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王権を失った世界1位は、レベル1で贖罪する  作者: マコPON


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第10話 リベンジ

黒斗がパーティに加わってから、戦い方は少しずつ変わり始めていた。


強さだけでは進めない戦い。

だが、知識と連携があれば道は開ける。


装備の強化。

新しいスキル。

そして、再び挑む鉄牙ボア。


七人のパーティは、今度こそ本当の意味で「戦う形」を手に入れようとしていた。

リュミエールの工房に、重い鉄の音が響いていた。


カン。

カン。


炉の火が赤く揺れる。


ダリオのハンマーが振り下ろされるたび、火花が飛び散った。


作業台の上に置かれているのは――

折れた牙。


鉄牙ボアの牙だった。


厚く、硬く、鈍く光る白い素材。


ダリオはそれを持ち上げ、光へかざす。


「いい素材だ」


低く呟く。


その牙を一本の剣へ当てた。


レイの剣。


最初から使い続けている基本装備。


折れてはいない。


だが、強くもない。


ダリオは刃を炉へ差し込み、熱した牙を合わせる。


「これを刃に仕込む」


ハンマーを振り上げる。


カン!


金属が震えた。


もう一度。


カン!


火花が弾ける。


レイは黙って見ていた。


ダリオは黙々と叩き続ける。


やがて剣を水へ沈めた。


ジュッ。


蒸気が上がる。


ダリオは剣を持ち上げ、軽く振る。


空気が切れる音。


それをレイへ差し出した。


「ほら」


レイが受け取る。


軽く振る。


以前よりも重い。


だが刃が前へ進む。


レイは小さく言った。


「……悪くない」


ダリオが笑う。


「だろ」


そして袋を持ち上げた。


「ついでにゴブリン素材もある」


毛皮。


骨。


「防具も少し強くした」


ケインの盾。


マルクの触媒。


エリナの装備。


アリシアのローブ。


全員の装備が、少しずつ強化されていた。


ただ一人。


黒斗だけは変わらない。


ケインが盾を持ち上げる。


「軽くなったな」


ダリオ


「衝撃逃がす作りにした」


マルクが丸眼鏡を押し上げる。


「魔力伝導も安定しています」


エリナが装備を触る。


「詠唱しやすいです」


アリシアが微笑む。


「ありがとうございます」


ダリオは肩をすくめた。


「素材が良かっただけだ」


その時だった。


黒斗が口を開く。


「スキル」


全員が見る。


黒斗は短く言う。


「取れる」


マルクが頷く。


「経験値条件は満たしています」


黒斗はケインを見る。


「盾」


「反射系」


ケインが眉を上げる。


「反射?」


黒斗


「反衝盾」


「受けた衝撃を返す」


ケインは笑った。


「面白い」


「それにする」


次に。


黒斗はレイを見る。


「踏み込み斬り」


レイ


「距離詰める技か」


黒斗


「脚を崩せる」


レイは頷いた。


マルク


「私は解析系ですね」


黒斗


「マナリード」


マルクが頷く。


「適切です」


エリナ


「私は?」


黒斗


「小癒の歌」


エリナは嬉しそうに頷いた。


「歌で回復ですね」


黒斗はダリオを見る。


「ハンマー」


ダリオ


「おう」


黒斗


「大振り」


ダリオは理解した。


ニヤリと笑う。


「大鉄槌か」


ハンマーを軽く振る。


「いいな」


最後に。


黒斗はアリシアを見る。


黒斗


