第15話「楽園の決意」
魔王軍侵攻の報がアティスに届いてから、数週間が経っていた。
俺たちは、静かに、しかし着々と準備を進めていた。
シルヴィアは、工房に籠もり、何やら巨大な魔道具を開発している。フレアは、休むことなく槌を振るい、俺とルナが集めた最高の素材で、伝説級の武具を次々と打ち上げていた。リリアは、街の防衛計画を練り、住民たちの避難誘導や食料の備蓄を指揮していた。
そして、魔王軍の一部隊が、ついにアティスの目前まで迫ってきた。オークやゴブリンを中心とした、およそ千の軍勢。
見張り台からの報告を受け、俺は街の中心広場に仲間たちを集めた。
「みんな、聞いてくれ。敵が来た」
俺の言葉に、誰も動揺しなかった。皆、覚悟はできていた。
俺は、集まってくれた仲間たち――リリア、シルヴィア、フレア、そして肩の上のルナ――の顔を、一人一人見回した。
「俺は、戦いは好きじゃない。面倒なことはごめんだ。でもな」
俺は、活気に満ちたアティスの街並みを振り返る。
「この平和な日常は、俺が、俺たちが、力を合わせて作り上げた宝物だ。子供たちの笑い声も、市場の賑わいも、みんなで囲む食卓も。その全てが、俺のかけがえのない宝物なんだ」
俺の言葉を、皆が真剣な顔で聞いている。
「だから、決めた。俺たちの楽園を壊そうとする奴らは、誰であろうと容赦しない。俺は、俺たちの日常を守るために戦う」
俺が決意を告げると、リリアが優しく微笑んだ。
「レオンさんが決めたことなら、私はどこまでもついていきます。この街は、私にとっても宝物ですから」
シルヴィアが、自信に満ちた顔で眼鏡の位置を直す。
「フフン、任せなさい、レオン。私の新しい発明品が火を噴くわ。敵が可哀想になるくらいにね!」
フレアが、肩に担いだ巨大な戦斧を鳴らして、ニカッと笑った。
「おうよ!あたしが鍛えたこの武具で、魔物どもを一人残らずスクラップにしてやるぜ!」
そして、肩の上のルナが、神々しいオーラを放ちながら言った。
《我が主、レオンの楽園を穢す愚か者には、神獣の裁きを下すまでだ》
頼もしい仲間たちだ。
もう、俺は一人じゃない。
かつてパーティを追放された時の孤独な俺は、もうどこにもいない。
「よし、行こうか」
俺は、フレアが俺のために作ってくれた、星屑鋼の軽量剣を腰に差した。
「俺たちの、最初の防衛戦だ」
俺の号令と共に、三人と一匹は力強く頷いた。
最強の仲間たちと共に、自らの楽園を守るため、俺たちは今、立ち上がる。
目指すは、王都ではない。まずは、このアティスを脅かす、目の前の敵だ。




