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透明な毒を抱く手は、赤に染まる  作者: 夜風 紅葉
序章:「馬鹿の極み」
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第3話:早々に進路相談

遅くなりすみません。(なんかこの始まり方定着しそうで怖いです……)

今回暴力シーンあります。

 奇跡は起きた。

 ラザの怪しげな言動によって察したエレーノがたまたま持っていた汚れ落としクリームにより油性ペンの跡は消えた。エレーノにかなりこすられたせいで若干赤くなってはいるが。

 まぁ、エレーノがこすったということは、ラザの嘘はばれたということだ。

 しかしそんなことも、朝の出来事の前ではちっぽけなことだ。


(これで胸を張って××××になれる!)


 ラザはうきうきと校門をくぐった。


「あ、おはようラザ」


「おはよ!」


「落書き、落ちたんだ。よかったね」


 ルオは「よかったね」と言いつつラザの腕を見る。赤くなった腕に同情のまなざしをむけるルオ。しかし次の瞬間なにかを思い出し、はっとした顔になる。


「個人面談の紙、ちゃんとお母さんに提出した?」


「あ、やべ」


「日程調整に時間がかかるから早めに提出しなきゃだよ」


 ルオは極太の釘を三本ぐらいさした。


「なんと、期限のある魔______」


「ん?」


「いや、別に」


 ルオはなんとなく、ラザが何を言いたかったのかがわかった。「期限のある魔導書」。ラザはいつもなら人目をはばからず叫ぶのだが、途中で言葉をぐっと飲みこんだ。ルオは子供の成長を感じる母親のような気持ちになる。


「そっか」


 なんて言えばいいのかわからず、ルオはただそう言う。

 ***

「はい皆、おはようございます!」


「おはようございます!」


 今日も教室に先生の声が響く。朝の会の後は授業まで自由時間。友達と話しに行く人や勉強する人、本を読む人など、思い思いに行動する。

 ルオがラザのことを横目で見ると、ラザは自分の腕をさすっていた。


(また、「我が右腕が!」とか言うのかな….。いや、でもラザはなんか変わり始めたしな)


 ラザはただ腕が痛くてさすっていただけである。


「あ、やべ、時間割変更になったんだ!みんな一時間目は科学室だ!急げ急げ!」


 自席で書類を確認していた先生がバタバタと立ち上がる。生徒は「またか」という顔をした。この先生、時間割のミスが多いのだ。


「せんせーい、廊下は走っちゃだめなんじゃないっすか~?」


 ニヤニヤと男子生徒が言う。とにかく大人に反抗したいのだろう。先生の言動によくケチをつける。


「ん~、そうだな。まぁがんばれ」


「え~???」


 突然の教室移動宣言に生徒たちはグダグダし、行く気配がない。

 そんな時。


「なぁ、はやく移動しようぜ」


 声をかけたのは意外にもラザだった。いつものラザだったらそんなグダグダ集団の筆頭なのに。


「え~、どうせ、間に合わねぇんだからもうよくね?ゆっくり休もう?空天竜(スカイドラゴン)も絶対そう言うって!」


 とか言うくせに。


(ってかなんか……ラザがヤンキー講座を受けたら優等生みたいになった……?)


 ルオのヤンキーのイメージは、もっとグダグダして素行に問題がある人。ルオはいつもより行動がおかしい(いつもよりいいはずだけど)ラザが気になりすぎて声をかける。


「なんかお前ヤンキーっぽくないな?」


「あーうん。そうなんだよね。ちょっと今日の朝、嫌なもの見て。やっぱヤンキーやめよっかな、って」


「……は?え、そんな簡単にやめんの?お前には信念というものがないのか?」


「信念がない」というルオの言葉にラザは何とも言えない顔をする。


「今日の朝、実はさ……」

 ***

 ラザは(ちょっと赤くなったが)綺麗にインクが落ちた腕に満足して歩いていた。しかし道端で泣き声が聞こえ足を止める。


「やめてください、お願いです!」


 誰かの懇願するような声。見ると小学校低学年ぐらいの子が中学生だろうか、見るからに「ヤンキー」という人に絡まれていた。


「金出せ、金!あ”?殴んぞコラ!」


(あれが、ヤンキー……)


