90.ロイズとシェリー
アキラのアズールの宝剣とロイズの暗黒剣がぶつかり合う。
「……強い」
一つ一つが洗練された動き、従者達の攻撃を対処しながらアキラを果敢に攻める。
6対1でこの状況、もしジョブスキル【大帝】が無かったらとっくに死んでいただろう。
でも少しずつだがアキラ達の方が優勢になる、やはり数は多い方が有利なのは戦いの常か。
デストの拳がロイズの頭を掠る、その隙を見逃さずムゲンは胴体に2本の刀を振るう。
その時、ロイズの棺から何かが浮かび上がった。
ーーアァァァァァァーー
それは透けた女の怨霊だった。
女は何かを歌う様に怨みの篭った声を発する。
「……か、体が」
その声の後、アキラ達は足に鉛がついたかの様に急激に動きが遅くなった。
「デバフか!」
アキラが察する通り、それはシェリーの能力だった。
ロイズとシェリーは一心同体だ、眠りから覚めたシェリーはロイズの危機を察し現れたのだ。
ロイズは難なく刀を受けきると再びアキラの胴体目掛けて暗黒剣を振るう、何とかそれを回避しようとするが間に合わず、浅く腹を裂かれてしまう。
「……ぐぉぉぉ、何だこれ……」
傷は浅い、だが強烈な倦怠感がアキラを襲った。
ロイズのエナジードレインは攻撃がヒットする度に、相手の体力と魔力を奪う、正にシェリーと合わせてデバフコンビだ。
ロイズの攻撃は従者達にも振るわれる、アキラと同じようの皆等しく倦怠感に襲われていた。
だがここで勝ちへの道筋を見つける、それはシェリーの歌が終わるとスピードが元に戻った事だった、どうやら永久に発動できる物ではないらしい。
ーーアァァァァァァーー
少ししてまた声を発するシェリー。
今度は手に力が入らない、筋力が大幅に下がっていた。
シェリーは脱力の前奏曲と遅延の行進曲を交互に使い分けていた、正に隙がない。
「力が出ない、これじゃあ攻撃の仕様がない……」
氷魔法で何とかロイズの攻撃を対処する、たがデスト、シルヴィア、ムゲンの物理攻撃がまるで効いていない。
「ならばシェリーを狙うまで」
アキラは浮かんでいるシェリーへとアイシクルランスを放つ、だがアイシクルランスは貫通してそのまま空へと飛んで行ってしまった。
「攻撃が当たらないだと!?」
シェリーは魔法、物理攻撃が無効だった。
どんなチートだよと思いながら、再びロイズへの攻撃に戻るが手数が制限されている為決定打に欠けていた。
アキラ達は只々生傷が増えていく、その度に体力と魔力が失われていった。
「このままじゃヤバい」
正にジリ貧だった。
ロイズの攻撃がムゲンへと迫る、ムゲンはそれを焔流しで受け流しながらカウンターで2本の剣をロイズの背中に斬りつける。
「!」
ロイズは咄嗟にそれを回避した、まるで慌てている様だ。
それをアキラは見逃すはずがない。
「シェリーの本体は棺の中か!」
幸運が向いて来たのか、シェリーの歌が終わる。
時間との勝負だ、シェリーの歌が始まる前に決着をつけなければならない。
アキラの意を汲み取り、従者達は攻撃を合わせる。
ライムは本体と分裂体両方で強酸を放ちまくる、ルージュもライムに続き【投げナイフ】で背中の棺を狙う、だがロイズはそれをことごとく暗黒剣で薙ぎ払う。
デストとシルヴィアは拳と蹴りのコンビネーションだ、ロイズを自分達に集中させるため無呼吸連打を放つ。
ムゲンはデストとシルヴィアの意を汲み取り、背後に回り斬塊で棺を狙う。
ロイズはくるっとバク宙をして斬塊を回避した、重そうな鎧を装備しているのになんと身軽な事か。
アキラは着地と同時にロイズへと剣を振るう。
ロイズは着地した後更に身を屈ませ攻撃を回避、下段からなぞる様に暗黒剣を上段へ振るう。
この時ロイズは自らの勝ちを確信した。
だが縦に斬られた筈のアキラはひび割れ砕ける。
ーアイシクルミラージュー
それは裏コロシアムのハヤテ戦で見せた、相手の虚を突く魔法だった。
正面にいた筈のアキラが実は背後に居る、従者達の攻撃は全てこの為の布石だった。
ライムとルージュの攻撃はロイズを誘導する為、シルヴィアとデストはアイシクルミラージュを発動させた事を気づかせない為、ムゲンの攻撃はアキラが止めを刺す為のブラフだった。
ーーギャァァァァァァ!!ーー
棺に剣が刺さり、シェリーは苦しみの声を発した後静かに消えた。
デバフが無くなったアキラ達は果敢に攻める、シェリーが居なくなったとはいえ油断はできない、エナジードレインで奪われた体力と魔力は戻らないからだ。
「これで最後だ!」
ライムの強酸、ルージュのナイフ、デストの拳、シルヴィアの蹴り、ムゲンの刀、アキラの氷魔法。
それら全てが同時にロイズへと迫る、ルージュ、デスト、シルヴィア、ムゲン、アキラの攻撃は何とか受けきるがライムの強酸がロイズの頭を穿つ。
そして強酸は兜を貫通した、頭に穴が空いたロイズは片膝をつきそして倒れた。
[ロイズを従者にしますか?]
どうやらロイズに勝った様だ、アキラはYESと答えながら従者達を労った。




