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第7話「炎と鋼の獣人少女」

 シルヴィアの魔道具によって村の生活レベルは格段に上がった。しかし、俺にはまだやりたいことがあった。それは、村の自衛力を高めるための、より強力な武具の生産だ。


 幸運なことに、俺は村の近くの洞窟で、未知の鉱石を発見していた。【解析眼】で視ると、それはとんでもないポテンシャルを秘めた金属だった。


【対象:星屑鋼せいせつこう

【特性:極めて高い硬度と魔力伝導率を誇る伝説級の鉱石。ただし、融点が異常に高く、通常の鍛冶技術では加工不可能。】

【加工法:特定の獣人族に伝わる『霊脈呼吸鍛造法』を用い、炎の温度を精密に制御し、分子の結合点が最も緩む一瞬を叩く必要がある。】


『霊脈呼吸鍛造法』。これを使える鍛冶師を探す必要があった。


 噂を頼りに近隣の街を巡っていると、俺は一人の少女と出会った。狼の耳と尻尾を持つ、快活な獣人族の少女だ。彼女は旅の鍛冶師で、フレアと名乗った。


「星屑鋼だって!?あんた、どこでそんな幻の鉱石を!」


 俺が持っていた星屑鋼の欠片を見るなり、フレアは目を輝かせた。話を聞くと、彼女の一族こそが『霊脈呼吸鍛造法』を伝承する一族だったが、彼女自身はその秘伝の技を上手く扱えず、悩んでいたらしい。


「一族の誰も、完璧に扱えた人はいないんだ。炎の温度とか、槌を打つタイミングとか、あまりに感覚的すぎて……。私も、この星屑鋼を叩いてみたことがあるけど、傷一つつかなかった」


 俺は、彼女こそが探していた人物だと確信した。


「フレア、もしよかったら、俺に手伝わせてくれないか?」


「あんたに?あんた、鍛冶師なのか?」


「いや、違う。でも、あんたが槌を振るうべき“完璧な一瞬”が、俺には見える」


 俺たちはアティス村に戻り、フレアのために最高の設備を備えた鍛冶場を用意した。シルヴィアが設計した、温度を精密に制御できる特製の炉だ。


 フレアは半信半疑ながらも、真っ赤に熱された星屑鋼を金床に乗せた。


「いいか、フレア。今から俺が言う通りにやってくれ」


 俺は【解析眼】を最大に集中させ、星屑鋼の内部構造を凝視する。熱によって絶えず変化する分子の配列。その中に、ほんの一瞬だけ生まれる、奇跡のような一点。


「炉の温度をあと3度上げて!……よし、今だ!そこから右に2ミリ、角度はそのまま!全力で叩け!」


「えっ、こ、ここか!?」


 フレアは戸惑いながらも、俺の指示通りに巨大な槌を振り下ろした。


 キィィィン!


 今まで傷一つ付かなかった星屑鋼が、火花を散らし、美しい曲線を描いてへこんだ。


「なっ……!?」


 フレアが驚愕に目を見開く。


「まだだ、続けるぞ!次は炉の温度を5度下げて!3秒後、今の打点から左に5ミリの場所だ!」


「お、おう!」


 俺の矢継ぎ早の指示に、フレアは必死でついてくる。


 カン!カン!カン!


 鍛冶場に響くリズミカルな槌の音は、まるで音楽のようだった。俺が完璧な楽譜を読み上げ、フレアという最高の奏者がそれを奏でる。


 俺には視えていた。炎の揺らめき、槌が当たるべき分子の結合点、力が最も効率よく伝わる角度。その全てが。


 数時間後。


 汗だくになったフレアの前には、一本の剣が置かれていた。


 星屑鋼から作られたその剣は、刀身に夜空の星々を映したかのような美しい紋様が浮かび、尋常ではない魔力を放っていた。


 フレアが恐る恐るその剣を手に取ると、剣は彼女の闘気に呼応するように、淡い光を放った。


「すごい……なんだよ、これ……。あたしが……あたしが、こんなものを作ったのか……?」


 フレアは、自らの手が生み出した伝説級の武具を前に、わなわなと震えていた。


 彼女は俺の方を振り返り、その瞳には尊敬と、そして熱い信頼の光が宿っていた。


「レオン……あんた、何者なんだ?いや、そんなこたぁどうでもいい!あんた、最高だぜ!」


 快活な少女は、ニカッと笑うと、俺の背中をバシンと叩いた。


「決めた!あたし、この村にあんた専用の鍛冶場を建てる!あたしの腕と、あんたの目があれば、世界一の武具だって作れる!いや、神話の武具だって作れるぞ!」


 情に厚く、腕は確かな獣人少女は、こうして俺の楽園計画に、炎と鋼の魂を吹き込んでくれることになった。

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