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湖畔のマリス  作者: 夜風 紅葉
第1章:覚醒した…かも
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第10話:ただいま犯人逃走中

(ルーカス・グレーテ?ティノルド・グレーテの息子じゃなかったか?)


 親子だったら似ていてもおかしくない。とすると、やはりティノルド・グレーテの疑惑が膨れ上がってくる。

 ティノルドも呼んでもらおうと思ったが、ルオは少し躊躇った。

 もしもルオの推理が当たっていたとしたら当然ティノルドは憲兵に引き渡されるだろう。そうしたら、母親のいないルーカスは?

 学校は寮制だから生活するには困らないけれど、親がいない不安は計り知れない。

 ルオのような部外者がずけずけといい気になって推理を披露していいのだろうか。

 しかし、これもまたティノルドが犯人だったら、の話だが、告発しないのもまた、問題になる。

 なにより、ルオは自ら調査を始め、メイリーにまで「解決してほしい」と言われているのだ。ここで引き下がるわけにはいかない。

 迷うルオに、察したメルジュが言う。


「……………<クレヴル>」


 その場にいる人の教師陣を除くほとんどが、首を傾げた。

 それもそのはず、これはノルジェータ王国の旧国語だ。習得している人は二十人に一人いるかどうかと言われている。

 そんな中、ルオには旧国語が通じるとメルジュが判断してくれたのが、嬉しかった。認めてもらえたような気がしたからだ。

<クレヴル>は、「無心」という意味を持つ。

 ルオの気持ちで周りを巻き込むわけにはいかないのだ。

 メルジュのくれた<クレヴル>は、冷静にさせてくれる、ありがたい言葉だった。

 一つルオは多く息を吸って、ティノルド・グレーテを呼んでほしいという旨を伝えた。

 その言葉に対する反応はまちまちだった。

 教師陣は相変わらず怖い顔をしているし、フェクスト夫妻はため息をつく。メイリーとヴァグルは固唾を飲んで見守って、サオールはツンと澄ましたまま。ラザやセテンはソワソワし、メルジュの口角は心なしか上がっている。

 ため息をつきつき、キャドリッジがティノルドを呼びに行った。

 数分後、キャドリッジに連れられてやってきたティノルド・グレーテはルオの予想通り赤い髪に焦げ茶の目の男性だった。


「あぁ、ティノルド・グレーテ様ですね?ルオ・クルドレアです。ここで起こった事件について聞きたいことがあるので呼ばせていただきました」


「先に言っとくけど、俺は犯人じゃないぞ?」


「はい。ただ、少し、聞きたいことがあるのです。———ヴァイオリンケースは、どこですか?」


 ここで失敗してはいけない。ましてや相手は大人だ。口論に負けてしまうかもしれない。それでも、一度犯人と疑った限り、白黒つけたい。逃がすものか、とルオは精神を張り詰めてティノルドと対峙した。


「な、なんのことだ?俺はヴァイオリニストではないのだが」


 ティノルドは一瞬、動揺した。


「そうですか……。それでは、服作りに携わる職人様でいらっしゃいますか?」


「失礼な。俺は貴族だぞ」


「そうですか、それは失礼いたしました。………しかしながら、ところどころお召し物についた赤い模様が良いアクセントになっていましたので、てっきり職人なのかと」


 そうだ。ティノルドの黒い洋服に、鮮やかな赤がついているのだ。ちょうど、アネットの指についた赤と同じような赤が。

 アネットと接触があった可能性を考えた方がいいだろう。


「え、い、いやこれは………というか、何故そんなことを?元々そういう服を買ったというだけかもしれないだろ」


「いえ。実はお恥ずかしながら、僕は開会直前に会場に到着したのです。ほら、赤い髪の方は目立ちますし、貴方は長身でいらっしゃるから、目が行ってしまったのですが、その時赤い模様はなかったので」


 はったりだ。それでも、こちらが手掛かりを握っていると示す。焦って、あわよくば取り乱して自白してほしいのだ。


「人違いでは?」


「そうですか。そうかもしれませんね。世の中にはよく似た人が存在しているといいますしね。———ところで、僕たちの部屋はとても散らかっていて、探し物が大変だったでしょう。片付けようとはしているのですが………」


「全くだ。あんな散らかり方をされたらたまったもんじゃない」


(引っかかった!)