 ラザがイメージしているヤンキーではない。ラザは道端で猫を拾ってあげる、そんなヤンキーになりたかったのだ。

 人をいじめるなんて、死んでもやりたくなかった。


「あの、何してるんですか」


「は?うっせぇな部外者が!」


 怒鳴られてラザの足がすくむ。それでも絡まれていた子の前に立ち、その子が逃げられるようにする。

 その子は涙目でラザを見上げていたが、ラザが頷くと一目散に駆け出した。


「お前覚悟はできてるんだろうな?」


 ヤンキーが構える。


(覚悟……ヤンキーの覚悟はしたつもりだった。でも。ヤンキーがこんなのだったら俺はヤンキーにはならない!)


 ラザも構える。もっとも、正しい構えなんて知らないのでヤンキーの真似をしただけだ。


「っら!」


 ヤンキーが突き出した拳を避け、道端の砂をつかむ。よく本に出てくる「秘技:目つぶし」!

 ___バッ!

 ヤンキーが傘を広げる。


(嘘だろ!なんで持ってんだよ!)


「その程度か?」


 嘲笑うヤンキー。ラザの中でふつふつと力がたぎる。

 このヤンキーは、油断している。目を細め、クツクツと笑っている。

 ラザはそのまま髪をひっつかみ、ヤンキーを後ろにそらせる。転倒したすきにガムテープで体のあちこちを固定する。


「その程度って、自分のこと?負けてんじゃん。ガキに」


「くっそ、覚えてろよ!」


 ラザは道の端にヤンキーを移動させる。大丈夫。ここ、ルシィル町では警備隊が巡回しているので拾ってくれるだろう。

 そしてラザは決めた。


(あんなにいっぱい教えてくれた先生には悪いけど、俺はヤンキーじゃなくて悪い奴をやっつけるヒーローになる!)

 ***

「え、なんか定番のセリフしか言ってなくて面白いわ」


 こぶしを握り締め、熱く語るラザからヤンキーのセリフが飛び出す度にルオは笑いをこらえるのに必死だった。


(え、なに、ヤンキーってセリフ決まってるの?)


 もう腹がよじれそうだった。あのセリフをヤンキーがどんな顔をして言ったのかと思うと、本当に笑いが止まらない。


「まぁ、ヤンキーを倒したんだな。おめでとう」


 素直なルオの誉め言葉にラザは少し照れたような顔をした。


「あ、それで先生に進路相談しなきゃ」


「あれ?僕ら行く学校もう決まってるよね?」


「ううん。やっぱりヒーローになりたい、っていう相談!ルオも一緒にしてよ!」


「なんでだよ」


 しかしルオはラザに引っ張られる形で同行することになった。


「先生、俺、やっぱりヒーローになりたいと思います」


 そしてルオに伝えたことと同じことを言うと先生はしばらく考え込んで、それから短く「頑張れ」と言った。


「ヒーローってのは、身近な人を助けることも含まれる。だから、続けるのは結構つらい。でもお前の考えを否定する気はない。頑張れ。迷ったらいつでも相談しに来いよ」


「ありがとうございます!」


 ルオは(自分が同行した意味とは……)と思った。


「あー、ってかお前らさ、授業15分ぐらい遅れてんぞ?大丈夫か?ダッシュで行け!____あ、今のは比喩だ!急いで行け、って意味で決して廊下を走っていいと言っているわけではないからな!」


「はーい!」

 ***

「ねぇ、あんたら二人組。今何時だと思ってんの?授業時間知ってる?」


「……すみません」


「とりあえず廊下出てて」


 廊下に出されたルオはため息をつく。


「絶対僕悪くない。ってか『早く行こうぜ』っていたのお前だったよな」


「あー、まあそこは、うん。えっと、普通に巻き添えはごめんね」


 科学の先生は、廊下で仲良く話していた二人を見てさらに怒ったという。


「あれ、腕の落書き落としたらメモの意味なくね?」と思った方、その通りです。だからラザは教科書の隅っこに先生の助言を書き込んでいます。

教科書の隅っこなのは近くにメモ用紙がなかったからでしょうね……。

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アクセス回数が増えてて非常にうれしいです。

踊りだしたいぐらいです。皆様のおかげです!ありがとうございます!!


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