第1話:人に迷惑かけるタイプの超絶大馬鹿野郎
作中にて、中二病に関しあれやこれやいう人物がおります。それは決して中二病だから言っているのではなく、迷惑をかけられ続けているからこそのセリフです。
また、作者は中二病に関し、一切否定的な意見は持っておりません。
フッと、ラザ・ガレストルは目を覚ました。
目の前に広がるのは、白く無機質な空間。これがよく本にある「密室」か、と思ったが全然そんなことはなく、扉がある。なんだ、出られるじゃんと無造作に手をかけ……ようとして、思いとどまる。
罠が、あったら。
ラザはヤンキーである。ラザを恨む人間は、きっと数えきれないだろう。
何もない白い空間に、不自然なほど黒く塗られた扉。いくら怪しくても、脱出口が見えているのに開けないのもなんとなく気が引けたので、とりあえず開けてみようと思った。
ドキドキバクバクとはやる心臓を抑え、ドアに手をかける。
ガチャ……なんて、扉は簡単に開いてくれなかった。
「なぜなんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
やけになり扉を力強く押すラザ。実はこの男、けっこうな馬鹿力なのだが、扉はミシリといっただけで少しも開かない。
「うおぉぉっ!」
そして耳を抑える。銃声がしたから、ではない。あまりの大声に耳がキーンとしたのである。なんという馬鹿だろうか。
_______キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン……
「・・・ラザ、お前また何かやったん?なにしたん?」
チャイムとともに、呆れた声が廊下に響く。しかしラザはそれらを一切無視してブツブツと言う。
「俺は、皆に恨まれるほどの魔力を授かりしヤンキー……」
「魔力云々はわからないけど、僕は君を恨んでるよ」
「それなのに、何故……」
「もちろんいつもお前に迷惑をかけられているからね。……ほら、今だって!」
眉を吊り上げる男子生徒___もとい、ルオ・クルドレアは本当ならギリギリで遅刻しないはずだった。それなのに目の前にいる馬鹿がジタバタしているせいで、見事遅れた。
「押しても開かない扉なんて……」
「は?」
「ルオ……まさか、お前が!」
ラザは犯人を指さす探偵ごとく声を上げたが、ルオにはラザになにをした、という記憶がない。せいぜい昨日喧嘩したぐらいだろうか。
「お前が、神だったのか!……すべてに納得がいく!」
「まって僕納得できない。何が何やら……」
「お前と帰っていた時、地面にある魔法陣が歪んでいたのも……!」
「……」
「この扉が開かないのも!全部全部全部、お前のせいだったんだな!」
朝学校に来て早々言いがかりをつけられたルオは目を白黒させる。ラザがおかしいのは今に始まったことではないが。
「僕は神じゃない。お前がおかしいだけ」
「でも!」
「いいから黙って聞いとけ馬鹿」
最後のほうに本音が出た。
「まず、地面の『魔法陣』はマンホール。小学6年生にもなってわからないのか?」
「おう!」
まさかの即答だった。もうちょっと恥ずかしく思ってほしい。
「それから、扉を押しても開かないのはスライドさせるものだから。教室のドアだろう?一体今まで、どうやって生きてきたんだ……!」
「えっとねぇ、あ!俺が騒ぐとみんながドア開けてくれたよ!」
(誰だ、そのままラザを放置せず、ドアを開けやがったのは……。こんなんだから学習しないんだよ!)
