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第68話 ナームの故郷2

「ナームをここまで連れて来て下さり、ありがとう御座いました」

「約束を果たせず、すまない事をした」

「いいえ、最後にナームの顔を見られただけで、充分で御座います」


 亡くなったナーム君の葬儀に参列し、ご両親に挨拶をする。

 馬車に戻ると両親よりも悲しい顔をしているエルフィが毛布に包まって座っていた。


「エルフィの嬢ちゃんよ、こればかりは仕方のねえ事なんだ。明日朝には、この村を出発する。心残りの無いようにしときな」

「ねえ、ねえ、エルフィさん。ナームのお母さんからここの果実園で取れた果物をもらってきたのよ。後で食べてね」


 ルルーチアにまで慰められているけど、相当落ち込んでいるね。妖精族は長寿の種族だけど、里に住む人数は少ないと聞く。身近な人を亡くすのは初めてなのかもしれないね。でも、この世界じゃ若くして亡くなるのは珍しい事じゃない。


「エルフィ、先に妖精族の国に立ち寄って、君を送り届けようか? もう、急いでボク達の里に行く必要もなくなったしね」

「……いえ、いいわ。先に眷属の里にフィフィロ達を連れて行ってくれるかしら。あたしもナームが行くはずだった場所を見ておきたいし……」

「分かったよ」


 どのみち、国境を越えないといけないから同じようなものだからね。せめて、エルフィだけはちゃんと国に返してあげないと。

 その日の夕方。長い影を落としたエルフィが、一人で村の果実園を見て回る姿を見かけた。これで心の整理をつけてくれるといいんだけど。


 朝早くに村を出発して、森を迂回する街道に出る。


「ここから里までは二週間といったところだね」

「その、眷属の里でオレは暮らすんですよね」

「白子の君は、眷属の人と一緒に人間としての暮らしをしてもらう。人が飲める綺麗な水と食料があるからね。それで君も長く生きる事ができるようになる」

「私もお兄ちゃんと一緒に暮らしてもいいんですよね」

「勿論さ。ボクの眷属にならず暮らしている他の種族の人達もいるからね」


 リビティナに忠誠を誓ったうえで、元の種族のまま里のために働いてくれる者達もいる。


「リビティナさん。私も眷属になればお兄ちゃんと同じ姿になるんですか」

「そう言う事になるね。しかし人間の姿になると、里以外で暮らすことは難しくなる。眷属になってくれるのは嬉しいけど、よく考えてから決めてくれるかな」


 フィフィロも、生まれたベルク村では迫害を受けていたと言う。引き取った魔術師の居たシャトリアの町でも仮面をつけて生活していた。水や食事以外の事でも他の町で普通の生活を送る事は難しいだろうね。


 だからリビティナは眷属の里を作り、他の種族から隔離してその場所を守っている。元住んでいたマウネル山とは違う場所に、辺境伯から土地をもらって、誰からも知られない隠れ里になっている。


「あの、オレはその里で何をすればいいんですか」

「フィフィロ君はまだ十二歳で成人になっていないからね。勉強や簡単な手伝いをしてくれればいいよ。とはいえ魔術を使える人は貴重だからね。警備隊の見習いもいいかもしれないね」

「警備隊って、里を守るんですか」

「そうだよ、魔獣を狩る仕事などもある。君が良ければその手伝いをしてくれるとありがたいけどね」

「お兄ちゃんなら大丈夫ですよ。私も手伝いたいです」

「そうかい。まあ、それは里に行ってから決めるといいよ」


 小さな里で自給自足の生活になる。周りの森には魔獣もいるけど防衛手段は施してある。そこらの町よりも安全に暮らすことはできるさ。


「リビティナ。あんたは魔王と呼ばれているほどの強い人なんでしょう。なんでそんな小さな里で暮らしているのよ」

「ボクにそれほどの力はないさ。今は辺境伯の領地を間借りして暮らす善良な市民なんだよ」

「何言ってんのよ! ナームが暮らすはずだった場所なんでしょう。リビティナの眷属が住んでいるなら、辺境伯の領地ぐらい奪ってもっといい暮らしをしたらどうなのよ」

「おい、おい、エルフィの嬢ちゃん、過激な事を言うなよ。まあ、俺達の暮らしは楽じゃないが、小さいながらも平和に暮らしてるんだぜ」


 そう言っても、エルフィは納得しない。


「昔の魔族は、大陸の半分以上を支配していたって聞いたわよ。あんたも、それくらいできるんじゃないの」

「まあ、昔はどうだったか知らないんだけどね。ボクは眷属の里でのんびりとスローライフを満喫しているから、それでいいんだよ」

「何がスローライフよ! そんな暇あるんだったら自分の国ぐらい作りなさい!」

「ええ~、そんな無茶な事言わないでよ~」


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