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2-7 にゃにゃにゃにゃにゃにゃ

 決意のままに、僕たちはまごころを出て奴隷商館へ向かう。

 今回行く商館はすでに決まっている。名を奴隷商館『アングレクム』といい、所在は町の中心寄りである。


 アナさん曰く、そこが最もまともな奴隷商館のようだ。顔の広い彼女が言うのならまず間違いがないだろう。


 そう思いながら、いつものように談笑を交えつつ歩いていると、ここで唐突に耳馴染みのある女声が聞こえてきた。


「お? アナとソースケじゃねぇか」


 声の方へと視線をやると、そこには美しい赤髪を風に靡かせる1人の美女の姿があった。──そう、リセアさんである。


「リセアさん!」


「リセア、奇遇ね。今日はおやすみ?」


 リセアさんは珍しく私服に身を包んでいた。……とはいってもその背にはいつも通り大剣を背負っているのだが。


「んーまぁ休みだな。買い物の付き添いを頼まれちまってよ」


「付き添い?」


 そう言う彼女のそばに人の姿はない。


「多分そろそろ来ると思うぜ。……っと、噂をすれば」


「にゃ〜たくさん買ったにゃ〜」


 近くの店からホクホク顔でこちらへとやってくる1人の美少女。155cmほどと女性の平均よりも少しだけ低い身長と、スラリとした、しなやかさの感じられる肢体。金色のミディアムヘアを風に靡かせ、どこかあどけなさの残る可愛らしい容貌に満面の笑みを浮かべるその姿には、思わず話しかけたくなってしまうほどの親しみやすさがある。


 と、それだけでも十分に人目を集めるほどの美少女なのだが、彼女にはそれ以上に目を惹く特徴があった。


 ……猫耳と長い尻尾! 猫獣人だ! リセアさんの知り合いで金髪の猫獣人。もしかしてこの人が──


「んにゃ? なんでこんなとこで突っ立って……って、にゃ! アナちゃにゃ!」


 言葉と共に、獣人の少女はアナさんの元へと駆け寄ってくる。


「アナちゃ、久しぶりにゃ!」


「久しぶり、メウィ」


 目の前で手を合わせて再会を喜ぶ2人。

 と、ここでメウィと呼ばれた少女の視線がこちらへと向く。


「んにゃ? ……アナちゃの番かにゃ?」


「つがっ!?」


 絶句する僕を見て、小さく笑いながらリセアさんが言う。


「あれだよ、こいつがあのソースケだよ」


「あのにゃ!?」


 目を輝かせるメウィさん。


 ……あのってどの?


 そう疑問を抱いていると、メウィさんは僕の方へと向き直ると、白く鋭い犬歯をのぞかせながらニンマリと笑った。


「そーすけ、はじめましてにゃ。メウィにゃ! よろしくにゃ〜」


「メウィさん、よろしくお願いします」


「メウィでいいにゃ。敬語もいらないにゃ〜」


「……わかったよ。よろしくね、メウィ」


「よろしくにゃ」


 言葉の後、メウィは数歩こちらへと寄ると、様々な角度から僕のことを見つめてくる。


 ……近い近いいい匂い。


 思いながら顔を赤らめる僕の間近で、メウィはなぜか満足げに「うにゃ」と鳴いた後、再度口を開いた。


「そーすけのことは、リシャからたくさん聞いてるにゃ〜」


 リシャ? とリセアさんの方を向くと彼女はうんと頷く。なるほどリセアさんの愛称か。


「今度メウィも遊びに行くにゃ」


「1週間後だよね」


「そうにゃ〜まっさーじ、楽しみにゃ〜」


 実は彼女の予約はすでに入っている。予約したのはリセアさんで、メウィの名前と彼女がリセアさんのパーティーメンバーであることはその時にすでに知っていた。リセアさん的にはその場で初対面としたかったようだが、僕としてはこうして人となりを知る機会ができて正直助かった。


 ……まぁリセアさんのパーティーメンバーである以上、いい人なのは間違いないとは思っていたけど。


「んで、2人は何用でこんなところまできたんだ?」


「実はアングレクムへ行こうと」


「ん? ……あぁ、従業員か」


「そうです」


「そっか。ま、アナとソースケなら悪いようにはしねぇだろうし、安心だな」


「アナちゃとそーすけなら安心にゃ〜」


 と、その後少しだけ談笑した後、それぞれの目的のために別れた。


 ……初対面なのにあのコミュ力。僕も少しは見習わなくては。


 メウィに対してそんな感想を覚えながら、こうして想定外の初対面を終え、僕はアナさんと共に目的地へと向かった。

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