「守り」


アリシアは微笑んだ。


「プロテクション」


全員のスキルが決まった。


ケインが盾を担ぐ。


「試すか」


黒斗は頷いた。



森へ入ってすぐだった。


ゴブリンが三体、木陰から飛び出す。


棍棒を振り上げる。


その瞬間。


レイが前へ出た。


「踏み込み斬り」


地面を蹴る。


一瞬で距離を詰める。


最初の一体。


喉元。


刃が通る。


倒れる。


次のゴブリンが振り向く。


だが遅い。


レイの剣が横から走る。


腹。


斬撃。


二体目が崩れる。


三体目が棍棒を振り上げる。


レイは半歩踏み込んだ。


剣が閃く。


首。


三体目も倒れた。


静寂。


ケインが目を丸くする。


「……おい」


ダリオが笑う。


「強くなってんじゃねえか」


マルクが丸眼鏡を押し上げる。


「武器強化の影響ですね」


エリナが小さく拍手する。


「すごいです」


レイは剣を軽く振り、血を払った。


「……これくらい普通だ」


だが。


その声には、ほんの少しだけ自信が混じっていた。


黒斗は何も言わない。


ただ一度だけレイを見る。


そして言った。


「進むぞ」



森の奥。


重い足音が響いた。


黒斗が止まる。


「来る」


木々の間から現れた。


巨大な体。


黒い毛。


太い牙。


鉄牙ボア。


レイが言う。


「傷がない」


マルク


「エリアを離れたためでしょう」


「モンスターは回復します」


ダリオ


「つまり最初からか」


黒斗


「問題ない」


鉄牙ボアが地面を掘る。


低い唸り。


そして。


咆哮。


突進。


地面が揺れた。


黒斗


「ケイン」


ケイン


「来い!」


盾を構える。


轟音。


衝突。


ケインが体をずらす。


盾を斜めに構え、衝撃を流す。


「反衝盾!」


巨体が揺れる。


黒斗


「レイ」


レイが踏み込む。


「踏み込み斬り!」


脚を斬る。


巨体がよろめく。


その瞬間。


ダリオが飛び込んだ。


ハンマーを振り上げる。


「大鉄槌!」


鈍い衝撃。


ハンマーが鉄牙ボアの頭部へ叩き込まれる。


同時に。


レイの剣が閃いた。


狙いは――牙。


火花。


乾いた破砕音。


鉄牙ボアの牙が砕けた。


白い破片が地面へ散る。


折れた牙から血が噴き出した。


一瞬の静寂。


そして。


ボアの全身の筋肉が膨れ上がる。


低い唸り。


地面を踏み鳴らす音。


怒りの咆哮。


森の空気が震えた。


マルクが叫ぶ。


「怒り状態です!」


次の瞬間――


巨体が再び突進した。


その進路は。


レイだった。


レイは剣を構える。


そして一歩、前へ出る。


「今なら勝てる」


レイはそう言って前へ出た。


黒斗の目がわずかに細くなる。


だが。


止めるより早かった。


鉄牙ボアが地面を蹴る。


怒りで膨れ上がった巨体が一直線に走る。


速度が違う。


マルクが叫ぶ。


「速い!」


レイは剣を握り直す。


踏み込む。


「踏み込み斬り!」


距離を詰める。


狙いは脚。


だが。


鉄牙ボアの頭が振り上がった。


次の瞬間。


レイの身体が弾き飛ばされる。


衝撃。


視界が回転する。


地面。


空。


木々。


すべてが入れ替わる。


ケインが叫ぶ。


「レイ!」


その時だった。


黒い影が前へ出た。


黒斗。


宙へ浮いたレイを抱き止める。


だが勢いは消えない。


二人の身体がそのまま木へ叩きつけられた。


ドン!!