 獲物は見事餌に食いついた。もうこれでティノルドは黒確定と言っても過言ではない。

 それより、ヴァグルの目がこう語っていた。


 [僕も片付け一緒に頑張ったのに…………]


 だからルオも目で返す。


 [悪いのはヴァグルじゃない。散らかしたやつだ。大丈夫、気にしないでね]


 伝わったかどうかは定かではないが、これは気持ちの問題だ。

 切り替えたルオはティノルドを見る。

 自分の失言に気づかないままかと思いきや、急に青ざめると倉庫の窓から飛び出していった。


「追え!」


 教師陣がワッと外に飛び出す。

 ルオ達も飛び出す。サオールだけは制服に泥が跳ねないように気をつけながら歩いて出てきた。


「僕はいたら足手纏いなので待ってます」


 とヴァグルが言い、それに便乗してメルジュもメイリーもサオールも……要は女性陣がお留守番を決め込んだ。

 おとなしい女子三人組を見て、ルオは自分の母だったらなんて言うか考えた。


「わー、犯人逮捕?楽しそう!私が最前列行くね!」


 など言って、真っ先に駆け出しそうだ。ルナは時々、童心に帰るのだ。

 ともかく、ルオは例のズル(魔術)を使ってティノルドを追いかける。みんなで四方八方に散らばって、倒れそうになるまで探したが、ティノルドの足は異様に速く、結局逃げられてしまった。しかしほっておくわけにはいかず、あちこちを探した。

 魔術に頼りたくなってきたルオは魔術を使おうと決心するが、一体どんな術を使えばティノルドを見つけられるのか。結局ルオは魔術行使を断念した。

 あちらこちらをキョロキョロと見回しつつ歩いていると、額を寄せ合って話している不審な男を見つけた。

 ルオの視力はあまり良くなく、今の距離だとぼんやりとしか認識できない。

 だがルオはそんな時どうすれば良いか知っている。本で読んだ———のではなく、ラザに昔、教え込まれたのだ。

 ルオの脳内で、ありし日のラザの声が再生される。


「なんだルオ、黒板が見えないのか!そういう時はだな、<遠いものを見る力>で黒板を見るんだよ!」


 この時のルオは「なんてネーミングセンスのない技名なんだ、中二病はかっこいいのが好きなのではなかったのか」という思考でいっぱいになっていて、まさか未来で役立つとは思ってもいなかっただろう。


(よっし、えっと、<遠いものを見る力>……?発動)


 すると急に視界が良くなり、スッキリした。それでもまだ不審者二人組の顔は見えにくかったのでなんとなく指を広げると、拡大された。


(なんだ、ラザとセテンじゃん)


 だが二人は何やら深刻な顔をしている。それなら混ぜてもらおうと思ったルオは二人に近づく。


「何話してんの?」


「いや、こっちから肉の匂いしてさぁ」


「お腹減っちゃうんだよね」


(めっちゃくだらなかったぁっっっーーー!)


 脱力するルオとは反対に、セテンとラザは神妙な顔を崩さない。


「ティノルドってやつと同じ匂いだよな」


「わかる」


(こいつら……こいつら、もしかして、肉の匂いで犯人捕まえようとしてる?犬?犬なのか?)


 ルオがうんうんと唸っている間にラザとセテンはあっさり移動する。

 二人では心配なので、ルオは慌てて二人について行った。

すみません。作者バカなので推理よくわからないかもしれないです……

指摘とかしていただけるとありがたいです…

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