表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/21

第14話「後悔と贖罪」

 四天王ゴルザが、倒れた騎士団長にとどめを刺そうと、その巨大な斧を振り上げた、その時だった。


「やめなさい!」


 か細く、しかし凛とした声が響いた。


 声の主は、聖女セラフィナだった。彼女は満身創痍の体を引きずり、ゴルザの前に立ちはだかったのだ。


「ほう?まだ抵抗する者がいたか。聖女、か。良い贄だ」


 ゴルザは、セラフィナを虫けらのように見下ろした。


 セラフィナは震えていた。恐ろしかった。だが、彼女はここで逃げるわけにはいかなかった。これは、自分の罪を償うための、たった一つの機会かもしれない。


「ガイアス様……」


 彼女は、瓦礫の中でうめく勇者を見た。かつての自信に満ちた姿はどこにもない。ただの、敗北者だ。


 そして、その原因を作ったのは、自分にもある。


 あの日、レオンさんの追放を止められなかった、自分の弱さが。


 その瞬間、瓦礫の中から、ガイアスのかすれた声が聞こえた。


「……やめろ……セラフィナ……」


 彼は、ふらつきながらも立ち上がろうとしていた。その目には、涙が浮かんでいた。


「俺のせいだ……俺が……俺が、弱いから……」


 そして、ついに彼は、心の奥底で押し殺していた後悔を、絶叫として吐き出した。


「俺がッ……俺がレオンを追放さえしなければッ!!」


 その魂の叫びは、戦場の喧騒を切り裂いて響き渡った。


 仲間たちが、兵士たちが、そして王都の民たちが、息をのんで勇者の告白を聞いていた。


 レオン。


 一部の者は、かつて「神聖なる光刃」に所属していた、地味な青年の名を思い出した。


「あいつがいれば……あいつなら、こんな化け物の弱点だって、一目で見抜いたはずなんだ……!俺は……俺は、嫉妬していた……!俺の力じゃない、あいつの力で勝利していることに……!だから、追放したんだ……!」


 プライドも、見栄も、何もかも捨てた、無様で、惨めな告白。


 セラフィナもまた、涙を流しながら、天を仰いだ。


「レオンさん……ごめんなさい……!私には、あなたを引き留める勇気がなかった……!お願い……誰か、助けて……!」


 勇者の後悔。聖女の贖罪。


 彼らの無力さと、悲痛な叫びが、絶望に沈む王都に響き渡る。


 それは、読者である皆様が待ち望んだ、最高のカタルシス。


 自分たちの過ちの代償を、彼らは今、骨の髄まで味わっていた。


 ゴルザは、その人間たちの滑稽なドラマを、鼻で笑った。


「レオンだと?今更、存在しない誰かの名を呼んで助けを乞うか。哀れな奴らめ。まとめて、地獄へ送ってやる!」


 ゴルザが、セラフィナとガイアスを同時に葬り去ろうと、巨大な斧を天高く振り上げた。


 誰もが、終わりを覚悟した。


 その、瞬間だった。


 空から降り注いだ一本の光の矢が、ゴルザの斧を弾き飛ばしたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