ラザは中二病であるが、ここまでくるともっと別の病気ではないかと心配になる。幸い健康体だ。
「そういえば、『ヤンキー』とか言っていたよね?」
「うん!俺、最強なんだぜ!」
「確かに最凶だ。……で、ヤンキーにな《・》り《・》き《・》っ《・》て《・》いるんだよね?」
「うん、ヤンキーだよ」
「残念ながらそうには見えない」
「え~?」
ラザは口を尖らせた。呑気なそのしぐさに、ルオはますます腹が立ってきた。
「こんの、大馬鹿ゴミあほの中二病患者がっ……」
ルオの口からまるで呪詛のように罵声が出てくる。悲しきかな、すらすらと。それに反応したラザが声を上げる。
「うおぁっ!ルオの呪術で腕に魔法陣が!くそぅ、さてはお前、神ではなく極悪人ルオだな!」
「はぁっ!?」
もちろんルオは神でも極悪人でもない。目の前にいる馬鹿のせいで遅刻した一介の市民である。
「あぁ、ますます色濃く……!これでは我が身が蝕まれるのも時間の問題……!」
その時ルオは見た。ラザが油性ペンで腕に魔方陣を描いているところを。その後ろに担任の先生が仁王立ちしているところを。
(まあ、そりゃそうだろうな。遅刻してきたうえに廊下で叫び声が聞こえるんだもん)
「おい、手前ら!いい度胸してんなぁ!チャイムが鳴ってしばらく経った今、廊下で喧嘩かぁ!なめてんじゃねぇぞゴルァ!」
無駄に血気盛んな先生である。廊下いっぱいに響く怒声。あちこちの教室から驚いたような顔がのぞく。そんな数々の視線を気にすることなくラザは言う。
「あぁ教師様……貴方は私のことなんぞ知る由もないでしょうが……」
「知ってるわボケ。毎日ちゃんと出席確認してるだろーが」
「私ことラザは、この極悪人ルオと戦っていたのです……」
この言葉によりルオは一層殺気立ち、見物人《生徒達》は後に「空気が揺れたかと思った」と証言している。
「そこで私は呪いを受けました!おぉ見てください。なんという禍々しさ!」
常識人である先生はラザの言葉に説得されることなく顔をしかめた。
「先生!!僕は!!呪術なんて使えません!僕はギリギリセーフで遅刻しないはずだったのに、この超ドアホ大馬鹿のくずごみカス中二病野郎に足止めされてっ!!」
「ギリギリセーフで、というところに教師として引っ掛かりを感じるところはあるが……まあ、それ以外には同意する」
つまりはなんと先生もラザを「超ドアホ大馬鹿のくずごみカス中二病野郎」と思ってしまっているということだ。
「なんだとこの野郎!貴様の悪事は我の剣に散る!」
リコーダーをぶん回す小学生はいつの時代だっているのだろうが、卒業間近の6年生がやることではないと思う。少なくとも「剣」とは呼ばないはずだ。ちょっと頑張れば素手で熊と戦える___そんな男のリコーダーが空を切る。
「うおっ、ガレストル、あぶねぇな!なにしやがる!」
先生は手刀でリコーダーを叩き落とし、残った手でラザを絡めとる。その一連の動きはなめらかでしなやか。格闘に興味のないルオでもつい、見とれてしまった。
「先生、すごいです!元ヤンか何かですか?」
ルオの目はキラキラと輝いている。いつも「ヤンキー」とか「最強」とか言っているのにヤンキーらしさのかけらもないラザと一緒にいるのだ。悲しい話、先生とラザを比較したらラザはゴミ以下に見えるのだろう。
「クルドレア。そういう質問はしないほうがいいんだよ?」
すさまじい迫力だ。ルオは先生が元ヤンだったのだ、と改めて思う。
「まあ今のは先生に怪我をさせたらマズいから手加減しただけだ……」
ブツクサ言うラザだが、これを世間では「負け惜しみ」という。
「おいガレストル」
「なんでしょう、先生?戦いますか?いいですよ。どうせ貴方は俺に敗北するんだ」
強気なセリフだが、先生に首根っこをつかまれている時点でダサい。
「話を聞け」
「ああ、ビビったんですね、ふ~ん」
「クルドレア。こいつの口、何でもいいからふさいでくれ」
ルオはラザの口をガムテープでぐるぐる巻きにする。自分で取れないよう何重にもしたが、それはもはやルオ個人の恨みと言っていい。ちなみにルオは、こんな時のためにガムテープを常備している。
「むごごごごご、ごご!」
付き合いの長いルオはラザが何を言っているかわかる。あれは「ぶち殺すぞ、ルオ!」と言っている。
「ガレストル。ヤンキーにあこがれてるんだってな。協力しようか?」
明らかに教師……いや、大人が言ってはいけない言葉なのでは。ルオは変人が増えたと密かに頭を抱えた。
ルオ・クルドレア→いつもラザに振り回され、キレている。成績優秀だけど、ラザと一緒にいるから馬鹿だと思われてるかわいそうな人。だから僕は君といたくないのにぃ・・・。
ラザ・ガレストル→頭がかわいそうな人。割と怪力だし、声もでかい。俺は将来ヤンキーになるんだ!という熱い意志を持った男。(皆さんはラザの真似(?)をしようとして熊と戦うなんて無謀なことしないでくださいね)
この2人を覚えておけばなんとかなります!(担任の先生は本編ではほぼ出てきません)覚えにくい苗字ですみません。作者も混乱してメモ帳見ながら書いてます・・・




