第13話「王都の絶望」
魔王軍の猛威は、ついに王国の心臓部である王都にまで迫っていた。
侵攻してきたのは、四天王の一人、「虐殺のゴルザ」。山のような巨体を持つ、牛頭の魔人だ。その一振りで城壁を砕き、雄叫び一つで兵士たちの戦意を奪う。
王国の騎士団は必死に抵抗するが、その力はあまりに圧倒的だった。騎士たちはバッタのようになぎ倒され、魔法使いたちが放つ魔法は、ゴルザの強靭な肉体の前には掻き消されてしまう。
「勇者よ!元Sランクパーティよ!貴様たちの力を今こそ見せる時だ!」
王の勅命を受け、落ちぶれたガイアスたちも、この絶望的な防衛戦に召集されていた。
Sランクの称号は剥奪されたが、腐っても元勇者パーティ。人々は彼らに、最後の希望を託していた。
「うおおおおおっ!」
ガイアスは聖剣を手に、ゴルザへと斬りかかる。だが、聖剣の輝きは、以前とは比べ物にならないほど鈍く、弱々しかった。
持ち主の心の状態が、剣の力に反映される。今のガイアスの心は、焦り、慢心、そして後悔に曇っていた。
ガキン!
聖剣の一撃は、ゴルザの巨大な斧によって、いともたやすく弾かれた。
「なんだァ?こいつが人間どもの言う勇者か?聞いて呆れるぜ!」
ゴルザは嘲笑い、ガイアスを玩具のように蹴り飛ばした。
「ぐはっ!」
ガイアスは城壁に叩きつけられ、動けなくなる。
「ガイアス様!」
パーティの仲間たちが駆け寄るが、ゴルザの放つ威圧感に、誰もが一歩も前に出ることができない。
聖女セラフィナは、重傷を負って以来、まともに魔法が使えない。彼女は後方で、ただ震えながら戦況を見つめることしかできなかった。
無力だった。あまりにも、無力。
かつて最強と謳われた彼らの姿は、そこにはなかった。
王都は、阿鼻叫喚の地獄と化していた。
燃え盛る家々。逃げ惑う人々。そして、それをあざ笑うかのように、ゴルザは破壊の限りを尽くす。
騎士団長も、王国最強の魔道士も、次々とその手に倒れていった。
希望が、絶望に塗りつぶされていく。
「終わりだ……この国も、もう終わりだ……」
誰かが、そうつぶやいた。
その言葉は、戦場にいる全ての者の心を代弁していた。
ガイアスは、瓦礫の中で薄れゆく意識の中、ただただ自分の無力さを呪った。
なぜ、レオンを追放してしまったのか。
なぜ、彼の忠告を聞き入れなかったのか。
なぜ、自分はこんなにも、弱いのか。
後悔の念が、彼の心を黒く塗りつぶしていった。