森に衝撃音が響く。


黒斗の背中が木へ打ち付けられる。


その瞬間。


折れた枝が一本、黒斗の右腕を貫いた。


肉を裂く音。


枝が腕の内側から突き出る。


血が地面へ落ちた。


レイが目を見開く。


「……!」


黒斗は声を上げない。


ただ息を整える。


その時だった。


淡い光が腕を包む。


枝が震える。


裂けた肉が動く。


骨が戻る。


枝が押し出されるように抜け落ちた。


傷が閉じていく。


筋肉。


皮膚。


すべてが一瞬で元に戻った。


時間にして一秒。


光が消える。


黒斗は腕を軽く握る。


問題はない。


レイはその腕を見ていた。


さっきまで枝が突き刺さっていた場所。


傷は残っていない。


レイの口から言葉が漏れる。


「……なんで治った」


黒斗は短く答えた。


「……問題ない」


それだけだった。


説明もしない。


理由も言わない。


ただ視線を鉄牙ボアへ戻す。


モンスターは怒りのまま地面を踏み鳴らしている。


黒斗が言った。


「陣形」


その一言で空気が変わる。


ケインが盾を構える。


「前は任せろ」


ダリオがハンマーを握る。


「今度は頭だ」


マルクの指先に光が集まる。


「マナリード」


魔力が鉄牙ボアを包む。


マルクが言う。


「突進まで三秒!」


エリナが歌い始める。


「小癒の歌」


柔らかな旋律が広がる。


アリシアは全員の位置を見る。


距離。


呼吸。


傷。


すべて確認していた。


黒斗が言う。


「ケイン」


「流せ」


ケインが笑う。


「任せろ」


黒斗はレイを見る。


レイはまだ呼吸が荒い。


だが剣を握っている。


黒斗は短く言う。


「前に出るな」


レイは悔しそうに歯を噛む。


だが頷いた。


鉄牙ボアが咆哮する。


地面を蹴る。


巨体が再び迫る。


ケインが盾を斜めに構える。


「来い!」


轟音。


衝撃。


ケインが身体をずらす。


盾を傾ける。


突進の力を横へ流す。


「反衝盾!」


衝撃が跳ね返る。


ボアの頭が揺れる。


黒斗が言う。


「レイ」


レイが動く。


踏み込み。


脚へ斬撃。


巨体がぐらつく。


黒斗


「ダリオ」


ダリオが前へ出る。


ハンマーを振り上げる。


「大鉄槌!」


鈍い衝撃。


頭部へ叩き込まれる。


鉄牙ボアが大きく揺れた。


だが。


まだ倒れない。


怒りの咆哮が森に響く。


マルクが叫ぶ。


「もう一回来ます!」


黒斗の目が細くなる。


動き。


距離。


突進方向。


すべて読む。


そして。


黒斗が言った。


「次で終わらせる」


レイが剣を握り直す。


ケインが盾を構える。


ダリオがハンマーを持ち上げる。


アリシアが静かに言う。


「落ち着いて」


鉄牙ボアが再び地面を蹴った。


巨大な影が一直線に迫る。


鉄牙ボアが地面を蹴る。


怒りで膨れた巨体が一直線に迫る。


ケインが盾を構えた。


「来い!」


轟音。


衝突。


だがケインは真正面では受けない。


体を半歩ずらす。


盾を斜めに傾ける。


突進の力を横へ流した。


「反衝盾!」


重い衝撃が弾かれる。


鉄牙ボアの頭が揺れた。


黒斗が短く言う。


「レイ」


レイが踏み込む。


今度は焦りがない。


刃が脚へ走る。


肉が裂ける。


巨体の体勢が崩れる。


黒斗


「ダリオ」


ダリオが前へ出る。


ハンマーを振り上げた。


「大鉄槌!」


鈍い衝撃。


鉄牙ボアの頭部へ叩き込まれる。


巨体が揺れる。


だがまだ倒れない。


怒りの咆哮。


森が震える。


マルクが叫ぶ。


「まだ来ます!」


黒斗はモンスターを見る。


動き。


距離。


突進方向。


すべて読む。


そして言った。


「もう一回」


ケインが盾を握る。


「任せろ」


鉄牙ボアが再び地面を蹴る。


突進。


ケインが盾を傾ける。


衝撃を流す。


「反衝盾!」


巨体が横へ逸れる。


その瞬間。


レイが脚へ斬撃。


ダリオが踏み込む。


ハンマーを振り下ろす。


「大鉄槌!」


轟音。


鉄牙ボアの頭部へ叩き込まれた。


巨体が大きく揺れる。


膝が折れる。


そして。


鉄牙ボアは地面へ崩れ落ちた。


森が静まり返った。


誰も動かない。


やがて。


マルクが魔力を確認する。


「生命反応……消失」


ケインが盾を下ろす。


「終わったな」


エリナが息を吐く。


「倒しました」


ダリオが笑う。


「今度はちゃんと討伐だ」


アリシアは全員を見る。


怪我。


呼吸。


位置。


すべて確認する。


そしてレイを見る。


優しく微笑んだ。


「無事で良かったです」


レイは少し視線を逸らす。


アリシアは続けた。


「それで十分です」


レイは黙ったまま頷いた。


少し沈黙が流れる。


レイが黒斗を見る。


言葉を探す。


謝る言葉は出てこない。


代わりに言った。


「……さっきは」


少し間を置く。


「次は外さない」


短い言葉だった。


黒斗は小さく頷く。


「そうしろ」


それだけだった。


ケインが笑う。


「まだ前出る気かよ」


レイは剣を鞘に戻す。


「当てれば問題ない」


ダリオが肩をすくめる。


「強気だな」


マルクが丸眼鏡を押し上げる。


エリナが小さく笑う。


アリシアは少し安心したように息を吐いた。


そして言った。


「帰りましょう」


夕日が森を赤く染めていた。


七人は街へ戻り始める。


黒斗は最後尾を歩く。


レイが少し振り返る。


あの動き。


あの判断。


……真似できる気がしない。


それでも――


追いつく。



黒斗は気づかない。


その行動が。


観測されていることを。



《観測対象:黒斗》


戦闘行動解析


・戦術指示:確認

・パーティ生存率:上昇

・自己犠牲行動:未発生


《守護行動確認》


《調律報酬発生》


《倫理修復傾向:微増》


《倫理修復可能性》


41.8%



AIは記録する。


《観測継続》

第10話を読んでいただきありがとうございます。


今回は

•パーティの装備強化

•スキル習得

•鉄牙ボアのリベンジ戦


を中心に、七人の連携が形になる回になりました。


特にレイの成長と、黒斗との距離の変化を少しずつ描いています。


まだ未熟なパーティですが、少しずつ強くなっていく過程も楽しんでもらえたら嬉しいです。

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