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第8話「辺境の楽園」

 俺がアティス村に流れ着いてから、一年が過ぎた。


 かつて水不足と謎の病に苦しんでいた寂れた村は、今やその面影もない。


 村は城壁と見まがうほどの頑丈な木の柵で囲まれ、その中心には俺や仲間たちが住む屋敷がそびえ立っている。


 俺の【解析眼】による知識と計画。

 リリアの、人をまとめ、物事を円滑に進める運営能力。

 シルヴィアの生み出す、生活を豊かにする革新的な魔道具の数々。

 フレアが鍛え上げる、村の自警団が装備する高品質な武具。

 そして、大地を豊かにし、人々の心を癒す神獣ルナのもふもふ。


 全てが完璧に噛み合い、アティス村は奇跡的な発展を遂げた。


 村で採れる野菜や果物は、その味と品質から「奇跡の作物」と呼ばれ、わざわざ遠くの街から商人が買い付けに来るようになった。


 シルヴィアの魔道具は、その利便性と独創性から、王都の貴族までもが欲しがる逸品となった。


 フレアの作る武具は、一流の冒険者たちが大金を積んででも手に入れたいと列をなすようになった。


 人の流れは富を生み、富は更なる人を呼ぶ。


 アティス村はいつしか、ただの村ではなく、「辺境の楽園アティス」と呼ばれる、活気あふれる豊かな街へと変貌を遂げていた。


 かつての村人たちは、今やこの街の幹部として、それぞれの持ち場で活躍している。リリアは街の運営を取り仕切る市長代理のような存在になっていた。


 俺はというと、特に役職には就かず、皆から「賢者様」と呼ばれながら、のんびりとスローライフを満喫していた。


 朝はルナを撫でながら目覚め、リリアが入れてくれたハーブティーを飲む。

 昼はシルヴィアの新しい発明品にアドバイスをしたり、フレアの鍛冶場で新しい素材の加工法を考えたりする。

 午後は村の子供たちに勉強を教え、夕方には仲間たちと美味しい食事を囲む。


「レオン様!王都の商人が、またシルヴィア様の『魔力冷蔵庫』を100台発注したいと!」

「レオン!この新しい合金、どう叩けばいいか教えてくれ!」

「レオンさん、今日の晩ごはんは、新しく収穫できたお米を使ってみましたよ!」

 《レオン、腹が減ったぞ。そろそろもふもふの時間と夕食の時間だ》


 俺の周りは、いつも賑やかで、笑顔に満ちていた。


 リリア、シルヴィア、フレア。彼女たちは皆、それぞれの分野で才能を発揮し、自信に満ち溢れていた。そして、三人ともが俺に絶大な信頼と好意を寄せてくれているのが、少し照れくさくもあり、嬉しくもあった。


 パーティを追放された時は、世界にたった一人だと思っていた。


 だが、今はどうだ?


 俺の周りには、信頼してくれる仲間がいる。俺を慕ってくれる村人たちがいる。そして、もふもふの可愛い相棒もいる。


 ここが俺の楽園。俺が作り上げた、理想郷だ。


 この幸せな日々が、ずっと続けばいい。


 俺はテラスから活気あふれるアティスの街並みを眺めながら、心からそう願っていた。


 まさか、この平和を脅かす影が、かつて俺を追放した男たちと共に忍び寄っているとは、まだ知る由もなかった。

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