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第57話 襲撃された村3

 帰ってきた魔女様が、家の外からお兄ちゃんの名前を呼ぶ。今はもう牛の居なくなった牛小屋の陰に隠れながら、魔女様が状況を説明してくれる。


「今、丘の上から村全体を見て来たけど、竜騎兵が二人村の中を走り回っているのが見えた」

「二人だけなら、オレ達でやっつける事ができますよね!」

「まあ、そうなんだけどね。もしも兵士を逃がして後続の部隊に連絡されると、早々に援軍がやってくるだろうね」

「それなら、その部隊ごとオレが全滅させてやります!」


 魔女様は片膝を地面に突いて、お兄ちゃんと目線を合わせながら、ゆっくりと説明するように話す。


「フィフィロ。軍隊を侮っちゃいけないよ。兵士一人ひとりは魔獣よりも弱い。だけど訓練された兵士が集まれば、どんな魔獣の群れでも全滅させる力を持つ。それが軍隊と言うものだよ」


 まだ戦えないルルーチアを伴って、後続部隊と戦う事はできないと魔女様は言う。

 だけど、あの斥候の兵士だけは倒すと決めたようだ。既に一人を倒しているから、様子を見にこの丘にも兵士が来るはずだと、ちらりと丘へ登ってくる道を見ながら魔女様が話す。


「フィフィロ、あんたは村の出口付近で待ち伏せしておきな。兵士はアタシが倒すつもりだけど逃げようとして出口に行ったら、あんたが倒すんだよ。村から出しちゃだめだからね」

「はい、絶対村から出しません」


 魔女様は自分を庇いながら、この丘に通じる道を降りて村の中央へと向かう。その反対方向へお兄ちゃんが物陰に隠れながら走っていくのが見えた。


「兵士がこっちに気付いたようだ。ルルーチアは絶対にアタシから離れちゃだめだよ」

「はい」


 槍を持ち竜騎に跨ったリザードマンの兵士が走ってくる。すごく怖い。ギュッと魔女様の裾にしがみついた。


「おい、お前達は村の住民か」

「少し違うけど、同じようなもんだよ。よくも村人を殺してくれたね」


 そう言って手に持っている杖を前にかざすと、氷の槍が何本もその兵士に襲い掛かる。鎧を貫き竜騎共々血を噴き出して倒れた。あっという間の出来事だった。

 その様子を遠くで見ていた、もう一人の兵がこちらに向かって弓を放つ。魔女様は風魔法で弓の軌道を逸らして、炎の塊を飛ばした。


 村を調査し報告するのが役目の兵士は攻撃するのを早々に諦め、逃げるのを優先し村の出口へと向かって走る。その背中に向かって魔女様が魔法攻撃する。


「まずいね。あの兵士、魔法耐性の盾を持っているよ」


 魔女様の攻撃を巧みに避け、直撃する攻撃を盾で防ぎながら逃げていく。


 村の出口、お兄ちゃんが逃げる兵士の正面に立ち塞がった。竜騎兵は速度を緩める事なくお兄ちゃんに向かって行き、手に持った槍を投げる。


「お兄ちゃん!!」


 槍が地面に突き刺さり、お兄ちゃんが倒れた。どうしよう! お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……。


「大丈夫だよ、ルルーチア」


 魔女様がそう言って、兵士に向かって炎の塊を飛ばす。その先には、いつの間にか落馬した兵士が地面に(うずくま)っていた。

 炎はお兄ちゃんが倒れた方向からも飛んでいて、前後から兵士を襲う。


 魔女様がルルーチアを小脇に抱えながら丘の道を降りて行く。黒焦げになった兵士の横を通り抜けて、お兄ちゃんの元へと走り寄る。お兄ちゃんは地面に座り込んでいて立ち上がれないようだった。


「フィフィロ、大丈夫だったかい」

「驚いて、転んじゃっただけです」


 そう言うお兄ちゃんを、魔女様が手を貸して立ち上がらせた。


「本当に怪我してない、お兄ちゃん」

「大丈夫だよ。心配かけてごめんね、ルルーチア」


 お兄ちゃんは、転びながらも竜騎の足を狙って魔法攻撃したみたい。魔女様もよくやったと褒めていたけど、お兄ちゃんが地面に倒れた時すごく怖かった。もう、あんな無茶はしてほしくない。

 それと同時に、ルルーチアはもっと強くなろうと決意する。自分もお兄ちゃんも守れるぐらいに。もう家族は二人しかいないんだから。


「さあ、急いでこの村から離れるよ」


 斥候をやっつけても、いずれ後続部隊がこの村にやってくる。その前に逃げ出す必要がある。


 他の家から荷馬車と生き残っていた馬を連れて、魔女様の家に向かった。

 もう日は沈み暗くなった中、荷物を積み込んで脱出の準備をする。


 魔女様は地下から資料や貴重品を、ルルーチア達は食料と水や生活用品を手分けして荷馬車に積み込む。


「夜の間に出発して、街道を北に進むよ。二人とも馬車に乗りな」


 こんな形で村を後にするとは思ってもみなかった。


「お兄ちゃん……」


 馬車の端に座るルルーチアに寄り添い毛布を掛けてくれる。これから先、お兄ちゃんと二人で生きていかないといけない。


「オレが必ずルルーチアを守ってやるからな」

「うん、お兄ちゃん」


 馬車に揺られ、いつの間にか眠ってしまったルルーチアの夢の中には、両親の笑顔とお兄ちゃんが食事をしている姿があった。もう見る事も叶わないその光景の中、幸せだった頃のルルーチアが家族の輪の中に解け込んでいった。




 お読みいただき、ありがとうございます。

 今回で第3章は終了となります。

 次回からは 第4章 魔族編 です。お楽しみに。


 ブックマークや評価、いいねなど頂けるとありがたいです。

 今後ともよろしくお願いいたします。


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