第5話「村の復興計画」
伝説の神獣ルナが仲間に加わり、アティス村での日々はさらに充実したものになっていった。
ルナは普段、俺の膝の上や肩の上を定位置とする愛らしい子狐だが、その力は本物だった。
【解析眼】で分かったことだが、ルナには土壌を浄化し、豊かにする力があったのだ。ルナが畑を駆け回るだけで、作物の育ちが劇的に良くなった。まるで魔法のようだったが、これは神獣が持つ自然への干渉力の一端なのだろう。
俺は【解析眼】による知識と、ルナの不思議な力を組み合わせ、本格的な村の復興計画を立て始めた。
まずは農業改革だ。
「この区画は日照時間が長いから、糖度の高いトマトを。あっちの湿った土地は、根菜類の栽培に最適だ。種を植える間隔はこぶし二つ分。深さは指の第二関節まで」
俺の指示は、ミリ単位の精度だった。村人たちは最初こそ戸惑っていたが、実際に出来た作物の大きさや味が、今までとは比べ物にならないことを知ると、やがて全面的に俺を信頼するようになった。
収穫された新鮮で美味しい野菜は、村人たちの食卓を豊かにし、体力を回復させていった。
次に、生活環境の改善だ。
「この川の流れを少し変えて水路を引けば、村の全世帯に綺麗な水を供給できる。水車を設置すれば、粉を挽く動力にもなる」
【解析眼】は、最適な治水工事の設計図や、最も効率的な水車の構造まで示してくれた。村の男たちと力を合わせ、俺たちは数週間で村のインフラを劇的に改善させた。
リリアは、そんな俺の計画を完璧にサポートしてくれた。彼女には人々の意見をまとめ、作業を割り振る才能があった。俺が計画を立て、リリアが実行部隊をまとめる。いつしか、俺たちは村の復興における最高のパートナーになっていた。
収穫祭の夜、村人たちが笑顔で歌い、踊る姿を眺めながら、俺は深い満足感を覚えていた。
「レオンさん、見てください。みんな、本当に楽しそうです」
隣に座ったリリアが、嬉しそうに微笑む。その手には、今年収穫された果実で作った果実酒の杯が握られていた。
「ああ。全部、みんなが頑張ったおかげだよ」
「ううん。レオンさんが来てくれたからです。あなたは、この村の救い主ですよ」
彼女のまっすぐな瞳に見つめられると、少し照れくさかった。
俺の膝の上では、ルナが村人たちからもらった焼き魚を、小さな口で夢中になって食べている。
《うむ、この魚は脂の乗りが絶妙だな。レオン、おかわりを要求する》
「はいはい」
念話で催促され、俺は苦笑しながら新しい魚を差し出した。
パーティを追放された時は、人生の全てが終わったと思った。
だが、今はどうだ?
俺の周りには、信頼してくれる仲間がいる。俺を慕ってくれる村人たちがいる。そして、もふもふの可愛い相棒もいる。
豪華な装備も、Sランクという称号もない。でも、ここにはそれ以上に価値のある、温かくて、かけがえのない日常があった。
スローライフ、か。
こんな生き方も、悪くない。いや、最高だ。
俺は自分の居場所を見つけた喜びを噛みしめながら、アティス村の賑やかな夜を楽しんだ。
この平和な日々を、ずっと守っていきたい。心からそう思った。




