった。


空気が変わる。


ケインが一歩前へ出る。


わざと隙を見せる。


ウルフが食いつく。


跳ぶ。


ケインが盾で流す。


体勢が崩れる。


「今!」


ダリオが踏み込む。


「大鉄槌!」


重い一撃が頭部へ叩き込まれる。


巨体が揺れる。


ガルド、ベルク、ロックが続く。


連撃。


逃がさない。


黒斗が言う。


「押せ」


囲む。


逃がさない。


レイが踏み込む。


今度は迷いがない。


斬る。


深い。


グレイブウルフが崩れ落ちた。



静寂。


誰もすぐに動けない。


呼吸が荒い。


膝に手をつく者もいる。


ダリオがその場に座り込む。


「……はぁ……キツかったな……」


ケインが肩で息をする。


「重かった……完全にボスだな」


マルクが息を整えながら言う。


「連携が崩れなかったのが勝因です……」


エリナも小さく息を吐く。


「……怖かったです……」


アリシアは一度、全員を見る。


無事を確認する。


そして、静かに息を吐いた。


「全員、立てますね」


レイはその場に立ったまま、まだウルフを見ていた。


勝った。


だが、余裕はなかった。


その時だった。


空気が変わる。


黒斗が言う。


「……来るぞ」


全員の視線が動く。


森の奥。


人影。


五人。


武器を構えている。


ダリオが舌打ちする。


「マジかよ……」


ケインが低く言う。


「最悪だな」


エリナの手がわずかに震える。


レイは動けない。


人との戦い。


初めてだった。


前に出た男が笑う。


「いいもん落としてるな」


視線はボスの死体。


素材。


マサヤが一歩前に出る。


「……来たか」


敵が踏み込む。


速い。


「来る!」


黒斗が短く言う。


「右、二枚」


ケインが動く。


盾で受ける。


ガルド、ベルクが応戦。


衝突。


押し合い。


ロックが前に出る。


正面で受ける。


弾かれる。


地面を転がる。


「ぐっ……!」


エリナがすぐに歌う。


「小癒の歌」


傷が戻る。


マルクが続く。


「マナリード」


視界が揺れる。


だが、人の動きは読めない。


その瞬間。


一人が抜ける。


一直線にレイへ。


レイが踏み込もうとする。


「出るな」


黒斗の声。


強い。


レイの足が止まる。


その一瞬。


ロックが前に出る。


受ける。


衝撃。


踏みとどまる。


レイは動かない。


理解する。


今出ていたら。


同じだった。


黒斗を見る。


まだ届かない。


その時。


マサヤが手を上げる。


魔力が広がる。


一切の迷いなく言い切る。


「プロヴィデンス」


光が弾けた。


一瞬で全員を包む。


傷が消える。


疲労が抜ける。


体が軽い。


防御が上がる。


速度が上がる。


ケインが目を見開く。


「一瞬で……!」


マルクが低く言う。


「全体強化……この規模で……」


レイが拳を握る。


動ける。


さっきまでとは違う。


戦える。


マサヤが前を見たまま言う。


「……ここからだ」


空気が変わる。


戦いは、これからだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


戦い方は変わり始めました。


強さだけではない形で、

少しずつ噛み合い始めています。


それでも、

まだ足りないものは残っています。


その先がどうなるのか、

引き続き見届けていただけたら嬉しいです。

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